☆ ☆ ☆

2009年10月23日金曜日

グローバル・スタンダード 2.0


上のスライドは4月に「シリコンバレー特集」をやったとき使ったものです。
そこで指摘したのはマーヴェル(MRVL)という会社の創業社長、サハート・スタルチャが、「次の10億人の顧客の獲得」を真剣に考えているということです。
日本の人口は1.27億人、アメリカの人口が3.14億人なので、10億人を顧客に取り込むためには新興国の人々を想定しないといけません。
サハートは「コンピュータ・チップのパワーの恩恵に与かれるのは先進国の人や裕福な人だけだという考え方は間違っている。人々が豊かになるまでの時間が待てないのなら、コンピュータの方で値段をどんどん下げて人類すべてがその恩恵に浴すことができるようにすべきだ」と主張しているのです。
マーベルのデジタル・チップのエンジニアは世界で最も生産性の高いチームです。車に例えればフェラーリのチームみないなものです。その連中がそのパイパワー・チップを低開発国の貧しい人々を含めた、すべての人の手に届く値段で提供することをモットーとし「デジタル・デバイドを埋める会社はオレたちだ」と考えている点は極めて重要です。

われわれはBRICsなどの投資ストーリーを考える場合、「インドや中国の農村の人たちはまだ貧しいから、携帯電話は買えてもコンピュータは無理だろう」とか、すぐ紋切り型の発想になってしまいます。でもサハート・スタルチャのような、チェスで言えば3手も4手も先を読める経営者が考えていることはやっぱりスケールが違います。
昔、ドットコム・バブルの時、「グローバル・スタンダード」という言葉がもてはやされました。「アメリカがすべてを牛耳っていて、世界標準はアメリカが決める、、、」という議論です。
僕は当時シリコンバレーのIPOシーンのど真ん中に居たのでこのグローバル・スタンダード云々の議論を白々しく思いました。
(彼らがしのぎを削っているのは、ライバルに寝首をかかれないように他社より優れたオペレーティング・システムやビジネスモデルを求めているだけなのに、、、なんで外野の傍観者たちはそれをあたかも国家の意思とか国民の総意のようにとるのだろう?なんか馬鹿げている。)
X86プロセッサーもウインドウズOSも出発点は個々のイニシアチブであり、国家の方針ではありません。それが結果として世界の人が使うもの(=グローバル・スタンダード)になったからといって、最初からそういう陰謀的意図でビジネスをはじめる人が居るでしょうか?
若し、その論法をあてはめるのなら、たぶんTwitterなんてものダース・ベイダー的な世界征服を目指した試みであると決めつけられるに違いありません。
現実としてはiPhoneやTwitterなどの便利なツールがそこにあり、世界の人がそれを使っている、、、ただそれだけの事なのです。しかも最近はAtomとかAndroidとかARMADAなどの、いままでのそろばん勘定とはぜんぜん違う、値頃なソリューションがどんどん出てきています。
するとそういうデバイスを使いこなせる人と使いこなせない人の間で、デジタル・デバイドが起きる、、、
先進国の中にもそういうツールが使えず、恩恵に浴せない人が居る一方で、新興国の中にもカッティング・エッジのツールをどんどん使いこなす、超ノマド的人種はいま激増しています。
すると国家という区分で人々の帰属を把握することの意味が薄れていると考えることができるのです。そういう超ノマド的人間はアメリカにも居るし、インドや中国やロシアやブラジルにも居るし、当然、日本にも居ます。
国家の枠組みを超え、時間や空間を超えた存在、そういう人種こそ、我々が今後注視すべきトレンドであり、彼らのOS(オペレーティング・システム)はネットそのものなのです
若し、そういうまわりくどい言い方が厭なら、それを「グローバル・スタンダード2.0」と呼べばいいんじゃないですか?
そして「グローバル・スタンダード2.0」はあきらかにpowered by Silicon Valleyです。

0 件のコメント: