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2009年10月28日水曜日

ダーク・プールとは何か? ①ジェニファーの場合

「ダーク・プール」の存在が最近、トレーディング・コミュニティーで話題になっているので僕なりの解説を試みます。

まず「ダーク(暗い)」という語感、、、これがすごく誤解のモトになっていることを最初に指摘したいと思います。ダーク・プールそのものは昔から存在したし、それ自体は善でも悪でもアリマセン。ただ最近のテクノロジーの進化はダーク・プールを利用しようとする者の間で新しい「勝ち組」と「負け組」を作っており、そのうち「負け組」の方から「チョイ待て!これはフェアじゃない!」という抗議の声が上がっている、、、それが真相だと思うんです。

でもそれだけじゃわからないだろうから、実際の例で説明します。これから書くシーンはドットコム・ブーム真っ盛り、1997年のトレーディング・ルームの光景です:

僕:「ジェン、○×生命からのこの注文、日中かけて(over the course of the day)計らってほしいんだけど、、、」

ジェニファー:「ホイさ。」

僕:「あの、マーケット・メーカーに全部で9万株あるってこと気づかれないようにね。」

ジェニファー:「忘れたの、私はアンタとアンタの客のもの。(I'm your girl. I work for your customer, remember?)」

僕:「うん、ごめんね。チョッと心配になっただけさ。」

ジェンというのはセールス・トレーダーです。セールス・トレーダーというのは為替で言うカスタマー・ディーラーに相当し、自己のポジションを持たず、最終顧客のために注文をさばく仕事をするトレーダーです。これとは別に証券会社にはマーケット・メーカーと呼ばれる、自己ポジションで顧客注文に買い向かったり売り向かったりすることで商いを突き合わせているトレーダーが居ます。

ジェニファーはこの注文の9分の1だけをマーケット・メーカーに流します。

マーケット・メーカー:「ジェン!この注文、後があるんじゃないだろうな?全体像を教えないとただじゃおかないぞ!(Give me the whole picture.)」

ジェン:「とにかく、最初の部分を買わせてよ。(Get me started, would you?)」

マーケット・メーカー:「よし、じゃあ1万株○×ドルで売った。」

ジェン:「あんがと」

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一時間後、、、

ジェン:「さっきの株だけど、あと1万株買いたいんだけど。」

マーケット・メーカー:「そらみろ!このアマ、騙しやがって。だから言わんこっちゃない。担がれちまったじゃないか!デスクに穴をあけたのはお前だぞ。」

マーケット・メーカーは最初の1万株の出来を作った際、在庫が無いにもかかわらずジェンに売り向かったわけですから、1万株のショートのポジションになっているのです。するとマーケット・メーカーの立場からすれば売り物が来て相場が下がってほしいのに、後から後からジェンが買い注文を出してくるので機嫌が悪いわけです。

なぜジェンが全部で9万株の買い物があるということをマーケット・メーカーに伝えなかったかというと、それがバレるとマーケット・メーカーが引いてしまい、最初の買い始めを良い値段で買わせて呉れないからです。

このようにひとつの証券会社の屋根の下でも顧客の利害を代表しベストの値段を追及する者(=ジェン)と証券会社の利益を追求するもの(=マーケット・メーカー)の立場は全く対立的なのです。

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大引け前30分、、、

僕:「ジェン、○×生命だけど、あと1万株、追加しておいて、、、」

ジェン:「やめてよ、それは殺生だわ。(Don't do this to me.)私、マーケット・メーカーにぶっ殺されるわ!」

僕:「騙して、ごめん。こんど『寿司清』でおごるから、、、機嫌直してね。」

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つまりはじめから○×生命からの注文は10万株だったのです。でもそれがバレるとマーケット・メーカーの餌食にされてしまうので、最後の最後まで、トランプのカードを見せないようにしたわけです。

さて、ダーク・プールとは上の例では最初にマーケット・メーカーの目から隠ぺいされた8万株、プラス僕が懐に隠し持ち、ジェニファーを欺いた最後の1万株、、、都合9万株のことを指します。

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