「あのさぁ、マイケル、そのふたこと目には春山、春山というの、止めてくんない?」
20年近く前の話です。
(チェっ!誰なんだい、一体、その春山って奴は?)
僕はニューヨークのアメリカ株のデスクに居て、マイケルというのはロンドンのセールスマンでした。
時々ロンドンと国際電話で打ち合わせをすると、かならずこの「凄い人物」の話題になるのです。
春山さんは(この時点では僕は面識ありませんでした)日本の大手生命保険会社から僕の勤めていた投資銀行の関連会社であるM投資顧問に出向し、ロンドンに駐在する身でした。
当時はジャパン・マネーが世界を席巻しており、この生命保険会社と僕の勤めていた投資銀行も合弁で投資顧問会社を設立していたこともあり、我々にとっては大切なお客様。
運用会社にも「旬」というものがあって、今ならニューポートビーチのPIMCOが一世を風靡する存在ですけど、1980年代の終盤から1990年代初頭のM投資顧問は世界で最も要求度の高い機関投資家であり、それこそ飛ぶ鳥を落とす勢いだったのです。
そのM投資顧問の「黄金時代」を仕切っていたのはロール卿(エリック・ロール)という人で、イギリスの経済学史の権威です。イギリスの経済学部の学生は皆、エリック・ロールの書いた本を教科書として使っていました。早い話が日本の学生にとってのサミュエルソンみたいな存在なわけです。
だからロール卿から直々に投資を学ぶというのは、これはもう極めて特別の事だったのです。
一方の僕はその投資銀行のグローバル拠点の中で最も弱いとされたニューヨーク支店に居たので、「盲腸」みたいな存在です。塹壕の中を這いまわる使い捨ての兵隊のぶんざいですから、「ロンドンに凄い日本人のファンドマネージャーが居る」と聞いても湧き上がってくるのは羨ましさや妬みの感情です。とにかく胸糞悪いし、本人に会っても居ないうちから反感は募るばかり。
■ ■ ■
結局、僕が春山さんに初めて会ったのはドットコム・バブルたけなわの頃ですから、ずいぶん時間が経ってからです。その頃までには彼の部下の人が沢山サンフランシスコに来ていたので、春山さんの人物について探りを入れる機会には事欠きませんでした:
「で、どうなのョ、アンタの上司の春山って人は?」
僕の綿密な内偵調査による春山昇華の人物像は運用面で素晴らしい成績を残したのは当然として「部下から慕われ、上には正論をズケズケ進言するオトコ」というものでした。
(ふうん、こら、チョッと俺のイメージとは違ったかな?)
■ ■ ■
で、実際に春山さんに会って話をしてみると未だ日本にネット証券という業態が存在していない頃からネットの可能性や一般の投資家の啓蒙の必要性などを熱く語っていました。
今で言うところのWeb2.0という言葉が出来るずっと前からWeb2.0に該当する現象の重要さを指摘していたのも彼です。
これは僕の想像ですが、ある意味、春山さんや僕などはジャパン・マネーが闊歩した、いい時代をフルに享受した稀有なる世代であり、その前にもその後にもこういうラッキーなジェネレーションは存在しません。春山さんにはその「日本への恩返し」という気持ちがあっていろいろなノウハウや考え方をブログにしたためている部分があるように思うのです。
5 件のコメント:
踏み上げさん
昔話を有難うございます。
やはり、すごい方ですね。春山さん。
他の方々からもよく、
lucky generation のことは耳にします。
ただ、我々世代も踏ん張っていきますよ!
時代のせいにして諦めたくはないですから。
^^v
踏み上げさん
昔話をありがとうございます。
私は去年の8月に春山さんと広瀬さんのブログに出会い、ブログを読むようになって1年が経ちました。
私はラッキージェネレーションJr.
なわけですが、自分の時間のある大学時代に
特に有名な大学に行ってる訳でもない身ながら
素晴らしい出会いを経験しております。
踏み上げさん
昔話をありがとうございます。
私は去年の8月に春山さんと広瀬さんのブログに出会い、ブログを読むようになって1年が経ちました。
私はラッキージェネレーションJr.
なわけですが、自分の時間のある大学時代に
特に有名な大学に行ってる訳でもない身ながら
素晴らしい出会いを経験しております。
Blue Traderさん
コメントありがとうございます。
僕よりもひと世代若い人たちは本当に苦労していると思います。世代間の不公平とかいろいろな議論がありますが、それより何より:
①そもそも世間の景気がずっと悪い
②日本の株式市場も長期でみればずっと低迷
など、不利な条件ばかりです。その中で道を切り拓いて行くのは僕のように概ね順風の環境ばかりだった者よりずっと勇気が要りますね。
がんばってください。
敦さん
コメントありがとうございます。
投資に学歴は関係ありません。だから好奇心や向学心があれば誰だって始めることができるし、議論に参加することが出来ます。
好きな事を続ければ人間だんだん自然に上達するものです。敦さんも頑張って続けてください。
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