ワコビア(WB)を巡るウエルス・ファーゴ(WFC)とシティ(C)の争いは未だ解決していません。
交渉が長引いている理由として:
①若しワコビアを2分した場合、ワコビアの電子決済システムをどうやってウエルスないしはシティの既存の決済システムの連結するのかで交渉が紛糾していること
②ワコビアの帳簿の中身を見たウエルスとシティの経営者が、その中身の悪さに改めて驚愕したこと
という2つが報道されています。
でも僕の考えでは①は兎も角、②は間違っていると思います。
ワコビアのポートフォリオの中でも最も問題視されているのはカリフォルニアとフロリダのARM(変動金利住宅ローン)です。これらの地域は2006年にワコビアがゴールデン・ウエストを買収したときに取得したものです。
このゴールデン・ウエストは「ワールド・セービングス」というブランドネームでS&Lを展開していました。この「ワールド・セービングス」というのはおよそカリフォルニアの銀行のブランド・ネームの中では一番ダサいブランド・ネームでした。
そのことについて昔、ゴールデン・ウエストのオーナー社長のサンドラー夫婦に質問したことがあるのですけど、彼らの答えは「ウチはブランドには金をかけない。ATMも置かない。なぜなら地域に密着して、その地域で一番根を張った、倹約志向の顧客と長期に渡る関係を築いてゆきたいからだ。ウチの客はおじいちゃん、おばあちゃんも多くて、彼らはATMだと戸惑ってしまうんだよ。」
確かに銀行の窓口で本人確認してイチイチ挨拶して、、、という昔ながらのスタイルは時代遅れだったかも知れませんが、それをやることでゴールデン・ウエストの行員は顧客の事を他のどの銀行の行員より詳しく把握していました。歴史的に見てもゴールデン・ウエストの焦げ付き比率は他のARM業者のそれより常に低かったと記憶しています。
そのことは他のカリフォルニアの銀行の経営者の話を聞いたとき、皆、口を揃えて「ゴールデン・ウエストのやり方は真似できない。彼らはハイタッチだからこそオールARMでポートフォリオが組めるんだ」と羨ましそうに語っていたことからも間違いないと思います。同じ町のライバルであるウエルスがそのゴールデン・ウエストのポートフォリオを研究していないわけがありません。
12 件のコメント:
ちょっと曲がり方が酷いようですね
今日のアメリカの銀行セクターは酷いものです
踏み上げさんご自身が認めておられるとおり、初心者(僕も初心者の領域ですが)も多くサイトを訪れているのですから、もう少し悪いシナリオにも触れるべきではないでしょうか
万年強気も悪くは無いですが、踏み上げさんを信じて付いて来ている方のためにも、一度現状を総括された方が良いかと・・・
良いシナリオ、悪いシナリオを示してみるべきではないでしょうか
僕は今はベアですが、ベアだけではマーケットは成り立ちませんから・・・
rom人さん
コメントありがとうございます。
この記事で指摘したかったことはライバルの銀行は既にワコビアの帳簿の内容を相当詳しく知っていた筈だということだけです。それ以上のことは言ってないし、それ以下でもありません。
銀行セクターについては例えばバンカメの公募が予定よりずっと竜頭蛇尾になってしまった話とか、たぶん、もうバランスシートを修復するウインドウは閉じてしまった話とかはちゃんと書いたつもりです。
数日前に紹介のあった銀行銘柄はどれも、もっと落ちそうですね。 来週に銀行関連だけでなく小売のアナウンスもありますが、また、どっと落ちそうな予感ですが、ダウ7500まで行きそうでが、何かいいニュースはありませんでしょうか?
パック万さん
コメントありがとうございます。
今日銀行株が下げた理由は大きく分けると3つあります。
①GMに倒産のリスクが出始めていること
→お金を貸している銀行は大丈夫か?という不安が投資家に出始めています。
②空売り規制が解除されたこと
③銀行が自ら公募でバランスシートを補強する途が絶たれたこと
つづき、、、
GMに関しては倒産してしまうと社会的な影響が大きすぎるので公的な資金が投入されると思います。
空売り規制に関しては僕の考えはアップティック・ルールを復活すべきだという事です。
また銀行への米国政府の公的資金注入はダイリューション(株主利益の希釈化)になりますから、必ずしも株価にとってプラスとは言い切れません。
踏み上げさん。世界がぶっ壊れるっていうのもまんざら嘘ではなくなってきました。こういう時慌てないのがいいのですが、この下げ方はあまりにも異常だ。悠長なコメントしてないで早く新規のエントリーお願いします。
匿名さん
コメントありがとうございます。
確かに世界はぶっ壊れているのかもしれませんね(笑)。
引け後にシティがワコビア買収を諦めると発表しました。これでシティは安定的資本を求めて、またイチから資本政策の練り直しです。
まあ、最悪の場合、シティに公的資金が投入されることも考えられますが、その場合はシティの株価はもっと下がるでしょうね。
踏み上げさんは否定されますけどね、債権の世界はリーマン倒産からこっち、ずっと、ぶっ壊れてます。
やっと、株が追いついてきましたね。
改めてお聞きしますが、
「銀行が公募が無理となり、かつ公的資金注入となったとしても、当然株価は下がるだろう」
という状況で、何を持って株価回復に期待できるのでしょうか?
割安すぎる、これだけでしょうか?
だとしたら短期的には戻り売られるだけのような気がします。
10月コツン説、実現するでしょうか?
そもそも、公的資金注入するにも、かなり時間がかかるでしょうし、
またすんなり可決するかも怪しくないでしょうか?
出口が見えない今、急騰するとは思えず、
しかしいくらでも急落しますね。
たこすけサン
コメントありがとうございます。
そうですね、債券のマーケットはずっと前から機能不全に陥ってますよね。
でも僕はそれを否定した覚えはありません。
住宅ローンの証券化のビジネスの危うさに関しては去年、何度もしつこく警鐘を鳴らしました。(これは誰よりも早かったと思いますよ。)
いまは予想されるいろんなシナリオのうち、最悪の線に近い展開になっていると思います。
ただ僕は皆がそういう現状を見てパニックしているので、(そろそろ次の展望を考えたいな)という気持ちになっているだけです。
皆さんはまるで相場が悪いのは僕のせいみたいな言い方をしますけど(笑)、例えば僕は去年、J-REITが最高値をつけているときに「REITはこいでないと倒れる自転車だ」と言ったし、「REITは過去に2回全滅している」という警鐘も発しました。
つまり、無傷で逃げれるときに警鐘を発しているのです。
あと半年から1年くらい経って振り返れば、いまこの瞬間がたとえ買いでなくても、「あのときが大底に極めてちかかったな」と皆さんが思い返してくれるときがあると思っています。
(皆さんと違う意見だから袋叩きに遭うというのは僕はぜんぜん気にかからないし、むしろ愉快に楽しませてもらっています。)
mmさん
コメントありがとうございます。
僕の理解に間違いが無ければ先に成立した金融救済法案に銀行に対する直接の資金注入も規定されていると思います。
ただ公的資金をぶち込むとなれば「ベア・スターンズと同じ値段で」やらないと政治的には筋が通らないはずです。それはつまり$2ということです。
コメントを投稿