昨夜JPモルガンがワシントン・ミューチャルの店舗網および預金ならびに貸付ポートフォリオを買収すると発表しました。
それと同時に80億ドルの公募増資を発表、速やかにはめ込みに入りました。
今日の寄り付きまでにJPモルガンは公募の規模を100億ドルに増やした上で、$40.5で値決めに持ち込んでいます。
僕はこの手のクラッシュ・プレースメント(=「ホイ来た、ドン。」で大量の株式を売りさばくこと)を沢山経験しているので、この春のメリルの公募、先日のゴールドマンの公募、そして今日のJPモルガンの公募がいかにしんどい作業であるかは痛いほどよくわかります。
なかでもとりわけ今日のJPモルガンの公募はきつかった筈です。
僕がそう考える理由はいくつかあって、先ず営業組織のファイア・パワー(砲火力)という面で、JPモルガンは引き受け業界の重鎮、ゴールドマンや全米に広がるリテール販売網を擁するメリルなどより数段落ちるという点が指摘できます。
さらにメリルのディールは今回のJPモルガンのディール、先日のゴールドマンのディールより小さかったという点も忘れてはならないと思います。
また、ゴールドマンのディールではウォーレン・バフェットの永久優先株取得という「材料」に抱き合わせた、コンカレント(=同時)・ディールであり、勢いに任せてねじ込みやすかったです。今回はワシントン・ミューチャルという、最近、米国の投資家から鼻つまみモノにされている資産のうちの「よいところ」を中心にJPモルガンが買ったわけですけど、材料としては説明に多くの言葉を要します。
それらの数々の障害があったにもかかわらず、JPモルガンはきっちり100億ドル完売しているし、アフター・マーケットでは株価ははめ込まれた水準から+10%上昇しています。
これを書いているのはザラ場ですので、まだグリーン・シューがエクササイズされたかどうかはわかりません。たぶん、シューのエクササイズの発表は来週になるでしょう。
それにしても僕が感じたのは曲がりなりにも「これだけの株数、よくはまったな。」という事です。
案外、待機している機関投資家のキャッシュは潤沢なのかもしれません。
6 件のコメント:
いつもお世話になっています。
<(_ _)>
もしよければ、楽天で取引のできるアメリカの会社で証券会社、良い不動産屋と、銀行を教えていただけると嬉しく思います。
よろしくお願いします。
名前が入りませんでした
初めまして。外国株のタイムリーな情報が読めるサイトとして有難く拝読しています。
先日のGSにしろJPMにしろ、資金が必要になったから、
「ハイ、増資します」というノリであっさりと調達を完了してしまった感がありますが、
公募増資の手続きはそんなに短時間で行えるのですか?
既存株主の持分の希薄化を招くので、
SECに書類を提出したり、もっと時間がかかるものと思っていました。
それと、昨日JPMは上昇して引けましたが、
40.50という価格は最近数ヶ月の株価からすると、割安ではありません。
どういう人が今回の増資に資金を出すのでしょうか?
公募増資というからには一般の個人投資家が買うのかと思いきや、
WMの買収発表から24時間もたたない内に応募が終わっているようで、
なぜ大量の株が短時間にはけてしまったのか不思議です。
wineさん
いつもコメントありがとうございます。
証券会社で好きなのはゴールドマン・サックス(GS)。銀行だとJPモルガン(JPM)ですね。
不動産に関してはよくわかりません。
桃太郎さん
既に日頃からSECに財務諸表などの資料が提出されている企業なら、アブリビエーテッド・レビュー(簡略化されたチェック)で、すぐに資金調達できると思います。とりわけ証券会社や大手銀行は常に市場から資金を調達していますから、ファイリングをイチから徹底的に調べられる(=それをフル・レビューといいます)ことはありません。
桃太郎さんご指摘のように、公募価格の$40.5で買った投資家は一日で+19%もの利食いですよね。これはこの規模の公募増資では極めて珍しい現象です。
その意味では先日のゴールドマンの公募も大利食いになりました。
この厳しい相場環境の中で相次いで大型公募が大利食いになっているという事実はたいへん注目に値すると思います。(桃太郎さんのように観察の鋭い読者は少ないですね。)
公募の多くは機関投資家にはまります。JPモルガンの場合は年金や投信が主でしょうね。
面白いもので、若し今回のような公募が募集がキックオフされて最初の1時間くらいで「うん、良く売れているぞ」という感触になると突然、人気が沸騰して、瞬間完売になるケースもあるんです。
なぜならJPモルガンはダウ採用銘柄であり、大型株で、若しこの公募が(今回実際そうなったように)値決めしてからすぐに上昇するようであれば、若し、公募をパスしたら、一瞬のうちに他の運用会社との運用競争に負けるという不安があるわけです。
それにつけても、、、
100億ドルというのはたいへんな金額です。
こういう公募が瞬間蒸発するということは、それだけ機関投資家が手元のキャッシュを持っているということに他ならないと思います。
丁寧に解説してくださり有難うございました。
BSCとWMを買収し、金融不安が騒がれる度にオイシイところを拾っていくJPMは勝ち組と思います。
これからもブログを楽しみに読ませていただきますので、よろしくお願いします。
コメントを投稿