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2009年6月26日金曜日

SOLD OUT マイケル・ジャクソン 死の行軍








今日、NYのマーケットが引けた後でマイケル・ジャクソンが死んだというニュースに接しました。
マイケルの冥福を心から祈ります。それからファンの皆さんの心境お察し申し上げます。
さて、マイケルは体調が悪い悪いと言われながら、3週間後に控えたロンドンのO2アリーナにおける長期ツアーを強行するということでチョッと話題になっていました。
ずらっと並んだSOLD OUTの文字が今となっては痛々しいほどですね。
このコンサートのプロモーションを担当しているのはAEGライブ社です。
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そこで今日は最近の音楽のビジネスの状況とそれがアーチスト達に与えている影響を株式投資のアングルから考えてみたいと思います。
先ずアイチューンなどの音楽ダウンロードのビジネスはアーチストの生計の立て方、ビジネス戦略を根本から変革してしまいました。
もう少しくだけた言い方をすれば、昔のようにレコードを売るだけじゃ、食えなくなったということです。
それを端的に示したのが上から2番目の棒グラフです。これは世界のトップアーチストがどの収入源から稼いでいるかを示したもので、圧倒的にライブ・コンサートが主流になっています。
なま身の真剣勝負で一回、一回、ファンと対峙しなければ駄目な時代になったことをこのグラフは物語っています。だからこそ、いい年をした熟年ロッカーが体力の限界と闘いながらどんどんツアーに出ているわけです。
こういう状況下でレコード会社の神通力はかなり低下しました。なぜならアーチストはインターネットを通じてファンと直接つながる事が出来るようになったのでレコード会社の配給(ディストリビューション)網に依存する必要はなくなったからです。
逆に物凄く市場支配力を持ってきたのがコンサート・プロモーション会社です。その中でも最もパワフルな企業のひとつがアメリカのライブネーション(LYV)という会社です。
ライブネーションはマドンナやU2などのアーチストと数億ドルにも上る長期契約を発表し、その度ごとに話題になっていますが、この場合の超大型契約というのはチケット・セールやいろいろなアイテム、タイアップ企画など、あらゆるセールス機会をすべて包括した契約だと思います。
ライブネーションの場合、ロンドンのウエンブリー・アリーナやニューヨークのJFケネディー空港の近くにあるニコン@ジョーンズ・ビーチ、さらにはサンフランシスコのフィルモア、その他、アメリカや欧州の沢山のコンサート会場を100%所有しているか、或いは経営権をコントロール出来るだけの株式を支配しています。
つまりアーチストの側からすると「いっちょう稼ぐか」と思い立って、コンサートをブッキングしようとしてもこれらのコンサート会場を押さえていないのでステージに立つこともままならないわけです。
昔はワーナー・レコードやEMIなどのレコード会社が威張っていたのが、今はライブネーションが威張っているのはそういう訳です。
なおライブネーションの売上比率の円グラフ(上から3番目)を掲げておきました。御覧のようにチケット・セールスが全体の66%を占めています。ところが利益ということになると4番目の円グラフのようにチケット・セールスは殆ど貢献していません。
これはどうしてかというとコンサート会場を所有、維持する固定費負担とアーチストへの払いに売上が全て消えてしまうからです。ライブネーションは専ら売店やスポンサーシップのフィーで稼ぐわけです。
スポンサーシップというのはコンサート会場でAT&Tやノキアのようなブランドをプロモートすることへの対価を指します。
威張っている会社の話が出たついでに補足しておくと、このライブネーションはコンサート・チケットの販売業者、チケットマスター(TKTM)と合併することが予定されています。チケットマスターはコンサート・チケットの販売で大変な市場支配力を持った企業です。このように寡占色の強い企業同士が合併して、巨大な企業になることに対しては危惧の声も上がっています。このため両社の合併が承認されるのは秋以降だと思われます。
今回の一件でAEGライブ社がどのような苦境に立たされるかはちょっと予想できません。もちろん、各種の保険がかけてあったと思います。でもAEGライブの経営が苦しくなるとチケットマスター・ライブネーションの市場支配力は一層強まることが予想されます。
PS:なおこの記事で使った上の4枚のスライドは楽天証券主催のオンライン勉強会、『グローバル投資のすべて』小型株特集(6月22日)に使用したものです。

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