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2009年6月26日金曜日

沈黙を守るブロケイド(BRCD) 嵐の前の静けさか?


証券会社のリサーチは昔、内側の人間として「ぜんぜん使い物にならないなぁ」ということを痛感した関係で余り気にとめません。でも稀には愉快なレポートも出てきます。
アムテックによるブロケイド(ティッカー:BRCD)のレポートはなかなかユーモアのセンスがあると思いました。(アムテックは昔の同僚、リチャード君の興したブティック証券です。)
それによるとブロケイドは最近、「Radio silenceを守っている」そうです。Radio silenceというのは相手に自分の位置を悟られないように短波などによる交信を一切断つという意味で、第二次大戦のときの潜水艦や戦闘機が常用した臨戦戦術です。
投資の世界でRadio silenceが必要な局面というのは、当然、M&Aとか公募増資とかが間近に迫った局面です。ブロケイドの場合、「そのどちらが起きても不思議ではない」というわけ。
先ず公募に関してはブロケイドは去年、ファウンドリー・ネットワークスというネットワーク機器の会社を買収しています。それで負債の金利コストを軽減するために株式をイシューするのではないか?という観測があるわけです。最近明らかになったマーケット・シェア・データではブロケイドはシスコに対してメチャクチャ市場占有率を伸ばしています。これはシスコがデータセンターにおけるサーバのビジネスに参入したことからOEM各社がシスコに総スカンを食わせるため、ブロケイドにシフトしたことが原因です。
いま、YouTubeなどの隆盛でデータセンターには過去に無い負荷がかかっています。先日、ちょっとデータセンター絡みの仕事をしている人と話をする機会があったのですが、「今やデータセンターのロケーションの選択はアルミの精錬工場の立地スタディーと同じになっている」ということです。つまりいかに格安の電力料金を得られるか?がデータセンターの立地で最も重要な考慮点なのだそうです。
また、ブレード型のサーバやストレージが主流になるにつれ、センター全体のデンシティー(集積度)はどんどん上がっています。するとデータセンター全体が巨大な電気ヒーターのように熱を帯びて、それをいかに冷やすか?が大問題になっているのだそうです。
彼:「空冷式が良いか、水冷式が良いかで大論争が起きているのさ」
僕:「そりゃ今までに聞いたことも無い議論ですね」
彼:「そんなことはない。これはコンピュータ業界では古典的な議論だ。君はアムダールをおぼえているかい?」
僕:「ははぁん、なるほど。あのMassively pararell computing(超並列計算)の会社ね。そう言えば確かに、、、空冷・水冷論争というのがあったよね。」
彼:「今、ハードウエアの会社はソフトウエアに参入し、ソフトウエアの会社はハードウエアに参入している。つまりデータセンターはIwo-jima(硫黄島)みたいな肉弾戦になっているんだ。そこでは誰もがMIPSシェアという概念を巡って激突し合っているのさ。」
僕:「つまりサーバとか、スウィッチとか、ルーターとか、ストレージとか、そういう伝統的なハコの概念はバーチャライゼーションの進行とともに垣根がボヤけている、、、そういう意味ですね?」

ブロケイドはヒューレットやIBMやオラクルやシスコなどの巨人がまともにぶつかり合うその交差点の真ん中でデータセンターのトラフィックを捌いている会社です。だからアムテックに言わせると「ネットワーク・インフラストラクチャーの会社に黄金時代が来る」というわけ。

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