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2009年1月3日土曜日

CFD取引とシステミック・リスク




CFD取引はレバレッジを利かせた投資ストラテジーですから当然、諸々のリスクが増幅(アンプリファイ)されます。そういう投資家個人の背負い込むリスクに加えて僕が日頃興味を抱いているのは業界全体を巻き込んだシステミック・リスクの問題です。

もちろんCFD取引は未だはじまったばかりの取引形態ですからコントラクトの残高も他のデリバティブ商品に比べれば微々たる数字です。従って「量が多すぎる」ことから来るリスクはいまのところ心配する必要は無いでしょう。しかし今後この商品が人気化するという想定の下では、頭の隅に入れておかねばならない考察点というものが存在します。

フル・ヘッジの有無
先ずCFD業者の全てが投資家の発注する注文全てに対してフル・ヘッジのカバー・アクションを取っているかどうかという問題があります。たぶんかなりのマーケット・リスクは実際にカバーすることで除去されていると推察されますが、経済性の観点から考えて100%のカバーは実施していないところが多いのではないでしょうか?むしろ最先端のアルゴリズムなどを駆使して、マーケット・メークの在庫プール全体としてのリスク管理に力を入れている筈です。在庫プール全体としていかに巧みにリスク管理できていてもフル・カバーの安心感には及ばないと思います。

ホワイトラベルによるリスクの伝播
FXなどの世界ではホワイトラベル(=英語だと「ホワイト・レーベル」と発音します)と呼ばれるサービスのOEM化が盛んです。CFD取引においてもホワイトラベルは今後主流になってゆくと思います。ホワイトラベルはトレード・システムの開発能力に優れている企業やリスク管理ノウハウを極めた企業がディストリビューション・コストを最小限に抑えながらそのコア・コンピタンスを利益に直結させる、極めて合理的なビジネス・モデルです。実際、一握りの革新的な企業が強力な「裏方」としてめきめき頭角をあらわしています。しかしそれらの「ポイント・オブ・エクセレンス(=優秀な部分)」は成功しているがゆえにリスクの集まるポイントにもなる可能性を孕んでいると思います。

マーケット・リスク
ホワイトラベル業者は為替市場や株式市場の変動をVaR(=バリュー・アット・リスク)モデルを使ってリアルタイム管理しています。金利リスクに関してはそれほど影響を受けないとは思いますが、最近のホワイトラベル業者の決算書などを見るとセンシティビティーは上昇しています。

クレジット・リスク
マーケットが大荒れに荒れて顧客の多くが1日で多額の損を蒙った場合、顧客が積んだ証拠金より大きい損があちこちで発生する場合も無いとは言えないと思います。その場合、焦げ付きが増え、それがホワイトラベル業者のファンディング能力に悪影響を与える可能性があります。

リクイディティー・リスク
ホワイトラベル業者は通常、与信はしません。余剰キャッシュは短期の債券などで運用していると思います。その意味ではリクイディティー・リスクは小さいです。

リスク・キャピタル
しかし業容の拡大とともにバランスシートはどんどん大きくなっているのでコア・キャピタル・レシオは劣化しています。

オペレーショナル・リスク
ホワイトラベル業者が複数のFXやCFD業者に「トレーディング・エンジン」を提供しているということは彼らの情報処理システムに故障が発生した場合、トラブルが伝播するリスクがあります。


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