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2009年10月4日日曜日

安易な説明を鵜呑みにしてはいけない 日本航空株に襲いかかった海外ファンドの“魔の手”

tabbataさんがtwitterで紹介している「日本航空株に襲いかかった海外ファンドの“魔の手”」と題された産経ニュースの記事を読みました。

確かにこういう不届きな海外のファンドというのは存在するし、そのせいで日航の資金調達計画が狂った面があるのかも知れません。

ただ、この記事を読むと悪者は海外のファンドであり、日航は被害者のように書かれていますが、それはチョッと違うと思います。

「こんなボロ株、誰が買うねん?」
僕が投資銀行に入って未だ右も左もわからない頃、お世辞にも魅力的とは言えない会社が増資を発表するたびに「あ~あ、また気乗りしない株のハメコミをしないといけない」とその案件を恨むとともに(こんなボロ株、誰が買うねん?)と純粋に不思議に思ったものです。

ところが、、、そういう煮ても焼いても食えないような株にもちゃんと引き取り手が出てくるから不思議です。

「世の中には酔狂な奴も居るんですね。」

当時の上司にそう僕が言ったら、彼はあきれた顔ひとつせず、根気良くカラクリを説明してくれました。

ジョン:「それは、そうじゃない。彼らはそのボロ株が騰がると思って買っているんじゃないんだ。彼らが公募に応じるのは空売りのケツ入れのためにやっているのさ。」

僕:???

ジョン:「つまり資金調達する企業が公募増資を発表すると、その株が下がると判断したヘッジファンドなどがガンガン空売りを仕掛ける、、、これは分かるよね?」

僕:「はい。」

ジョン:「次に実際に株価が急落したとする。その場合、売りを仕掛けたヘッジファンドは持っていない株を先に売ったわけだから、受け渡しをつけるためにその株をどこかから調達しないといけないだろう?」

僕:「なるほど。」

ジョン:「その際、公募増資で発行される新株に応募すれば、事足りるというわけだ。」

僕:「するとヘッジファンドという存在が無ければどうなるんですか?」

ジョン:「そもそも公募は成功しない。なぜなら誰も進んでそんなボロ株を買おうとはしないからだ。」

   ■   ■   ■

企業が公募増資に踏み切る場合、株価が下がるのは百も承知です。
当然、日航の関係者だってそれを知っての上での決断だったはず。
株価が下がったのを「海外ファンド」の存在のせいにするのは便利な攻撃のターゲットですけど、それは真実の半分しか伝えていません。
残りの半分の真実とは、公募増資というのは既存株主からヘッジファンドなどのカラ売り筋への利益の移転以外の何物でも無く、そのディールが作り出す、負のモメンタムこそが新株で会社側が資金を調達する原動力だということです。

毒を持って毒を制するとは、この事。

2 件のコメント:

Shintaro Tabata さんのコメント...

記事にして頂き、解説まで頂いて、ありがとうございます。

私としては、実際の真相としては、産経の記事ではなく、

http://asyura.com/09/bd55/msg/286.html

のほうが、よほど実態を描写しているように思います。

産経の経済国粋主義的な、論調のサンプルとして、Twitterで、つぶやいてみました。ツークリックでTwitterにニュースを紹介できるものですから

広瀬隆雄 さんのコメント...

田端さん

コメントありがとうございます。
面白い記事の存在をご指摘いただき、ありがとうございます。こちらの記事も考えさせられますね。(笑)

ちょっと自分の感じたことを別のエントリーで書いてみようと思います。