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2009年6月16日火曜日

テヘラン








僕のワイフの従姉妹のアレクシスはイラン系アメリカ人のシャハーブ君と結婚しています。シャハーブは普段はアメリカ流の呼び名、ショーンで通しています。
ショーンの家柄はイランの聖職者評議会にも何人もメンバーを送りだしている名門なのですが、イラン革命のときにショーンのお父さんは事情があって(=つまりパーレビに近すぎたということ)アメリカに亡命しなければいけなくなりました。でも親戚の多くは今でもイランに居るし、アフマディネジャドの側にもムサビの側にも中枢で働いている血縁者が居ます。
そんなわけで選挙以来、ちょくちょくショーンと電話で話します。
僕:「この街頭でデモに参加するってのは、ヤパイんじゃないの?だって宗教警察みたいのが居るんでしょ?」
ショーン:(苦笑)「それはそうだけど、この人数を見てごらんよ、取り締まれるわけないでしょ?だって見渡す限り人の海だもん。」
僕:「そりゃそうだ」
ショーン:「たとえばさあ、このTシャツ着て腕から血を流してる奴、、、イランではね、男は人前でみだりに腕を見せたりしちゃマナー違反なんだ。だからTシャツで町を練り歩くなんてのはロデオドライブをパンツ一丁で歩くのと同じくらいショッキングなんだ。」
僕:「へぇ?女の人だけじゃないんだ、いろいろ規則があるのは。」
ショーン:「あたりまえだよ。それからこの男と女が並んでデモ行進している図だけど、これなんか聖職者が見たら卒倒モノだよ。」
僕:「うん、それはクウェートなんかでも同じだったな。」
ショーン:「だからさあ、もうそこらじゅうでルールが破られまくりなんだよ。取り締まりもヘチマも無いだろう。」
僕:「でも結局は制圧されるんじゃないの?警察に」
ショーン:「穏便に事が収まるように聖職者は神様にお祈りしてるらしい。だけど余りの群衆パワーに聖職者は縮みあがるほどおびえている、、、」
僕:「、、、てことはアフマディネジャドを100%後押ししているわけじゃないの?」
ショーン:「、、、なわけないでしょ。聖職者は大統領は誰でもいいと思っている。要するに現在の宗教に基づいた政治体制さえ覆されなければそれでハッピーなのさ。でもイランの人口の6割は若者だ。彼らは自分たちの価値観と自分たちの上に乗っかっているお飾りの政治体制との齟齬にうっぷんがたまっているのさ。アフマディネジャドは地方のおじいちゃん、おばあちゃんとか、イギリスやアメリカに蹂躙された頃の昔のイランを覚えている世代にだけは人気があるけど、、、いまの若い人にはどうもウケないよね。」
僕:「へえ、そんなもんなの?」
ショーン:「当り前さ、イランの人は外に出ればみんな黒いのをかぶって大人しくしているけど、家に帰ると派手だよ。グッチ、シャネル、ヒップホップの世界よ。ちょうど日本のバブルの頃、ラグジャリー・グッズが飛ぶように売れた時代があったけど、イランじゃ毎日がバブルなのさ。もっともリッチなウチに限るけどね。」
僕:「それじゃ不満が出るのも無理ないな」
ショーン:「イランの人がいま望んでいるのは宗教と政治の分離なんだ。でもイラン革命のとき、ひょんな勢いで宗教による統治のシステムが出来てしまった。敬虔なイスラム教徒でもこれを後悔している人はイランの中にも多いよ。でも今の政治のシステムには平穏にそれを変革する手立ては無いんだ。だから宗教と政治を分離しようと思えば政府が転覆する他は無い、、、、」
僕:「それがデモ行進をしている若者たちの望みなの?」
ショーン:「いや、それはどうかわからない。みんな流血は望んでいないと思う。それは警察もそうだし、聖職者も特にそうだ。親戚のオジサン(=聖職者)は流血事件に発展するのじゃないかとノイローゼになるくらい心配しているよ。彼曰く、イラン革命のときですら、あれは無血革命だった。だから俗に強硬派と言われる人たちだって、79年の事件のときですら血を見たことは無いんだ。だからデモ行進するほうもビビっている、警察もビビっている、聖職者もビビっている、、、みんな前人未到の境地に入り込んでしまってアタマ抱え込んでいるんだ。」


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