先ず一番上のグラフが、現在世界のどの国の政府が一番ゴールドを沢山所有しているかを重量ベースで示したものです。
これを見るとアメリカ(FRB)が一番多く、次にドイツ(ブンデスバンク)という風に続きます。なおGLDというのはゴールドのETFであり、ETFの果たす役割の大きさを全体的な準備通貨の文脈の中で比較するために入れておきました。
次に世界の主要国が外貨準備のうち、どれだけの割合をゴールドにしているかというのが2番目のグラフです。
1980年代にオイルショックの揺れ戻しで原油価格が長期低落トレンドに入ったとき、ゴールドもその影響を受けました。
この頃、「外貨準備をゴールドで保有するのは止めよう。ドルの方が便利だ」という考えが結構、世界の政府の間でポピュラーになりました。
それ以来、一部の国ではゴールドによる準備の売却が行われてきています。しかし、そうしたポジションの引き下げを経ても、今なおこのグラフに見るように先進国の準備はかなりの部分、ゴールドによって保有されているのです。
さて、最近になってみるみる富を蓄えてきた新興国はどうでしょう?
一般に新興国はゴールドの保有高が僅かであり、ドルのままで外貨を蓄え込んでいることがこの2番目のグラフからわかります。
それをグラフ化したものが3番目のグラフです。赤はゴールドの占める部分です。
最近、よく話題になることに、「IMFが東欧支援の資金をねん出するため、ゴールドを処分するのではないか?」ということがあります。
たしかにこれは実際に起こる可能性もあると思います。
しかしその場合でもIMFからの売り物を中国の人民銀行が「パックリと呑み込む」、つまり大口クロスするという合意が出来上がっているという見方をするゴールド・ウォッチャーも居ます。
IMFからの売り圧力は少しでも海外投資をかじった投資家なら聞いたことのある材料だと思うので、これは相場に織り込まれている(つまり市場は大きな売り圧力を予期している)と考えることが順当です。
すると若しこの売り物が市場に出ず、人民銀行にそっくり呑まれたとわかるとゴールドは暴騰するシナリオだってあるのです。
上に掲げた一連のグラフからわかることは、中国やロシアはポートフォリオ的な発想から、バランスを取る意味でゴールドの比率を引き上げないといけないということです。
この準備通貨改革は今すぐに新興国各国が取り組まないといけない、緊急の問題です。
これに対してドルが基軸通貨の地位を降りるとか、人民元が決済通貨になるとかはしばらく先の問題だと思います。
PS:なお上のグラフは出来る限り多くの国を含めましたが、当然、網羅的ではありません。
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