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2009年3月2日月曜日

Dividend Crash(配当の急減)


このところ減配を発表する米国企業が多いです。
ちょっと思いつくままに挙げただけでも、ゼネラル・エレクトリック(GE)、ダウ・ケミカル(DOW)、JPモルガン(JPM)、ファイザー(PFE)、モトローラ(MOT)など、有名な会社が相次いで白旗を上げています。
このうちゼネラル・エレクトリックは僕の記憶が正しければ、確か1938年以来、はじめての減配だと思うし、ダウ・ケミカルも過去90年くらい減配の記録は無い筈、、、(もし間違っていたらご指摘下さい。)
もちろん、このリストの中にはモトローラみたいにしょっちゅう業績を悪くしている会社も含まれています。でもファイザーの減配などは世界の製薬業界に君臨した往時を知るものとしては時代の流れを感じざるを得ません。
JPモルガンの減配はTARPのお金を早く返してしまいたいという事情と、最近話題になっているタンジブル・コモン・エクイティー比率を引き上げておきたいという理由から「機先を制して」なされたものです。
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さて、実はこの減配発表が相次ぐという状況は僕はかねてから予想していました。なぜなら同様の現象が大恐慌時代にも見られたからです。でもこれほど早く減配の嵐が来るとは思っていませんでした。
上のグラフは大恐慌時代の株式市場の指数(ここではStandard & Poors Industrial Index)と配当利回りの推移を示しています。
当初アメリカ企業は減益になっても「配当だけは維持しよう」と歯を食いしばって頑張り、1932年頃までは無理して配当を出し続けたのです。しかし株式市場がそれを評価してくれないということがわかると雪崩のように無配にする企業が続出します。(2番目のグラフ)
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今回はこのまま減配が「ブーム」になるのなら、大恐慌時代より遥かに早いタイミングでディビデンド・クラッシュが到来することになります
企業が配当を出さない理由は「出しても、、、評価してくれない」ということの他にワーキング・キャピタル(運転資金)の温存という重要な経営判断があります。つまり金詰まりが当分続くのであればなるべく倹約した方が賢いという考え方です。
事実、今回世界の貿易が「瞬間、凪のようにパッタリと止まってしまった」というのも、ワーキング・キャピタル・マネージメント(資金繰りの管理)の見地から仕掛品や在庫を増やすのをストップするという経営判断によるところが大きいと思います。
とりわけ中国のテキスタイルや軽工業では景気の良いときですら、日頃からワーキング・キャピタルはスクウィーズされているし、支払い条件をぎゅうぎゅう締め付けるのは「国民的スポーツ」であるとすら言われています。
話がちょっと脱線しましたが、このようにクレジット(与信)の問題とトレード(貿易)の問題はたいへん密接に関連しているのです。
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企業が減配を決めるということは「当分、株式市場にお世話になることは無いな」という見限りの証しでもあります。言葉を換えて言えば、今の株価水準ではエクイティーによるファンディングはコスト高過ぎるわけです。
確かにごく一部のブルー・チップの企業は社債による資金調達を再開させています。でもそれが出来るのはごく一部の恵まれた企業だけです。
その一方で融資にはいろうるさいコヴェナントがつくし、クレジット・ラインだってバンバン引き揚げられています。
要するに今は外部からの資金調達は容易ではないのです。それならすべてシャットダウンして出てゆくお金を極力絞り込もう、、、そういう気持ちにアメリカの経営者はなっているのです。
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PS:ちょっと話が逸れますが、先週発表された米国政府によるシティ(C)の持ち株比率引き上げ(36%へ)は、別にフレッシュなキャッシュを米国政府が注入するわけではありません。つまり真水部分はゼロです。要するに優先株の配当を出し続けるのが惜しいので、優先株という資金調達経路自体を放棄してしまおうという判断なのです。
その意味で減配と同様、出てゆくお金を極力絞り込もうとする努力に他なりません。


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