ラトナーはゼネラル・モータースの救済を模索するオバマ政権のタスクフォースのリーダーです。
ラトナーについては以前から何度も書いているので、もう繰り返しません。
だたなぜラトナーがこの仕事を引き受けたのか?という点についてNYタイムズ他のメディアが書いてこなかった自明の理由がひとつあります。
それはラトナーがフェリックス・ロハティン(いちばん上の写真)の歩んだ道を歩もうとしているという点です。フェリックス・ロハティンは第二次大戦後このかた、アメリカの投資銀行界で最も尊敬されている投資銀行家です。
ディールをこなした件数や金額ではロハティンより生産性の高いバンカーはアメリカに何人も居ます。でも誰からも尊敬され、愛されているという点ではロハティンの右に出るバンカーは居ません。
なぜロハティンはそれほど尊敬されているのでしょうか?
それは彼が1970年代に財政破綻の危機に瀕し世界から笑い物になったニューヨークの財政のリストラクチャリングをしたからです。ラトナーはそのロハティンが居城としたラザード・フレールのパートナーでしたからロハティンの伝説、そして尊敬されるためには一度はpublic serviceをやらないと駄目だということを熟知しています。また世の中にはお金では買えないものがあるということもラトナーくらいの人物になると痛切に感じているのではないでしょうか?
お金では買えないものとは何か?
それは人々からの尊敬であり、ディール・メーカーとして最も困難なクライアント(=GM)を救うという誉れです。
これがラトナーにとってRohatyn momentである以上、すごすごと負け戦になるような戦い方はしないと思うのです。
誉れと言えば90年代前半にクライスラーが2度目の経営危機に陥った際、救援に駆け付けたソロモン・ブラザーズも良い仕事をしました。あのときの公募増資も「地獄の決死隊」みたいな辛いディールでしたが、会社が救われたことは勿論、株主も大儲けしました。僕にとって「超一流の仕事」というのはああいうディールのことを指すのです。
翻って今のウォール・ストリートを見ると、傷を負ったAIGを相手に荒稼ぎしたといって得意げに「耳打ち」する投資銀行の経営者が後を絶ちません。彼らがやっていることはドブに落ちてそこから這い上がろうともがいている人間をもう一度ドブに蹴り込むようなことであり、投資銀行ギョーカイの用語でいえば「客向かい」行為です。その余りのセコさに胸くそが悪くなる思いがします。要するに最近の投資銀行業界にはお金を愛する人は居ても投資銀行業務を愛する人は少なくなっているということなのでしょうか?
僕が若しゴールドマンの社員なら、オバマのデトロイト・タスクフォースをゴールドマンが率いてないことに失望すると思います。
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