ギョーカイの裏話をします。
或る会社が公募増資を発表した場合(=欧米での慣習→日本のことには詳しくありません)、それが決算発表前である場合、引き受け主幹事が会社側に念を押すことが一点あるのです:
僕:「社長、ほんとうに今度の決算は大丈夫ですよねぇ?」
社長:「だから言っただろ、大丈夫だって。もう〆てあるんだから、数字はわかってる。」
僕:「あの、単に会社側が前期のカンファレンス・コールで提示したガイダンスより良い数字だというだけでは駄目なんです。コンセンサス予想を大幅に上回らないと投資家は納得しません。大幅にデス!」
社長:「あんたというヒトもくどいね。」
僕:「決算でしくじると、僕はもう会社に行けません。営業隊にも顔見せできない。機関投資家にも総スカン喰います。バンカー人生が終わるんです。」
社長:「わかったわかった。ところでK(「ケー」、つまりSECへの公募増資の申請書類のこと)はいつ出すんだ?」
僕:「それはもう準備万端整っています。でも念を押しておきたいのです。若し今度の決算がマアマアなのであれば、決算発表直前の公募というのは受けられません。その場合は決算発表と同時にしてください。決算がぶっちぎりで良い場合にだけ、決算発表直前の公募が許されるのです。これがギョーカイの掟です。」
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上のような会話は投資銀行と発行体(資金調達する企業)の間で必ず交わされる会話です。とりわけ引き受けに強いとされる、モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスではこの手の基本動作はきわめて確実に励行されます。それが引き受けの際の言わば「品質管理」に相当するわけです。
証券会社の格が下がるに従って、この厳格な品質管理は守られない場合もあります。場数を踏んでいない引き受け主幹事では時として「目が点になる」チョンボをやらかす場合もあります。
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さて、最近、中国株ADRも公募増資が多いですが、その中でハービン・エレクトリック(HRBN)が公募価格割れギリギリの線をウロウロしています。このディールの主幹事はロス・パートナーズという西海岸のブティック証券です。主幹事の実績は余り無いと思います。
ハービンは8月11日に決算発表があるので、今回の値決めのタイミングは当然、上に書いたような配慮をやっていないといけません。果たしてロス・パートナーズがしっかりした仕事をしたかどうか、お手並み拝見というところですね。
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