産経ニュースの「巨額利益生む0.03秒 米ゴールドマン」と言う記事が注目されていますが、元記事はこれです。
その中にHi-Fi Trading(アルゴ・トレードと言うひともいます)のひとつのやり口(これだけではありません)が解説されています。
Let’s say that there is a buyer willing to buy 100,000 shares of BRCM with a limit price of $26.40. That is, the buyer will accept any price up to $26.40.
But the market at this particular moment in time is at $26.10, or thirty cents lower.
So the computers, having detected via their “flash orders” (which ought to be illegal) that there is a desire for Broadcom shares, start to issue tiny (typically 100 share lots) “immediate or cancel” orders - IOCs - to sell at $26.20. If that order is “eaten” the computer then issues an order at $26.25, then $26.30, then $26.35, then $26.40. When it tries $26.45 it gets no bite and the order is immediately canceled.
Now the flush of supply comes at, big coincidence, $26.39, and the claim is made that the market has become “more efficient.”
Nonsense; there was no “real seller” at any of these prices! This pattern of offering was intended to do one and only one thing - manipulate the market by discovering what is supposed to be a hidden piece of information - the other side’s limit price!
With normal order queues and flows the person with the limit order would see the offer at $26.20 and might drop his limit. But the computers are so fast that unless you own one of the same speed you have no chance to do this - your order is immediately “raped” at the full limit price … as the fill price is in fact 30 cents a share away from where the market actually is.
A couple of years ago if you entered a limit order for $26.40 with the market at $26.10 odds are excellent that most of your order would have filled down near where the market was when you entered the order - $26.10. Today, odds are excellent that most of your order will fill at $26.39, and the HFT firms will claim this is an “efficient market.” The truth is that you got screwed for 29 cents per share which was quite literally stolen by the HFT firms that probed your book before you could detect the activity, determined your maximum price, and then sold to you as close to your maximum price as was possible.
英語だとわかりにくいと思うのでチョッと意訳します:
例えばブロードコム(BRCM)を10万株買うという注文を出すとする。
指値は$26.4だ。
この意味は「買い手は$26.4までの売り物なら、なんでも拾う」ということだ。
でもいま場でついている値段が$26.10だとする。
さて、ゴールドマンのコンピュータは100株とかの端株の注文(flash orders)を這わせる事で「$26.20で喰いついてくる買い注文があるな」ということを感知する。
次にIOC(immediate or cancel)と呼ばれる、瞬時に出来なければマル(キャンセル)になる注文を:
$26.25
$26.30
$26.35
$26.40
という風に「売り上がり」で這わせる。
すると当然、買い手の方はそれと知らずに$26.40までは浚う。
ところが$26.45の犠牲玉には買い手がつかない、、、
するとゴールドマンは「買い手の指値は$26.40近辺だな」ということを憶測できる。
すると$26.40ギリギリでまとまった株を売れば良いのだ。
■ ■ ■
解説すると、上の例ではブロードコム10万株を買おうとする投資家は、現在、場でついている株価の$26.10ですべての株を拾えるとは考えておらず、現実的に考えて、$26.40という余裕を持たせた指値を設定(=これは誰もが普通にやる)したのです。
ゴールドマンは機関投資家のそういう「思考パターン」を熟知していて、買い手の「のりしろ」として設定した余裕を持たせた指値を全部ギリギリの水準でペロリと喰うわけです。
いま実際のマーケットの水準、つまり売り買いの出会いが$26.10程度でこう着しているのであれば、目にも止まらぬ速さで$26.40で「指値刈り」をした後、$26.10の水準で買い戻せば良いわけです。
■ ■ ■
Hi-Fi Tradingはハイテクを駆使した、新しい手法だと一般の人は考えていると思いますが、実は客注(=顧客の注文)を悪用して証券会社が儲けることは昔から横行していました。Hi-Fi Tradingはそのやり口が巧妙になっただけです。
例えば機関投資家が好んで使うVWAP注文(その日の出来高加重平均株価に限りなく近づくよう執行する注文)というのは喰い物にされやすい注文形態です。
客注の悪用を避けるため、むかしなら証券会社の内部で①顧客の利害を代表する担当者と、②証券会社のP&L(=儲け)を代表する担当者をきちんと分け、利害相反が起こらないようにしていました。
この場合、①顧客の利害を代表する担当者とは:
1.機関投資家向けセールスマン ならびに
2.そのセールス・トレーダー(=為替などで言うところのカスタマー・ディーラーに相当)
そして②証券会社のP&Lを代表する部門は:
1.プロップ・デスク(自己売買部門)
です。
さて、大量の銘柄数を同時に執行するバスケット・オーダーやコンピュータの力を借りて出来高加重平均単価に近づけるVWAPオーダーなどはプログラム・デスクというハイテク執行部隊に回されます。本来、それらの注文も客注である以上、顧客の利害を最優先しなければいけないのは当たり前ですが、「アルゴリズムを駆使したトレーディングをする」という耳触りのよい触れ込みのもとで、顧客にとってベストの事と証券会社にとってベストの事はしばしば衝突します。
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