同社は半導体そのものを作るのではなく、半導体回路のデザイン・コンセプトを他社にライセンス供与することを主な業務としています。知的所有権、英語で言えばインテレクチュアル・プロパティー、略してIPを売っている会社なのです。
ノウハウの使用権を売っているわけですからモノを売っているわけではなく、在庫や工場はありません。
同社の32ビット・リスク・プロセッサーはアップルのアイフォーンや任天堂DS2の心臓部に使われています。その他、のべ200社の世界のテクノロジー企業が580種類の製品に同社の設計したプロセッサー・デザインを採用しているのです。
これらの顧客企業は或るデバイスにアーム・コアを採用すると決めると先ずライセンス・フィーを支払います。さらにチップをひとつ製造するごとに一定のロイヤリティーを支払うわけです。
2008年だけで40億個のチップが出荷されました。世界の携帯電話の95%がアーム・コアを使っています。
この説明からわかるようにアームは或る特定の顧客企業や製品に依存しているわけではありません。別の言い方をすればスマートフォンやアイポッドやアマゾンのキンドルやポータブル・ゲーム・デバイスやデジタルSTB、プリンタ、自動車などのデバイス全体の売上が同社の業績を左右するわけです。
04年から08年までのARMのロイヤリティー成長率は年率21%でした。一方世界の半導体業界の売上高成長率は年率4% でした。
過去の経験則では半導体業界全体の落ち込みよりARMの落ち込みの方が軽かったです。従って今回もほぼまちがいなくそうなると思われます。
グロスマージンは89%です。営業マージンは33%です。無借金。フリー・キャッシュフローは9100万ポンドで売上高の約3分の1です。自社株の買い戻しと配当で過去5年間に3.4億ポンドを株主に還元しました。
PERで言うと40倍を超えており、PSRから見ても割高のようにみえるのだけど、基本的にノウハウというか知的所有権を売っている会社であり、マージンがきわめて高いので当然のバリュエーションだと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿