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2009年1月5日月曜日

オープン・アーキテクチャーを歓迎する


年末年始で相場がヒマなときにネットで『MONEYzine(マネージン)』というサイトを偶然見つけました。結構、面白い記事が多いですね。

その中でも「兜町の住人が語る業界事情&裏話」というシリーズは僕も昔、株のセールスをやっていたので最近の日本の証券界の事情を知る上でちょっと興味が湧きました。

「金融業界の転職は超買い手市場に変貌」と題された記事では去年の11月頃にリストラが加速し、多くの証券マンが仕事を失っていることが書かれていました。もうずっと前のことですが、僕もリストラで失職した組なので年の瀬に寒空に放り出される側の気持ちというのはよくわかります。

こんな不景気ですから新しい職場の「受け皿」が無いという指摘は、ほんとうにそうなのだと思います。ただ、リテール営業の元証券マンなら、いまこそ自分の会社の看板をあげるチャンスではないかと思うのです。

不思議なもので、アメリカの金融界ではいちばんジョブ・セキュリティー(職の安定)があるのはリテール営業です。最近は一見華やかに見える投資銀行業務がボロボロになっているのでゴールドマン・サックスのようなエリートの投資銀行ですら、「あそこはリテール営業隊が貧弱だから駄目だ」とショート・セラーの集中砲火を浴びる始末です。

アメリカのリテール営業の証券マンの理想のアガリ方というのは先ず何年かワイヤー・ハウス(全国に支店網を持った証券会社)に勤め、そこで顧客ベースを開拓した後、独立して自分の会社組織にするという方法です。アメリカにはそういう従業員3名くらいのIFA(独立フィナンシャル・アドバイザー)の会社が星の数ほどあります。

逆に証券会社の立場からすると優秀なリテール・セールスマンをいかに独立させず、つなぎとめるかというのが営業部長の最重要の仕事になるのです。歩合比率を調整したりして、アノ手、コノ手で説得しますが、デキる奴ほどサッサと独立します。その理由は特定の証券会社の社員だとクライアントに紹介できる投信などの商品のバラエティーに限りがあるし、どうしても所属金融機関のバイアスがかかるという目で消費者から見られてしまうからです。

転勤でたらい回しにされる日本の証券や銀行と違ってアメリカではリレーションシップ(顧客との信頼関係)を持っているのは企業ではなくフィナンシャル・アドバイザー本人です。だから会社を辞めて旗揚げしても客はほぼ100%ついてきます。

問題は顧客の現金や株券を預かる場所をどうするか?という点です。アメリカではチャールズ・シュワッブのようなディスカウント・ブローカーが独立を果たしたいフィナンシャル・アドバイザーに対して券面を預かったり、注文を執行したりする、所謂、プラットフォームを提供する業務にもう20年近くも前に参入しました。つまり証券会社のバックオフィス(事務処理、顧客資産管理)の部門だけを軒先を貸すように独立フィナンシャル・アドバイザーに開放したのです。

これを契機に同様のバックオフィス業務だけを提供する業者はどんどん増えたし、メリルリンチやアメリプライズのような大手も、証券マンが独立した後も、プラットフォームだけは継続提供するというサービスを始めました。

日本人は「目に見えない役務提供に対してはフィーを払わない」国民性です。だから税務や弁護士のフィーなら兎も角、フィナンシャル・アドバイザーに対して別立てのフィーを払うという習慣は余り定着していないのではないでしょうか?日本でこれまでフィナンシャル・アドバイザーのビジネスが成功しなかった最大の理由はリーズナブルな値段でバックオフィス機能を提供する金融機関が無かったからです。その点、最近、一部のネット証券がIFAに対してプラットフォームを提供する仕事を始めたのはますます職の安全を脅かされつつある日本の証券マン、証券レディにとって朗報だと思います。

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