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2009年1月4日日曜日

ガスプロム (ロシアの天然ガス株) ③



そこでガスプロムの今後のプロジェクトについて紹介してゆきたいと思います。

先ず西シベリア地方の地図に戻りたいのですが、先ほどの一連のガス田の所在地より少し上の箇所を見て下さい。ここはヤマル半島と呼ばれる地域です。今後の有望な天然ガス田はここに所在しています。
これから述べる地域は既に大量の天然ガスが埋蔵されていることは確認されているけれど、商業生産は未だ始まっていません。ガスプロムの全社の埋蔵量の約27%が以下の3つの地域からもたらされると考えられます。

まずボワネンコフ・ガス田、埋蔵量は51兆立方フィート程度です。

次に同じくヤマル半島に位置するハラサヴェイ・ガス田。埋蔵量は35兆立方フィートです。

最後にバレンツ海の沖合い(×印)にあるシュトックマノフ・ガス田です。埋蔵量は96兆立方フィートと言われています。

2番目のグラフは天然ガスと石油の生産高、つまりボリュームです。余り増えていません。だからこそガスプロムにとって天然ガス価格が高止まりしてくれることが望ましいし、そのためにはブレント原油価格が高くないと困るわけです。残念ながら今の原油価格のトレンドは同社にとってどんどん都合の悪い方へむかっているわけです。
またガスプロムが売上を伸ばすには国内で電力会社などに販売してきた天然ガスをなるべく石炭に切り替えさせ、浮いた分を輸出に回すという戦略がとても重要になってくるわけです。

ガスプロムは今後上に述べた新しいガス田を開発してゆくための設備投資にお金がかかります。それから天然ガスの生産を増やしたら、パイプラインもキャパシティーを増やす必要があります。ガスプロムのパイプラインに対する投資額は近年極めて低かったので、メンテナンスなどの費用が今後嵩むリスクもあります。

ガスプロム (ロシアの天然ガス株) ②





ロシアの天然ガスの生産は西シベリア地域に集中しています。そこからモスクワ、さらにヨーロッパへと天然ガスが輸出されるわけですけど、その輸送距離が極めて長いため、パイプラインへの設備投資に莫大な金額がかかります。
現在のガスプロムのパイプライン網の資産価値は5000億ドル程度だと試算されています。ロシアは1970年頃からパイプラインの幹線への投資を開始し、1984年頃まで年々設備投資予算を増額してきました。しかし80年代後半にロシア経済がスランプに陥った際、パイプラインへの設備投資も激減しました。今でも設備投資額はピーク時の数分の1程度です。輸送コストは天然ガスの販売価格の約70%程度を占めます。

西シベリア地域ははオビ川の流れ込むカラ海を中心にして右下半分と左上半分に2分されます。このうち右下半分は1965年から天然ガスの生産が開始されています。なお、ガスプロムの前身である天然ガス省が発足したのも1965年のことです。

ウレンゴイ・ガス田は埋蔵量177兆立方フィートと言われ、ロシア最大級のガス田です。1966年に発見されました。

ウレンゴイ・ガス田からの天然ガス生産がガスプロム全体の天然ガスの生産のどれだけを占めているかを示したのが2番目のグラフです。ウレンゴイは一番下にあります。現在生産量という点で最大級のガス田です。

ウレンゴイと並んでロシア最大級の天然ガス田がヤンブルグです。埋蔵量は157兆フィートと言われています。1972年の発見です。

次がメドヴェージェ・ガス田で、埋蔵量は54兆立方フィートといわれています。

最後がザポリヤルノエ・ガス田で、埋蔵量は94兆立方フィートです。発見は1965年です。

現在生産中のガスプロムの主要なガス田は以上になりますが、2番目のグラフを見てお気づきのようにこれらの既存のガス田は今後生産を続けてゆくと段々生産量が減ってゆくことが予想されています。従って、この生産プロフィールには記載されていない新しいガス田の開発というのが重要になるわけです。実はガスプロムは既に3つの有望なガス田を発見しています。

ガスプロム (ロシアの天然ガス株) ①







ロシアの天然ガス会社、ガスプロムについて書きます。同社は世界最大の天然ガスの確認埋蔵量を誇っており、29.8兆立方メートルの埋蔵量となっています。これは世界の埋蔵量の6分の1にあたります。生産量という面から見ると世界の天然ガス生産量の実に19.8%がガスプロムによります。同社は延長15.5万キロメートルのパイプライン網を持っています。同社の売上の約半分は欧州に対する輸出から来ます。同社の天然ガス田の大半は西シベリア地方にあります。
なぜ今、ガスプロムに注目するかというと今年新興国の大企業の中で同社が最も資本市場面、ならびに地政学的な見地からリスクを孕んでいると考えるからです。
まず同社はダントツでBRICsの企業の中でも負債額が大きいです。おおまかな比較をすると、中国、インド、ブラジルの全企業の負債総額を足し上げた数字とガスプロム1社の負債額がほぼ同じです。同社の負債の少なからぬ部分は欧州の金融機関からの借り入れです。
僕がガスプロムの状況に興味を持った直接のきっかけは資金繰りの都合で一時社員に対するお給料の支払いが滞りかけたというニュースを目にしたからです。
「まさか、あのガスプロムが?」ちょっと最初は信じられませんでした。
しかし同社は新規の設備投資に莫大な予算をコミットしており、お金が幾らあっても足らないことは以前からわかっていたので、良く考えてみれば最近の原油安(=同社の天然ガスの輸出価格はブレンド原油の価格に緩く連動しています)でキャッシュフローの問題に陥っても不思議ではありません。
それと年の瀬にガスプロムがウクライナへのガスの供給を「相手側の契約違反」を理由に止めたというニュースがありました。ウクライナはガスプロムの天然ガス・パイプラインが最初に通過する外国です。パイプラインによる天然ガスの輸出は「トコロテン」式にパイプラインに詰めてぎゅうぎゅう押し出すやり方ですから、ウクライナへの供給を止めるということは暗に「西欧もどうなっても、知らないよ!」と脅しているのと同じです。これも僕がガスプロムの今後の動静に注目している理由です。
さて、一番上のパイ・チャートはガスプロムの天然ガスが誰に売られているかを示したものです。ボリューム・ベースで約半分がロシア国内に売られています。CISというのは旧ソ連圏ですね。ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンなどがここに入ります。
その他海外の多くはヨーロッパの国々で、ドイツ、トルコ、イタリア、英国、フランスなどが主要顧客です。先ほど、売上高の約半分が欧州から来るといいましたが、このチャートをみるとボリューム・ベースではその他海外は29%に過ぎません。するとこの緑の部分、つまり欧州向けは国内の販売価格よりかなり高い値段で売られていることがわかるわけです。これがガスプロムのストーリーを理解する上でまず最初の大事なポイントです。
つぎに2番目のチャートを見るとロシア国内での販売分については電力会社向けが36%と一番多いです。一般家庭は16%です。この部分はなかなか値上げできないと思います。
なお、一般家庭や公共部門をのぞいたロシア国内の天然ガスは2011年までにマーケット・プライス、つまり国際市況と同じ値段まで値上げしたいというのがガスプロム側の願いです。この場合、公共性の強い電力会社などはなかなか値上げできないと思います。そこで発電をこれまでの天然ガスから石炭タービンへとスイッチするということがロシアで今後推進されると思います。すると余った天然ガスをより有利な輸出へ回せることになるわけです。
つぎに生産ならびに輸送のサイドをみてみましょう。3番目の地図ですが、これはガスプロムの欧州向けのパイプライン網ならびに欧州における貯蔵施設の分布を示しています。このようにパイプラインを通じてガスプロムは欧州のエネルギー供給に既にがっちりと組み込まれているわけです。