「ゼロ」に向けて世界が収斂しています。
ここで言う「ゼロ」とは金利のことです。このところの世界不況で各国は競うように利下げしています。だから金利は「絶滅しかかった種」になろうとしているのです。(もちろん、ジャンクボンドのような「リスキー」な投資対象はこの限りではありませんが。)
さて、これまで人気だったヘッジファンドですが、例のバーニー・メードフの不正事件の発覚で業界のイメージはガタ落ちです。
それにも増して「不吉だな」と思ったのはシタデル、SACと言ったヘッジファンド業界の重鎮ファンドが続々と解約請求を拒否している点です。業界で最も有名なこれらのファンドが「ごきぶりホイホイ」と化しているという事実は、ヘッジファンド業界全体が大きな曲がり角にさしかかっていることを暗示しているのではないでしょうか?
また、メードフ事件に関しては、度重なる「タレコミ」があったにも関わらずSECがメードフの不正をちゃんと調査できなかった点も深刻です。これはSECのスタッフ不足が原因なのかも知れません。それと法制度の見地からはマスターフィーダー構造に代表されるノウハウが余りにも発達しすぎたために米国の税制を不公平なものに、そしてヘッジファンド業界の存在を反社会的なものにしている気がします。これでは誰からも憐れみをかけてもらえません。
新しいSECのヘッドになるメアリー・シャピロはこうした問題をかなり徹底的に追求すると思います。
崩れる専売特許
さて、ループホールや欠陥に満ちたヘッジファンド業界が、それでも人気を博したひとつの理由は(これは当たり前すぎて誰も語らないことですが)ヘッジファンドが大っぴらにショートできるからです。
年金ファンドなどの場合、どうしてもロング・オンリーになりますのでリスクとのバランスを考えるとマーケット・ニュートラル(=つまり相場の上げ下げに関わらずパフォーマンスをあげられる投資戦略を採用している)ファンドとか、ショート型ヘッジファンドなどはある程度組み込まねばならない必要性があるのです。
別の言い方をすればヘッジファンドだけがショートの「専売特許」を貰って営業してきたようなものです。
ところが最近ではこの「専売特許」が大きく崩れ始めています。
例えば投資信託の法律が変わって機関投資家がETF(エクスチェンジ・トレーデッド・ファンズ=上場型投信)を自分のポートフォリオに組み込んでOKになりました。
これは従来のオープン投信のマネージャーにとっては素晴らしい朗報です。なぜならショート型のETFを組み込むことによりマーケットの急落をある程度、ヘッジしたり出来るようになったからです。しかも最近、大ブレイクしている「ウルトラ型」のETFは通常の株価や指数の動きの2倍、3倍のレバレッジでETFが動くように設計されています。これなら従来のようにある程度のヘッジ効果を出すために必死になって大量のキューブス(QQQQ=ナスダック指数のETFです)をショートするなどという事をしなくてもウルトラ・ベアETFを買えば用が足るわけです。
このように便利な投資ツールが発明されればされるほど、ヘッジファンドという仕組みの時代遅れさは鮮明になっています。
特権階級から庶民へ=投資ツールが「民主化」される時代
これまでは個人投資家が信用口座を開設しようとすると沢山のお金を持っていないと無理でした。でもウルトラ型のETFやCFD取引は特権的なリッチ層でなくてもバラエティーに富んだ投資ストラテジー(=例えば「売り」から入るなど)が可能になることを意味するのです。
加えてレバレッジを使えるということは普通なら小さすぎて有効利用できない、ほんの少しの株価の動きでも虫眼鏡のように拡大し、満足なリターンを得ることも理論上は可能になるわけです。(もちろん、その逆で失敗すれば損もおおきくなりますが。)
ベア・スターンズやリーマン・ブラザーズの破綻はプロと言えどもレバレッジを上手く御すことが出来るとは限らないことの好例です。ですから新しい投資ツールが利用可能になること自体は成功を意味しません。でもフツーにやっていれば限りなくゼロに近くならざるを得ない我々の期待リターンをどう補ってゆくかという事を考える上で、これらの新しい「庶民のツール」は一考に価するのではないでしょうか?
1 件のコメント:
単純な疑問なんですが・・・
ショート型のETFって、構成銘柄の価格がずーっと上昇していくとどうなるんでしょう?
理論上株価はどこまでも上昇するものであるなら、ショート型ETFは価格が0になってしまう可能性ってあるんでしょうか?
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