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2009年10月20日火曜日

ベン・バーナンキFRB議長のサンタバーバラでのスピーチ




アジア経済会議におけるスピーチ(抜粋)

(中略)

危機の波及経路 貿易とファイナンス
危機のアジアへの波及の仕方を考えた場合、貿易というものがその主な「感染経路」だったと考えられる。Exhibit 1に示したのは2000年以降のグローバルな輸出だが、今回の危機では世界の輸出がピークから20%も急減(赤の破線)していることがわかる。これはドルベースに直せば(青の線)35%の減少である。輸出に依存しているアジア諸国がこのようなショックの影響を受けないはずがない。

問題はなぜこのように貿易がぱったり止まってしまったか?ということだ。(中略)これにたいするひとつの説明としては金融危機後の極めて先行き不透明な環境で企業も消費者も最悪の事態を想定した行動を取ったことが考えられる。彼らは高額商品を買い控えた。耐久消費財は貿易統計の中では重要なアイテムなので危機の最中にはとりわけ影響を与えやすい。

信用市場の状況も貿易に影響を与えたと考えられる。(中略)生産は信用の枯渇によって必要以上に絞り込まれた可能性がある。なぜならばメーカーは手元流動性をある程度確保しておくことが大事だと感じたからだ。それから貿易ファイナンスの枯渇も影響していると思う。

世界の貿易が停止したことで、貿易依存度の高い国ほど痛手を受けた。Exhibit 2はそれを示している。縦軸は各国のGDP成長率で、トレンド・ラインに対してどのくらいかい離したかを示している。横軸は貿易市場の開放度をしめしている。

これを見ると市場がオープンな国ほど、ダメージが大きかったことがわかる。(中略)しかし市場の開放度だけでは下げ局面に見られた現象のすべてを説明することはできない。(中略)国際機関投資家のリスク志向が委縮するにつれて過去の経験則上、最も打撃を受けやすいと思われた新興国から資金が引き上げられた。これは今回それらの国の置かれたファンダメンタルズが以前の危機のときに比べて遥かに強固であったにもかかわらず、そうなってしまったのである。しかもそれらの国々がリスクを内包している、していないにかかわらず、銀行はバランスシートの保全のためにとりあえず全部処分するという結論に達したわけだ。(中略)Exhibit 3は各国のGDP規模に照らした対外資産ならびに負債の大きさ(=それは資本市場のオープンさの尺度)とGDP成長率の落ち込みを示したものだ。
ここでも資本市場がオープンな国ほどダメージが大きかった。

ここで大事なのはこれらのことから間違った結論を導き出してはいけないということだ。貿易や資本市場の面でオープンになればなるほど今回のような危機ではダメージが大きいからといって、そうしない方が良いという意味ではない。なぜならオープンであればあるほど平時での、長期にわたった成長率は高くなる傾向があることが知られているからだ。

政策対応

(中略)
アジア諸国の危機対応は国によって違いが見られた。インフレが少ない中国、日本、タイランドなどは緩和的政策を取ることができた。しかし韓国やフィリピンのようなインフレ懸念のある国は対応も鈍かった。

全体的に言えば今回の危機対応は効果的だったと思う。ここまでの回復の少なからぬ部分はアジア諸国の内需拡大努力によるものでExhibit 4に見られるように各国の鉱工業生産(青)と輸出(赤斜線)が危機前の何パーセントにまで戻っているかを見ると、一般に鉱工業生産の戻りの方が高いことがわかる。

(後略)

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