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2008年9月15日月曜日

静かに振り返るとき


リーマン・ブラザーズ(ティッカー:LEH)の倒産はいよいよ避けられない状況のようです。

我々投資家の気持ちとしては、「月曜日の相場、、、大丈夫かしら?」という思いが先に立ちます。でも、ここは心を落ち着けて考え直してみる必要があると思います。

先ずリーマン・ブラザーズの状況がおかしくなっているということはあまねく世間に知れ渡っています。今日のリーマン倒産のニュースに接して、「虚を突かれた」投資家が居たとすれば、その投資家はよっぽどぼんやり者に違いありません。

「相場は知ったら、しまい」という格言がありますが、そういうぼんやり者が月曜日に慌てて株を処分しに来たら、自分も慌ててそれに同調して売るのではなく、買い向かうことこそが正解だと思うんです。

これまでアメリカのマーケットを振り返ると悉く「破綻は買い!」でした。日本の株式市場は僕はよく知りませんけど、その相場のメカニズムは大体、一緒ではないでしょうか?
(山一が倒産した後って、、、相場は下がったんですか?)

もちろん、リーマンが倒産すれば、リーマンのバランスシートに載っている500億ドル相当の資産がてんやわんやの様相を呈すると思います。そのうちのある部分は流動性がある証券でしょうし、ある部分は流動性に乏しい、やっかいなモノかも知れません。でもそういう複雑な証券でもきれいに骨までついばむことが出来るハゲタカは既にリーマンの上空を旋回しているのです。彼らはリーマンがついに事切れたと見届けた瞬間、その屍の上に降り立って、死肉の奪い合いを始めると思います。

リーマンが株式の券面や現金などを預かっていたプライム・ブローカー部門やニューバーガー&バーマンなども簡単にバンク・オブ・ニューヨークとか、そこらへんのどこにでも居るサービス・プロバイダーに事業・顧客口座の継承は出来るはずです。

つまり海中に落ちた一滴の血は、獰猛な鮫たちを興奮させ、アニマル・スピリットが頭をもたげるに違いないのです。

このことはウォール街の整理を進捗し、不良債権問題の処理を加速する効果があります。

思えば2年ほど前から指摘してきたウォール街の飽食、住宅市場参加者の傲慢、金融関係者の全般的な質の低下、、、そういう問題がいま、リーマンの崩壊というフォーカル・ポイントめがけて、全部収斂してきているわけです。つまりこれはひとつの時代の終わりであり、全てが無に帰ったわけです。

今日以降、CDO市場やABCP市場などは永遠にビジネスの進め方が変わるでしょう。そして、これまでその市場の育成に関与してきたプレーヤー達は、ちょうどドットコム・バブルが弾けたとき、フランク・クァトローンやヘンリー・ブロジットなどの「時代の寵児」たちが「遊んでもらえなくなった玩具」のように捨て去られ、忘れ去られたようにゆっくりと、根こそぎ退場するのだと思います。

僕の好きな作家に清水一行という株ものを書かせるとぴか一の人が居ますけど、彼の数多い作品の中で僕が一番何度も読み直したのは、実は『相場師』という、比較的有名でない作品です。北浜の寵児と言われた証券マンが証券不況の時代に再起を期す話で、金策に奔走したり、社員の使い込みが発覚したりと、暗い話がこれでもか、これでもかと続くんです。彼は一枚の罫線をお守りのように抱えて、復活を夢見るのですが、最期は力尽きて証券会社は倒産、その記者会見の現場でショックの余り本人は眼がみえなくなってしまう、、、ところがそこへ公債発行のニュースが飛び込み、倒産記者会見に来ていた証券記者は「大相場がはじまるぞ!」と一目散に駆け出し、からっぽの会見会場に主人公は取り残される、、、

まあそういう話です。(ネタバレですみません。)

僕はリーマンのニュースを見ながら、『相場師』を思い出していました。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

いよいよ出動でしょうか?

匿名 さんのコメント...

踏み上げさんは

9月は相場がよくなく
10月末まで 派手なトレーディングは
控えるということで

リーマン処理の確定時期によっては

10月末が前倒しになるかもしれないということでした。

いかがでしょうか?トーレディングの時期に変化は起きそうでしょうか?

リーマンについての発表後の市場の反応を見てから判断しても遅くないでしょうけど

広瀬隆雄 さんのコメント...

フラウボウさん、カロンさん

コメントありがとうございます。
本来なら10月半ばまで出動を見合わせるつもりでしたが、、、

明日マーケットが開いてみないとなんとも言えません。

でも焦らなくてもチャンスは幾らでも出てくると思います。

今日のニュース・フローの凄さ(ウォール街は日曜返上、全員出勤です!)から考えて、相場はかなり煮詰まるところまで煮詰まってきている印象を受けます。

匿名 さんのコメント...

山一破綻後は最終的には98年秋に底打ちですから更に1年程度下げています。

尤もその間は保ち合いが長かったですけど