この背景には中国の存在があることは否定できません。
中国は2つの面で世界の景気にとって重要です。
ひとつは言い古されていることですが4兆人民元にのぼる景気刺激策を発表していること。
もうひとつはコモディティーの価格が下がったのを契機として中国が強烈な資源の買占めを始めている点です。
この第2点目について主に考えてみたいと思います。
まず買占めは:
①資源、素材そのものを買う
ということに加えて
②それらを産出する企業の株式を支配したり融資により特別の関係を手に入れる
という経路を取っています。
②に関しては中国はロシアのロスネフチの借金を引き受けたり、ブラジルのペトロブラスの超深海探索の費用を用立てることに合意したりしています。またオーストラリアの企業に出資したりアフリカに進出したりしています。
①の資源、素材の手当てに関しても市況が安い時にどんどん買い込んでおこうということで備蓄を増やしています。
建機の会社、ジョイ・グローバルのカンファレンス・コールやバラ積み船のドライシップスのカンファレンスコールを聞くと、今回の中国の「おとな買い」の程度がいかに凄いかが窺い知れます。
例えば銅は「過去に例を見ないリ・ストッキングが進行している」(ジョイ・グローバル)し、鉄鋼に関しては「1億トンの在庫が形成されつつある」としています。
このため鉄鉱石の輸入は過去最高の水準(上から4番目のスライド)ですし、欧州からの鉄鉱石の需要が減少(最後のスライド)した分を中国(「東洋」というレーベルになっていますが)が肩代わりしている構図がわかります。
石炭は鉄を作るときや火力発電所で消費されるのですが、その石炭の輸入についても急激に伸びています(上から3番目のスライド)。
このため、鉄鉱石や石炭の輸送にとりわけ適したケープサイズ(=最も大型です)のバラ積み船の傭船料は急上昇(上から2つ目のスライド、ケープは青色)しています。
ただ、より小さいバラ積み船であるハンディサイズやパナマックスの傭船料はそれほど上がっていません。これらの比較的小さいバラ積み船は、たとえばH型鋼を輸出したりする際に使われます。またアジアの「域内貿易」の主力となる船種でもあります。
まとめると世界の素材の業者に「需給のひっ迫感」が出ている理由はアグレッシブな中国の存在に因るところが大きいです。でも中国の輸出は未だ復活していません。中国の鋼材などの価格はわりあいしっかりしていますが、決してどんどん上昇しているわけではありません。
つまり:
All dressed up and nowhere to go.
という状態なのです。
1 件のコメント:
リオティントの買い占めの企てはうまくいきませんでしたね。
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