FASBとSECは流動性の枯渇した証券の妥当価値の算定に関する新しいガイダンスを今週中にも出すとコメントしています。このガイダンスは現在の厳しいマーケット環境に鑑み、会計士、税理士、その他の財務情報のユーザーが妥当価値の基準を当てはめる際のガイドラインについて明確化する必要があると判断したために公表されるものです。
【抄訳】
若し、或る証券化商品の流動性が枯渇してしまった場合で、倒産寸前の売り手が無理やりとんでもない値段でそのような証券を叩きうることを余儀なくされた場合、それは秩序ある取引(orderly transaction)ではない。フェア・ヴァリューという概念を当てはめることができるのは売り手、買い手の双方がその取引を自ら進んで欲するような場合であり、しかもある程度のロットで取引がちゃんと成立する場合のことを指す。
そういう秩序ある取引ではない、叩き売り時の価格情報(observable input=level 2基準)は、場合によっては好ましくない。そういう場合はレベル3(level 3)、つまり将来のキャッシュフローの予想などによる算定方法の方が好ましい。
もちろん、或る取引が秩序ある取引だったかどうかの判定には判断(judgment)が入ってしまうが、それは入っていい。
【コメント】
いまのマーケットが必要とする、極めて常識的な見解だと思います。
9 件のコメント:
全く仰る通りで、含み損を表面化させずに抱え込むような事を防ぐためにも、時価会計は重要なのですが、何が公正な「時価」なのか?という点について、投げ売りを強制された人が付けざるを得なかった価格までをも、取引があったというだけで、「時価」としてしまう事には問題がある事は明らかですね。
いよいよ、じゃぶじゃぶストーリーの時期に来たという感じがするのですが、いかがでしょうか?
アメリカは、時価会計の一部ストップで時間を稼いで、その間にじゃぶじゃぶにして流動性確保。金利は下げられる限り下げる。
世界的なインフレが来るのかも知れないですね。今年の上昇は序章だったのかも。
要は、銀行に限っては、信用取引でレバレッジをパンパンにして買っていた人が、レバレッジによる利益だけは通常どおり得られて、追証がかかった時には、強制決済のルールが守られず、負い金なしで追証が外れるまでいつまでも株価が回復するまで待ってくれるということですね。
第一に、事態が想像を超えて悪いと言う事。
第二に、おそらくこのルール違反は時間稼ぎにしかなら無いと言うこと。
第三に、おそらく株高騰よりも金融パニック(金価格高騰)を煽るだけであろう事と。
私も esprit S3 さんの意見に賛同します。
どう考えても、不良資産計上の先送りに過ぎないと思います。
信用収縮の解消の役に立つとは思えません。
皆さんコメントありがとうございます。
リーマン倒産前とリーマン倒産後では状況がちょっと違うんです。
リーマン倒産後は火事場泥棒的な取引が幾つか見られました。その場合、「なにわ金融道」を地で行くような強引な取引によって既成事実化した値段を正式なレファレンス価格として使用できないのは当然です。
僕も昔、倒産寸前の日本の金融機関の保有する証券を請け出して来ては転売する仕事に携わったことがありますが、その場合、立場の弱い売り手からは、どんな値段だって引き出せるのです。
なにがフェアか?
これは長い目でみて武士道精神に則って決めないといけないことです。目先の利に走って、濡れ手にアワで儲けても、後々そういう取引は恨みを買います。
いまSECとFASBが交通整理しようとしていることは、そういう問題なのであって、隠蔽とか含み損の認知の遅延とか、そういう問題じゃありません。
これは実務に携わっている人ならすぐわかることです。
ひとつの塊としての債権なら、踏み上げさんの仰ることも分かります。
しかし、いろんな債権を寄せ集めてさらにスライスした証券化商品で、個々の債権の中身を把握することすら難しいものの値段をつけることが、その辺の会計士や税理士にできることなのでしょうか?
それに、あえて値段をつけるという行為と、デフォルト格に陥った証券化商品をAAA格にしていた格付け会社の行為と、何が違うのでしょうか?
つけられた価格が妥当で、その商品の所有機関の資本が毀損していないと信じるのはかなり難しいと思います。
素人で、いろいろ言葉が分かってなくてすみません。
誤:デフォルト格
正:ジャンク級
ですかね?
その法案が社会正義的にフェアかアンフェアかは問題ではないと思います・・・
個人投資家にとっては、アメリカ市場が上海市場みたいに政策頼みの市場になれば、テクニカルもバリューもなくなって、ただのインサイダー市場になる事を意味しますし・・・
会計基準があいまいになれば底がどこなのか見えなくなります。
ジム・ロジャーズの言うように商品の時代が来るというのはわかる気がします。商品の価格は需要に左右されるので、株式よりも透明性がありますから。
皆さん、
コメントありがとうございます。
不正会計を憎む気持ちは僕も皆さんと一緒です。
いや、たぶん、皆さんより僕の方が不正会計に関しては詳しいし、帳簿のインテグリティーという問題を日頃から真剣に考えていると思いますよ。
でも或る値段で取引があったからといって、その値段が常に絶対フェアであるとはかならずしも言い切れません。
例えば何年か前に東証でIPOに絡んで発注間違いがあり、とんでもない値段がついてしまった事件を皆さんは覚えていますよね?。
その値段で成立した取引をそのまま生かすか、ご破算にするか?という議論はもちろんしっかり尽くす必要がありますが、株数と単価を入力し間違えた注文が或る値段で出来てきたからといってそれが「フェア・ヴァリュー」である筈がありません。それが証拠に値段はすぐに元に戻りました。
リーマン倒産後のファイヤ・セールで成立した取引のうちの幾つかは、それと同様で、その証券の本来の価値とはなんの関係もない強奪的価格で約定しているのです。
繰り返し言いますが僕はリーマンの倒産前はレベル3アカウンティングに反対の立場でした。でもレベル2、つまり実際に取引が成立した値段が誤発注事件の際の価格形成と同様に歪んだものなら、それは丁寧に排除すべきノイズなのです。だからこそ、もうとっくに議論が終わったはずのレベル3アカウンティングの問題がいま蒸し返されているわけです。
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