☆ ☆ ☆

2009年7月8日水曜日

個人投資家と最先端の投資ツール




サウジアラビアでは女性はクルマを運転する権利はありません。
これは結構、不都合です。なぜならサウジは広いし、暑いので、徒歩ではどこへも行けないからです。
自然、女性はおとこに従属し、依存する存在にならざるを得ないのです。
さて、自動車が発明された初期の頃はアメリカにも女性がおいそれとクルマを運転できない雰囲気がありました。だからフラッパー娘はただハンドルを握っただけでdefiance(反抗)の証しと看做されたのです。
「女性はキカイに弱いから、、、クルマの運転なんかよした方が無難だよ」
親切心からそう考えた人も多かったのではないかと思います。でも実際には別に女性でもクルマは運転できるし、男じゃないと駄目だというのは迷信以外の何物でもなかったのです。
翻って現代をみると、人々は昔よりずっとパワフルな自動車を安全に運転しています。フォード・モデルTの時代には20馬力くらいだったのが、最近はカローラでも60馬力とか70馬力程度は平気で出るわけです。要するに安全に運転するためのメカニズムや知識さえきちんとおさえれば、別にお抱え運転手に運転を頼まなくても自分でどこへでも行けるのです。
   ■   ■   ■
前置きが長くなりました。
投資の世界で我々が置かれている環境というものを翻って見た場合、最先端のツールというものに否が応でも振り回されるケースが多いです。去年のサブプライム危機の一因となった各種デリバティブ商品の流行はそのひとつの例だし、最近、このブログでも良く書いているハイ・フリックエンシー・トレーディングなどもその例です。
こうした最先端のツールはヘッジファンドや投資銀行の「専売特許」だったわけだけど、最近は個人投資家にもそれらのツールが利用可能になってきています。ETFやCFDは見た目はカンタンなツールなのですが、これを商品化するには、裏では最先端の金融テクノロジーが駆使されています。これはレクサスやBMWは一般の人でもカンタンに運転できるけど、裏には高度なエレクトロニクスがワンサと搭載されているのと似ています。
それらの商品は便利であり、パワフルでもあります。
するとすぐ「個人投資家にそんなパワフルなツールを与えて大丈夫か?」式の議論が出てきます。でも去年のサブプライム問題のズッコケを指摘するまでもなく、機関投資家だって、ツールを使いこなせない奴はいっぱい居るわけです
投資銀行のトレーディングP&Lのアトリビューション・アナリシス(何が利益の源泉だったか?の分析)を見ると、その大部分はmarket insight(市場の看破力)ではなく、単にレバレッジから稼いでいるのです。(それが証拠に去年から今年にかけて意図的にレバを落としたモルガン・スタンレーは今、低収益に苦しんでいます。)
GFT、IGグループ、CMCマーケッツ、サクソ・バンクなどは執行エンジンの提供者です。むかし「ウインテル(Wintel=ウインドウズ+インテル)」という言葉がありましたが、パソコンの心臓部を構成する重要要素をマイクロソフトとインテルが提供していたようにこれらの執行エンジンの会社はCFDの心臓部を提供しているわけです。僕はそれ自体、善でもなければ悪でもないと思っています。そこにあるのは「性能(system performance)」の優劣の議論だけです。
問題はその執行エンジンを使って、我々個人投資家が何をやるかです。
もちろんCFDは超パワフルなツールですから、使い方を間違えるととんでもない失敗を招きます。正しい使い方の練習は不可欠です。
でもだからといってCFDが駄目だというのはサウジアラビアで女性がクルマを運転するのを禁止するのと同じくらい後進的な考え方だと思うのです。確かに自動車メーカーの宣伝広告だけに耳を傾けるのも良くないと思いますが、お抱え運転手の意見にもナチュラルなバイアスがかかる事をお忘れなく。

0 件のコメント: