パーム(PALM)が昨日、引け後に決算発表しました。
今回の決算発表は数字自体は重要ではありません。なぜなら新発売された『Pre(プリ)』の数字は殆ど反映されていないからです。むしろ今後の『Pre』の販売見通しに関する、経営陣のボディ・ランゲージをカンファレンスコールでどう汲み取るか?という一点にかかっていたと言えると思います。
今回のカンファレンス・コールは元アップルの「秘密兵器」、ジョン・ルーベンシュタイン(=つい最近、CEOに昇格しました)が最初に「仕切る」カンファレンス・コールです。投資家は彼の発言を好感して既にプリマーケットでパームの株は急騰しています。
パームというと皆さんは90年代に電子手帳、『パーム・パイロット』が一世を風靡したのを覚えているかと思います。もともとパームは通信機器の会社、スリーコムの一部でした。スリーコムからスピンオフされた後、数々の経営判断の誤りがあり、もうすっかり忘れ去られていました。
はっきり言って財務内容は悪いし、数字はきたない。だからファンダメンタルズの面からは絶対に買えない株です。
しかしパームは文字通り社運を賭けて『プリ』という名前のスマートフォンを最近発表し、これがアメリカでかなり話題になっています。アップルのアイフォーンが成功を収めてからいつくかの企業がスマートフォンの市場に参入していますけど、その中で本当にアイフォーンに互角で戦える、ないしはそれ以上のパフォーマンスを持っているのはこの『プリ』であるということでユーザーや専門家の評価も高いです。
まず『プリ』ですが電源がオフになっているときはちょうど黒い碁石のようにツルっとした外観で手のひらや胸のポケットにすっぽり収まります。極めて洗練されたデザインになっているのは、それもそのはず、アップルでスティーブ・ジョブスのすぐ下で16年間働いてきて数多くのすぐれたデザインを手掛けたジョン・ルービンスタインというデザイナーがこの商品を設計したからです。ルービンスタインはアップルから250人もエンジニアを引きぬいて『プリ』の開発に投入したのです。
またキーボードがついている点もアイフォーンとは違います。アメリカ人は不器用なのでキーボードがある方が良いというユーザーが多いです。またWebOSという独自のソフトウエアを持っており、複数のアプリケーションを同時に開ける点がアイフォーンにはない有利さです。さらにグーグルやフェイスブックなどからコンタクトその他の情報をシンク出来る点もユニークです。問題としてはアプリケーションが不足しているし、デベロッパー・ツールが未だ完備されていないこと、バッテリーが長持ちしない点などです。
極端な経営不振に陥っていたパームに目をつけたのはシリコンバレーの有名な投資家、ロジャー・マクナミーの率いるエレベーション・パートナーズです。エレベーション・パートナーズはITとエンターテイメントの交差する分野に特化したプライベート・エクイティー・ファンドです。
同社のファンドマネージャーのチームには元アップルの財務部長のフレッド・アンダーソンとか、ロックバンドU2のボノなど、異色の人材を揃えています。ロジャー・マクナミーは投資信託、Tロウ・プライスからクライナー・パーキンスのヘッジファンド別動隊であるインテグラル・キャピタル、そして世界初のハイテク専門のLBO会社、シルバーレイク・パートナーズと次々に成功を収めています。その実績から考えてパームをターンアラウンドさせる事も可能性としてはゼロとは言えないと思うのです。
エレベーションはこれまでに4.2億ドルをパームに投じています。当面の間、『Pre』はスプリントのネットワークでサービス展開されます。アイフォーンはAT&Tですが、アイフォーンのユーザーの中にはAT&Tのサービスに不満を持っている人も多いです。『Pre』はゆくゆくベライゾンでもオファーされます。ベライゾンはアメリカの携帯電話会社の中では最もサービスが安定していてカバレッジも広いという評判です。でもアイフォーンもブラックベリーもAT&Tに取られてしまったので、これまでスマートフォンでは出遅れていました。
つまりスマートフォンの戦いはデバイスそのものの戦いだけでなく、携帯電話会社のバトルでもあるのです。 『Pre』は6月6日に発売されたばかりです。まだ製造が追い付いていないので最終的にどの程度売れるかはわかりません。その一方でパームは昔のパーム・パイロットのビジネスの大半は今後『Pre』の中に含まれてしまうと考えているので継続しません。つまり『Pre』が失敗すると大変なことになるのです。でもアップルの製品開発の少なからぬ部分を担当してきたジョン・ルービンスタインとそのチーム、そして投資家としてエレクトロニック・アーツを発掘した男として知られるロジャー・マクナミーの過去の実績から考えて、この会社が台風の目になる可能性があると思います。ロジャー・マクナミーの考え方は全ての携帯電話はいずれスマートフォンになるというもので、それは巨大な潜在市場を意味します。
1 件のコメント:
秘密兵器である経営陣のボディ・ランゲージをカンファレンスコールでどう汲み取るか?
ボディーランゲージ大成功みたいですね。
チェックしないとなりませんな。
「まずはルックスを直せ!バランスシートはその後だ」
というエントリを見ようと思ったらドブログもうないんですよね。そうでした。調べ物が出来なくなりました。ドブログにちょっとカチンときちゃった。
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