2009年2月14日土曜日
シリーズ 良く分かる金融危機
僕が大学生の頃、或る一般教養の授業が学生にたいへん人気がありました。
その理由は「あのセンセイは楽勝でAが取れる」という前評判だったからです。
「日頃の出席は関係なし。とにかく試験の前日に誰かのノートをちょっと見せてもらって試験に臨めば必ず合格」という噂だったものですから、とうとう一回も聴講せずに試験だけ受ける学生も沢山居ました。
ところが、、、
或る年、そのセンセイの出題に絶望的な変化が出たのです。
問題その1: 「わたしは次の3つの写真のうち、誰でしょう?」
若し間違った写真を選んだら落第、、、、、
答案用紙が配られた瞬間、「ギャッ」という学生たちの悲鳴が聞こえました。
■ ■ ■
さて、これに似たようなことが先週、ワシントンDCで起こりました。
アメリカの大手銀行や証券のCEOが議会から「呼び出し」を喰ったのです。
そして延々7時間に渡って国民の代表(=議員さんのこと)からギュウギュウしぼられたことになっているのですが、、、
現実には議員さんの方が余りにもウォール街の仕組みについて無知だったので初歩的な質問が延々と飛び出し、小学生の取引所見学みたいな様相を呈してしまったそうです。
何にも増して許せないのは議員さんが呼び出したCEOたちの名前と顔すら一致せず、尋問する側が全く予習不足であることを国民の前でさらけ出した点です。
■ ■ ■
先週の出来事でもうひとつ「れれっ?」と肩透かしを喰ったのは、ティム・ガイトナー財務長官のスピーチでした。何ヶ月も準備期間があって、さらに直前にスピーチの日を一日ずらしてまで微調整しておきながら、ガイトナーの喋った内容は全く具体性に欠けるものでした。
もちろん、ガイトナーに食ってかかる識者やマスコミはありませんでした。なぜなら彼のスピーチを聞けば、彼が頭脳明晰で説得力に満ちた人物であることは誰の目にも明らかだからです。
しかし、、、
理路整然と、力強い口調で20分間喋り捲って、しかもその内容がまるっきりカラッポだったというのは滑稽さを通り越して何か浮世離れしたものすら感じさせました。
■ ■ ■
なぜガイトナーは何も具体的なプランを提示できなかったのか?
これは考えるだけで恐ろしいことです。なぜならガイトナーがまとめあげようとしている景気刺激策はいずれも立法府(=つまり議会)の承認が必要なことばかりだからです。
上に書いたように議員さんたちは極めて金融に疎い人が多いので、高度な証券化商品の議論などわかる筈も無いわけです。そういう烏合の衆に予算承認を委ねなければいけないからこそガイトナー財務長官が苦悩しているわけです。金融救済法のようなだいじな法案ですら「民主党は全員賛成」とか「共和党は全員反対」という風に所属政党でハッキリとした一線が引かれ、意見がきれいに分かれるということは意地悪い見方をすれば議員さんひとりひとりが自分のアタマでちゃんと物事を考えていないことに他なりません。
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さて、オバマ大統領はそうした「政治の溝を埋める」ということを公約し大統領になった人です。彼が最も得意とすることは部屋の中に居る全員の意見をじっくり聞いて、その場の空気を読み、「こういう線じゃないかな?」という風に総括する能力です。
しかし、それは賛否が真っ二つに分かれるような状況では「どっちつかず」でモタモタする危険があることを意味します。つまり彼のスタイルというか政治家としての身上が現在の局面では迅速な意思決定にはマイナスに働く危険性があるということです。
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オバマ大統領をルーズベルト大統領と比較する人が多いですが、ルーズベルトのスタイルはオバマとは全然ちがいます。
例えばルーズベルトは大統領選挙期間中は「財政面での保守主義」を前面に打ち出してキャンペーンしました。それが大統領になった瞬間に一転して財政撒布したわけですから、「君子豹変す」とはこのことです。
またルーズベルトは経済顧問や側近や専門家の話を「うんうん」と聴いた後で、180度それと反対の政策を平気で発表しました。つまり独断と偏見に満ちていたわけです。あたふたと走り回る側近、、、、。
ウォール街からすればこの意表を突く奇策の連発がもう堪えられないほど快感だったわけです。(そうでなけれは大統領就任演説から半年足らずでダウが50%もラリーしません。)
オバマ政権にはそういう荒削りさを求めてもムリというもの。
そろそろ「次のイベントに望みを託す」式の投資は卒業すべきときが来ている気がします。
つまり漂流しているのです、、、我々は。
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