JPモルガンの投資銀行部門の共同ヘッドであるビル・ウィンタースが退社することになりました。
投資銀行業界は彼が次に何をするかを息を詰めて見守っています。
ビル・ウィンタースの退社の背景は今のところ不明ですが、この事件は昔、シティグループでサンディー・ワイルと、その愛弟子だったジェイミー・ダイモンとの間で起こった確執を想起させます。
ジェイミー・ダイモンはサンディーの右腕としてシティグループの黄金時代を作った男ですが、その後、サンディー・ワイルとの折り合いが悪くなり、バンクワンに転出します。
そしてバンクワンがJPモルガン・チェースと合併して、ウォール街に返り咲いたのです。
ビル・ウィンタースはもともとJPモルガンのロンドンで採用された人間で、JPモルガン自体はチェイス・マンハッタンに買収された被買収企業ですから社内では「傍系」の出身ということになります。
しかしリスクに対する極めて優れた平衡感覚を持っている人で、もともとJPモルガンが開発し、「おはこ」であったクレジット・デリバティブの市場からいち早く足を洗うことを強く主張したのが彼だったのです。
つまりJPモルガンが今回の金融危機で大きな傷を負わなかった功績の少なからぬ部分は彼の決断によるところのものなのです。
それでは何故、そのようなエースがJPモルガンを出てしまうのか?
ひとつにはJPモルガンにはジェイミー・ダイモンが居るので、今後何年も(下手をすれば10年以上)、トップの座には就けないということがあると思います。
次に投資銀行部門の共同CEOであるスティーブ・ブラックの存在を挙げることが出来ます。スティーブ・ブラックはもともとソロモン・ブラザーズの番頭みたいな仕事をしていた人ですが、権謀術数には極めて長けた人です。マキアベリスティックなブラックと、ビル・ウインタースのそりが合わなくなったと考えても不思議はありません。
いずれにせよ現在の投資銀行界で最高の逸材が「浪人」することになったので、各社は彼を獲得するため激しく動くことが予想されます。
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