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2009年5月12日火曜日

銀行株アナリスト、メレディス・ウィットニーの理性の声














ウォール街に生存する最後の本当に話を聴くに値するアナリスト




マリア:2週間ほどまえに貴女が私の番組に出演したとき、「銀行株にショートを振るのは気をつけた方が良い」と言ったけど、あれはすごく当たっていたわね。このラリーは「行き過ぎ」だと思う?

メレディス:はじめから「行き過ぎだ」という感じは持っていたわ。私に言わせればこれは「政府によって捏造されたモメンタム相場」よ。つまり銀行が実力以上の第1四半期の利益を出せるように政府がお膳立てしたの。銀行自身の力ではこれだけの利益は到底だせなかったと思う。そして同じ「好環境」が第2、第3四半期も続く可能性がある。だからこれらの銀行はタンジブル・ブック・バリューで1以下の水準から2倍以上の水準まで一気に買い上がられたわけ。ラリーが起こるとは思っていたけど、ここまであけっぴろげにやられると自分の眼が信じられなくなるほどだったわ。だって銀行のコア収益力は取るに足らないくらい不足しているのですもの。

マリア:それじゃなぜ銀行株はラリーしたの?

メレディス:貴女がファンダメンタルズを重視する投資家なら、「市場のルール」という枠組みの中で投資の分析をやるものよ。ところが政府が勝手に「市場のルール」をどんどん改変していくものだから、もはや「市場のルール」は投資判断にあてはめられなくなる

マリア:朝令暮改で「市場のルール」がころころ変わったからね。

メレディス:そう。私の生きている間に目撃するとは予想すらしなかった破廉恥な政府の介入がどんどん行われたわ。ショート筋は「これはまともに取り合っていられない」と匙を投げて買い戻しに走ったし、長期投資家は理詰めで銀行株をアンダー・ウエイトにしていたのに突然、ラリーが捏造されたので買い出動せざるを得なかった。このモメンタムはだから銀行業を巡るファンダメンタルズの根源的な好転が全くないままに完全に捏造されたものよ。去年はマーケットの荒れが実体経済に悪影響を与えたけど、今年は実態経済でおこっていることが最終的にはマーケットに影響を与えると思う

メレディス:どんなに銀行の収益を政府が捏造しようが、失業率は高止まりしているし、消費者のデフォルトは予想より悪い数字で入ってくるはず。だから消費者はお財布のひもを緩めてどんどん買い物をはじめることはしないと思う。小売株はショートよ。たとえばの話、バンクオブアメリカは第4四半期に530億ドルのクレジット・カートのクレジットラインを削減したわ。さらに今年の第1四半期には2000億ドルものクレジットラインが消滅した。こんな状況でいつまでも消費者が買い物を続けられると考える方がおかしい。

メレディス:ファンダメンタルズから考えると銀行株はメチャクチャ割高だと思う。でも今は上昇モメンタムがついているからショートして良いかどうかわからない。いったん、センチメントが暗転したら銀行株がどんどん売られるというシナリオもあると思う。政府がエージェンシー債を買い上げたので銀行のタンジブル・ブック・バリューは上昇した。おまけにFASBルールを緩和したことも銀行を助けたわ。投資家がようやく銀行株に出動したとき、また去年と同じように市場の急落を見たら投資家は2度もだまされることになる。でもひとつだけ言えることは政府がどんなにルールを変えても消費者はオケラだということ。そもそも消費者に消費力が無いのだから消費は元へは戻らない。小売株はショートよ

マリア:銀行の公募増資は成功するかしら?。

メレディス:銀行の公募を買おうとしている投資家に言いたいことがある。それは「自分は一体、なにに投資をしようとしているのかをよく見極めなさい」ということよ。去年、流動性の危機が来て、それが信用の危機にひろがったわけでしょ。そして今は銀行が「今後どうやって儲けていくのか?」という基本戦略がとても不透明になってしまったわけ。つまりビジネス・モデルの喪失よ。投資家はバカ高い株価評価を銀行株に与えているけど、たとえばJPモルガンはPERで30倍よ!でも彼らの総資産は縮小しているし、フィー・ビジネスも縮小している。彼らの標榜する、去年まで成功してきたビジネス・モデルは今後二度と通用しないと思う。05年や06年のピーク・アー二ングスの頃を思い出せば、あのときは証券化ビジネスが花盛りだった。住宅ローンのビジネスは、それを銀行が持ち切りにする限り長期での収益性はローンの査定の良し悪しで決まるから、かならずしも利益が保証されているとは限らない。それに対して住宅ローンのオリジネーションだけやって、あとは証券化して飛ばせば利益は確定できるわ。だからただ住宅ローンを貸し付けて、それがバランスシートに載っているからといって、それが利益の源泉だと勘違いしないことよ。運用のビジネスだって昔よりはフィーが少なくなると思う。こうやってかんがえてくると銀行のあらゆるビジネスがことごとく壊れているわけ。だからこういうコングロマリット化した銀行本体に投資するのは駄目。今後多角経営を改めるためにこれらの銀行がスピンオフするJVには有望な投資先があると思う。

2010年、2011年の銀行株の収益はコンセンサスよりメチャクチャ低くなると思う

多くの銀行はいまだに腐食しつつある資産を抱え込んでいることを忘れてはダメ。あと数か月したらこれらの銀行がもう一度公募などをやる羽目になるかもね。

マリア:ストレステストについてはどう思う?

メレディス:ストレステストの結果がどんどんリークしたのにはあきれた。若し一般の企業が情報をリークしたらインサイダー情報で牢屋行だけど、大統領や政府がやれば合法ってわけね。アメリカ国民はもっと自分に対して厳しい行動規範をあてはめるものとばかり思っていたわ。政府がやっていることは時間稼ぎにすぎないわ。

マリア:投資戦略についてどう考えている?

メレディス:小売は売りよ。コンシューマー・ディスクレッショナリーのセクターも売り。3月というのは季節的に消費は強い時期だけど、4月5月になれば景気刺激策の効果は剥げてくる。そうなれば消費が再びストップすると思う。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

金融の警告はやっぱりこの人ですねぇ。
小売はダメでも、クレジットカードはどうなんでしょう…。ジムは評価してましたし。(Stop Tradingにて)

Neco_Arc さんのコメント...

漠然と感じていた不安がハッキリと言葉に表されていて、スッキリしました。
アメリカ人が借金して物を買って、世界の景気を引っ張るという流れは完全に変わったのでしょうし、もう戻っては来ないのでしょうね。。。
それから、銀行の再編もやっぱり必要でしょうね。