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2009年9月9日水曜日

『ウォール・ストリート2 マネー・ネバー・スリープス』


まあこれだけのメンツを揃えたら、万一、この映画の出来栄えが悪かった場合、弁解の余地は無いでしょうね。
オリジナルの『ウォール・ストリート』は1980年代後半に公開された映画ですが、当時の時代背景はだいたい次のようなものでした。
先ずウォール街は1970年代の2つのオイルショック、そしてその後の株式市場の低迷からようやく抜け出して勢いをつけはじめていました。
超高金利から次第に市中金利が下がってきて、負債による企業買収などが可能になる環境が生まれました。
折から株式市場では割安に放置されていた株が沢山あったので、伝統あるブランドや老舗企業でも敵対的買収提案のターゲットにされてしまう危険性がありました。
ウォール街では次々に型破りな手法が編み出されました。敵対的買収はそのひとつですし、それに対抗するためのゴールデン・パラシュート、或いは逆につけ狙われた側の企業が攻撃側の企業を呑みこむ「パックマン・ディフェンス」、さらにはジャンクボンドによる買収資金の調達などがその例です。
インサイダー取引もかなり公然と行われており、衿を正したプレイヤーと、「なんでもアリ」の強引な連中が入り乱れて、雑然とした雰囲気の中でそれらのプレイヤー達の死闘が繰り広げられたのです。
オリジナルの『ウォール・ストリート』はそういう雰囲気の中で公開されました。
主人公のゴードン・ゲッコーは「Greed is good!」と言い放ち、拝金主義を美化します。
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ニューヨーク・タイムズによるとこの『ウォール・ストリート』を撮ったオリバー・ストーン監督は今、『ウォール・ストリート2 マネー・ネバー・スリープス』(来年4月頃公開だと思います)を準備しているそうです。
NYタイムズのインタビューに答えて、「数多くのウォール街の人間から、自分が投資銀行の仕事に進んだのはあの映画に触発されたからだと言われた。このあやしい魅力に溢れた悪役がそんなに多くの若者の進路を決定するきっかけになったことは驚きだった」と語っています。
「いいなりをしたウォール街のビジネスマンが私のところに来てそう語るとき、何か馬鹿げていると感じざるを得ない。」
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しかしオリバー・ストーンのこの言葉に、僕はチョッと偽善というかrevisionism(過去を修正すること)を感じざるを得ません。
どう公平に見てもあの映画ではウォール街という場所がglorify(賛美)されていたように感じるのです。
実際、アメリカのマネー・カルチャーは1980年代を境にして大きく転回しました。僕のワイフのおかあさんや、おじいさん、おばあさんなどと話をすると痛切に感じるのですが、昔のアメリカには質素、倹約ということを美徳とする価値観があきらかに存在した時代もあるのです。借金などはもってのほか。
僕のワイフはアメリカのテキサスの出身ですが、おじいちゃんの時代には家を建てるといえばサラリーマンの人でも週末に建材を買ってきて、近所の人や友人と協力して棟上げをやるなんてことは日常茶飯事だったそうです。
もちろん、家を建てるのにローンを組んだりしません。キャッシュを使うのは材木を買ったりする代金だけです。
だからあの世代の老人は「遊び方をしらない」のです。
たとえばウォーレン・バフェットくらいの富豪になっても、一番、楽しいと感じる瞬間は草野球をしているそばでバーベキューをしたりとか、デイリークインのアイスクリームをしゃぶっている瞬間であって、高級レストランとか秘境のリゾートとかブランドものの洋服などは彼には何の喜びももたらさないのです。
そういうオールド・ファッションなアメリカのマネー観を激変させ、ヤッピーやディンクスなどの登場を後押ししたという意味で、映画『ウォール・ストリート』の存在はひとつの触媒の働きをしたと思います。
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さて、今回の『ウォール・ストリート2 マネー・ネバー・スリープス』はかなり凄いメンバーが製作に関与しています。
先ず原作はブライアン・バローです。彼は元ウォール・ストリート・ジャーナルのエース記者のひとりですが、RJRナビスコの買収劇を『野蛮な来訪者』という本にした人です。(話は脱線しますが当時のウォール街がいかにエキサイティングな場所だったか?を知るにはこの本を読むことをお勧めします。)
この『WS2』の準備のためにゴードン・ゲッコー役で出演するマイケル・ダグラスとオリバー・ストーン監督は実際にインサイダー取引で5年間刑務所暮らしをしたバイオ会社、イムクローン・システムズの創業者、サム・ワクサルと会って、刑務所のこと、インサイダー取引のことなどを取材したそうです。
さらに主演のシャイア・ラブーフはヌリエル・ルビニ教授のカクテル・パーティーで今回の金融危機で投資銀行や商業銀行が犯した間違いについて講義を受けたそうです。またオリバー・ストーンはルビニ教授にヘッジファンド・マネージャーの役で出演を提案したそうです。
それからストーン監督はショート筋として有名なジム・チェーノスからもアドバイスを受けているそうです。
なお、ゲッコーの娘役はイギリスの女優、ケリー・マリガン(上の写真)。

1 件のコメント:

さんのコメント...

>>主人公のゴードン・ゲッコーは「Greed is good!」と言い放ち、拝金主義を美化します。

テルダ―製紙の総会での場面ですね!
僕はちょうど去年の8月にその映画をアマゾンで買ったのですが、届いた日に3回、一週間で10回は見ました。
冷静な状態になって初めて、
拝金主義を美化されていたことに気付きます。