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2008年11月3日月曜日

1929年のウォール・ストリート その4

コバーンはその日、ウォール街の巨頭とランチのアポイントメントがあった。それはエドガー・スペアーである。スペアーはドイツ系ユダヤ人の経営する投資銀行の中でも最古かつ最も貴族的な会社のパートナーだった。彼と彼の妻はワシントン・スクエアの北側に面した復古ギリシャ調スタイルの家に住んでおり、その屋敷はエレガントに装飾されていた。

昼食は中年の英国人の執事の指示の下で英国人のウエイターによって運ばれてきたのだが、スペアー婦人が最近出版した詩集の話をしているときに何か異変が起きた。厨房の方で「ドシン」という音がしたかと思うと誰かが声を荒げているのが聞こえてきた。ドアのノブがゆっくり回されたと思うと少しだけの隙間の後ろに数人が詰め寄っているような雰囲気が感じられた。執事とウエイターが子羊のメインコースをサーブして下がった後、女の声で、「さあ!行って伝えなさい、さもないと、、、」というのが聞こえた。すると突然、ドアが開き、紅潮した執事が押し出されるようによろけ出てくると、スペアー氏に「ちょっと、よろしいですか」と小声で話しかけた。スペアー氏は瞬間、驚きの表情を見せ、「少し外します」と言って部屋を出た。ほどなくスペアー氏はダイニング・ルームに戻ったが、「失礼おばいたしました。厨房にティッカー・マシンがあるのですが、使用人達も実は相場をやっておりまして、、、」

結局、その日スペアー氏は賓客をダイニング・テーブルに置き去りにしたまま戻らなかった。彼のメインコースにも手がつけられないままであり、スペアー婦人は混乱と取り繕いの中でランチを終えるはめになった。このランチは大失敗であり、スペアー家の社交界における大恥であり、家訓破りの大珍事となった。コバーンは完全に取り乱したスペアー氏の様子を見て、大暴落の何たるかについてだんだんその意味するところが身に沁みたのである。

『Once in Golconda』 John Brooks Chapter 6: Enter the White Knight

2 件のコメント:

tabbata さんのコメント...

とても興味深い、翻訳ありがとうございます。
ところで、素朴な疑問なのですが、この年代のころのティッカー・マシンというのは
いったい、どういうものだったんでしょうか?

メインフレームのコンピュータに食わせるパンチカードみたいなもんですかね。

情報としての株価を伝えるテクノロジーには、雲泥の差があっても、パニック的な暴落の心理プロセスというのは
近いもんがありますね

フラウボウ さんのコメント...

またまたこのエントリーと関係ないですが、
今 JIM CRAMER'S REAL MONEY を読んでいます。これ、かなりの良書ですね。
こんな本があったんですね。

JIMはチャートは無駄と書いていますが踏み上げさんはかなりテクニカルには詳しいですよね?(ブログのなかの踏み上げさんのコメントから、そう推察しています)。

踏み上げさんにとってテクニカルってどういう位置づけなんでしょうか?
コメントいただけると幸いです。

明日の楽天のテクニカルの記事楽しみにしています。