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2008年12月15日月曜日

ファンズ・オブ・ファンズというトンマなビジネス

バーニー・メードフの「ねずみ講」事件でファンズ・オブ・ファンズというビジネスのあり方の存在意義が厳しく問われています。

ファンズ・オブ・ファンズというのは「ヘッジファンドに投資する投信」みたいなものです。

もともとヘッジファンドの世界は何処に優秀なヘッジファンド・マネージャーが居るかを探しにくいという事情があります。それはヘッジファンドの大部分が私募の形態を取っているので、ディスクロージャー情報が少ないからです。すると「みんなは知らないけど、俺は凄いヘッジファンド・マネージャーを知っている」という事になると、そのコネ自体が価値をもつわけです。むずかしい言葉で言えばインフォメーション・レシオが高いわけです。

もともとヘッジファンドには「ワン・アンド・トウェンティー」と呼ばれる多額の運用フィーがあります。つまり運用資産の1%を年間運用フィー、利益の20%を成功報酬としてヘッジファンド・マネージャーが取るというものです。これに加えてファンズ・オブ・ファンズはさらにファンズ・オブ・ファンズ・マネージャーのフィーを取るわけですから顧客は二重にフィーを取られているわけです。

しかし「凄いヘッジファンド・マネージャーを選んで来れる」というのはファンズ・オブ・ファンズ業界が後講釈でつけたマーケティング用のセールス・トークで、実際はファンズ・オブ・ファンズ業界はヘッジファンド・マネージャーが面倒くさがってやりたがらないマーケティングや顧客との関係維持の仕事を進んで引き受けるところから派生した、コバンザメみたいな仕事なのです。

例えばジョージ・ソロスのヘッジファンドはずっと昔から存在するわけですけれど、そのファンドが「私募」のステータスを維持しようとすると表向きはファンドへの投資家が99人を超えてはいけないのです。(100人以上になると「公募」しないといけないので、SECに対する申請や開示義務が発生します。)

ところがソロスくらい優秀なヘッジファンド・マネージャーのファンドからは「解約したい」なんて人はたまにしか出ないわけです。

すると「解約待ち」で行列を作る一般投資家が後を絶たないわけです。そういうナイトクラブの前で行列を作る「下々の者ども」の行列を整理し、「おまえは入れてやる、お前は駄目。」という風にバウンサーの役目を果たす人間のことをエージェントなどと言います。例えばソロスのファンドのエージェントはクウェロスという会社でした。

すると「お前は入れてやる、お前は駄目」という風に門前払い出来ること自体がひとつの特権となって、「それじゃお前はそんなに沢山のヘッジファンド・マネージャーを知っているなら、もうお前にお金を預けちゃう。あとは自由にやってくれ!」という事になったわけです。これがファンズ・オブ・ファンズ業界の起源なのです。

だから「うちのファンズ・オブ・ファンズは優秀なマネージャーだけを選べる」というのはファンズ・オブ・ファンズ会社のでっち上げた虚構であって、実際には優秀なヘッジファンド・マネージャーは特定のプレースメント・エージェントと固定的な関係を持っている場合が多く、株式投資信託のファンドマネージャーが場で或る銘柄を拾うように、良い株を自由に買えるのとはわけが違うのです。

ファンズ・オブ・ファンズの存在意義は「あいつに頼めば、ナイトクラブに入れてくれるだろう」という投資家の飢餓感だけです。そもそもナイトクラブ自体が閑古鳥になってしまえば(そして今はまさしくそういう状態なわけですけど)その入り口でバウンサーがどんなに気取っても誰からも見向きはされません。

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