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2009年3月26日木曜日

官民投資プログラム(PPIP)のレガシー・セキュリティー・プログラム(LSP)はどうなっている?












官民投資プログラム(PPIP)のうち、住宅ローン証券を買い取るスキームであるレガシー・セキュリティー・プログラム(LSP)はたぶん、こういう仕組みと理解して良いのではないでしょうか?
(皆さんのフィードバックを期待します)
先ず政府が銀行の有毒汚染物と化した住宅ローン証券の在庫を直接買い入れると国民から轟々の非難が出ます。
そこで別会社を設立します。
この投資会社は政府とヘッジファンドなどの民間の企業が半々づつ出資します。これなら建前上は政府の持ち物ではありません。
この手法が財務省にとって便利なもうひとつの理由は既に議会で承認され、予算がついているTARPのお金から新会社の設立に必要なエクイティー(株式資本)を拠出できる点です。PPIPが議会がどう騒ごうとスタートしてしまえる理由はここにあります。
さて、この投資会社は入札によって銀行から有毒廃棄物を買い取ります。
多くの銀行では帳簿上、未だこの有毒廃棄物の評価を100円の額面に対して80円くらいで計上しているそうです。
さて、リーマン事件以降、実際に市場で取引された有毒廃棄物の売買成立値段は40円とか35円程度の「もってけ、ドロボウ!」的な値段なんだそうです。その理由は倒産の危機に瀕する売り手がパニックして売るのを、足元を見た買い手が値切りに値切ったことにあるそうです。
すると銀行では80円程度で「売りたい」の意向があるのに対し、買い手は40円でないと買いたくないわけですから、売買は成立しません。これが今回の有毒廃棄物の問題の根源です。
政府はなんとか買い手の意欲を高めるためにこの投資会社が有毒廃棄物を買い入れる際、最高、6倍までレバレッジをかけて良いし、その借り入れ分は投資が失敗しても買い手が責任を負わなくて良いということを決めました。これが「ノンリコース(=後で追及されない)」という約束です。
すると投資が失敗したときは誰が尻拭いするか?と言えば、それは連邦預金保険会社(FDIC)です。
これだと買い手は投資失敗のリスクの大半をFDICになすりつけられるので、俄然、元気が出て、高値で有毒廃棄物を買うインセンティブができます。
銀行は自分の思い通りの値段(=つまり80円の近辺)で有毒廃棄物を処分できるので喜んでそれに応じます。
さて、投資会社が有毒廃棄物を買い入れた後で、不況が長引き、有毒廃棄物の価値が更に下がり、実際には40円の価値しか生まなかったとします。その場合、民間投資家は「もうそんな資産は要らない」とこの有毒廃棄物の所有権を諦め、FDICに下駄を預けます。
40円の価値に下がってしまった有毒廃棄物を背負い込まされたFDICは仕方なく時価の40円でそれを売りに出します。仕込み値段との差額は国民の血税で支払われたことになります。
この40円で売りに出された有毒廃棄物を買い戻すのはたぶん、そもそも80円で一旦、有毒廃棄物を売り逃げた銀行です。なぜなら銀行には最初に80円で有毒廃棄物を売ったときに貰ったキャッシュがあるし、いまそれを40ドルで新たに帳簿で記載するとザックリと下がった買値コストでスタートできるので将来キャピタル・ゲインを得る可能性が高いからです。
まとめると若し、上のようなシナリオが現実となった場合はPPIPは銀行の帳簿上に過大な評価のまま記載されている有毒廃棄物の価値を国民の血税を使って「洗濯」する効果を持つわけです。



4 件のコメント:

♥♥♥♥♥ Jennifer™® ♥♥♥♥♥ さんのコメント...
このコメントはブログの管理者によって削除されました。
mikeexpo さんのコメント...

いつも貴重な情報ありがとうございます。
こうしてイラストにしていただくとわかりやすい。先日の記事(悪魔に売り渡した云々)は、会社でも回覧させていただきました。

作家の橘玲氏が「(日本の)不良債権処理では、バルクで格安で買ったハゲタカ投資家が、債務者のところに言って『いまならこれで借金チャラになるよ』とやってハイリターンを確保した」と前に書いていたかと思い、それを思い出しました。

このスキームも結局似たような形になるんですかね。

COMOTRADER さんのコメント...

わかりやすい解説ありがとうございます。

PPIPですが、要は政府は国民の非難をかわすために民間資本を入れようとして、ノンリコースでレバレッジ供与というおいしい条件を提示しているわけですから見方を変えればすごく安いオプションを政府が売ってくれる訳ですよね。

これってどうなんでしょう。レガシーアセットと非常に相関の高いアセットをショートしてデルタニュートラルな感じでオプションバリューだけおいしくいただいちゃおう!みたいなヘッジファンドとか出てこないんですかね。 
経済効果的にいうとたぶんこのオプションの価値のミスプライスによる損失は相当大きいんだと思う。だってレガシーアセットなんてそれ自体にレバがかかってるから超ボラティリティ高いし、下がるときはあっという間の超ファットテール。そのプットオプションを安ーい値段で売っちゃうわけですからね。。。うーん

http://blog.livedoor.jp/comotrader/

nao さんのコメント...

「PPIP」ここテストにだすからな!!って感じですね
 さて、このシナリオだと銀行は80円近辺で売り逃げますが、買い手の提示が55円といった悩ましい価格になるシナリオはないですか?