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2009年10月12日月曜日

新興国の株をドル建てADRで買うと不利か?

よく読者の方から「新興国の株をドル建てのADRで買うとドル安局面では不利ではないのか?」という質問を受けます。

結論から言えば、ドルの動きは殆ど関係ありません。

それを説明します。

常に裁定される現地株とADR
今仮にフィデリティーがペトロブラスのADRを50万株、買い増ししたいと考えたとします。フィデリティーのトレーダーはUBSのデスクに電話して、「ペトロブラスのADRを50万株、拾って欲しいのだけど」と注文します。

UBSのトレーダーはサッとNYSEでの出会い(売り注文、買い注文の板のこと)を一瞥するとフィデリティーのトレーダーに「NYSEでは30万株くらいしか拾えないよ」と告げます。「若し、一瞬、待ってくれれば、サンパウロで玉を調達できるか当たってみるけど、、、」

フィデリティーのトレーダーは「OK、それじゃ、このまま待つよ。」

UBSのトレーダーは急いでサンパウロに電話し、残株を手当します。その際、ADR比率と為替レートを勘案して(上の図参照)、それにADRへの転換に必要な信託手数料(僅かなフィーです)を乗っけてコストをはじき出すわけです。

UBSのトレーダー:「のこりの20万株はNYの場でついている値段より2¢割高になるけど、、、いい?」

フィデリティーのトレーダー:「DONE!」

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上の例はアメリカで或るADRに「買い」の需要があった際、現地市場から株券を調達してADRをクリエイト(創造)する過程を説明しました。

逆にアメリカで大量のADRの「売り」注文が来たときはADRを信託銀行に持ち込み、普通株に転換(=ADRのキャンセル)して現地市場でも売りさばくということもやります。

つまり現地市場とADR市場は常に裁定が効いているのです。そして裁定取引の際にはその瞬間の為替レートが使われます。従って、ADRの建値は常に現地通貨の強い、弱いを反映しているのです。

それが証拠に例えばブラジルの本国市場で或る銘柄が1.00%しか上昇しなかった日に同じ銘柄がNYで1.15%上昇したとします。(こういうことは毎日あります)

その場合、差額の0.15%は実はブラジル・レアルがドルに対して強含んだことを織り込んでいるからなのです。

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