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2009年1月11日日曜日

激変するアメリカの個人向け証券サービス

上の動画はアメリカのネット証券、シンクオアスイム(SWIM)の社内風景を紹介したものです。シンクオアスイムはオプション取引やFXなどに特化したネット証券で最新鋭のトレーディング・ツールをどんどん個人投資家に提供することで急成長しています。同社のもうひとつの特徴は投資家教育プログラムがたいへん充実している点です。

このシンクオアスイムが先日、大手ネット証券であるTDアメリトレード(AMTD)に買収されました。TDアメリトレードはチャールズ・シュワッブ(SCHW)に次ぎ、米国で2番目に大きいネット証券です。

TDアメリトレードがシンクオアスイムに魅力を感じた理由は2つあって、ひとつはネット証券のビジネスの中でオプション取引は最も急成長している分野だということです。しかしオプション取引は初心者には難しいです。従って投資家教育が必要ですし一般投資家にも使いやすいトレーディング・ツールも欠かせません。シンクオアスイムはその両方を兼ね揃えています。

アメリカではCFD取引は未だ始まっていませんから、個人投資家がCFDに匹敵する柔軟なトレーディング戦略を実現しようと思えばオプション取引とかにならざるを得ないのです。その意味では個人のネット・トレーダーがレバレッジ・ツールを積極的に利用しはじめるというグローバル・トレンドはアメリカにも及んできているわけです。

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アメリカの証券界を巡る先週のもうひとつのビッグニュースはシティ(C)が資産サービス部門(=その大部分はスミス・バーニーというワイヤー・ハウスです)を切り離すと発表した点です。上のシンクオアスイムのニュースが明るい、前向きなニュースだとすれば、こちらは暗い、後ろ向きなニュースだと思います。

実はスミス・バーニー部門はいろいろなシティのビジネスの中にあって比較的収益が安定しています。このため、つい11月のタウンホール・ミーティングでもCEOのヴィクラム・パンディットは「俺はスミス・バーニーのビジネスをとても気に入っている。だから売却などありえない」と全社放送で宣言していました。それが2ヶ月もしないうちに売りに出されるということは急いでキャッシュをこしらえる必要があるシティにとって、他に売れるものが無いという風に解釈せざるを得ません。

スミス・バーニーはモルガン・スタンレー(MS)の資産サービス部門(=その前身はディーン・ウィッターというワイヤー・ハウスです)と合併し、シティとモルスタのJV(=ジョイント・ベンチャー)というカタチで当初モルスタが51%、シティが49%の株式を所有するという形態が検討されています。

なおスミス・バーニーのセールスマンは1万1千人、モルガン・スタンレーのセールスマンは8千人です。今はモルガン・スタンレーも資金繰りに苦しんでいるのでこのJVを100%買うことは出来ませんが、今後何年かかけて出資比率を上げてゆく意向があるそうです。

ただ、現実的にはスミス・バーニーとモルガン・スタンレーのリテール部門を一緒にすることでまた一段と人員削減がやりなすくなる、、、そういう意図があることは明白です。会社側としては所謂、トップ・プロデューサー(生産性の高いセールスマン)だけを確保し、後はどんどん解雇するでしょう。

これは最近、バンカメリカに吸収されたメリルリンチの統合プロセスにも当然、影響を与えます。スミス・バーニーとモルスタの合併会社からどんどん余ったセールスマンが放り出されるということはバンカメリカが歩合をはずまなくてもメリルのトップ・プロデューサーを慰留することができるというわけです。

1 件のコメント:

mon さんのコメント...

You Tube の動画とても面白かったです。特に社内で働く人の表情が。いつも音楽や癒し動物の動画しか見ていなかったので、新鮮に映りました。
後半はなんとも現実的なお話でしたが、日本もそのうち投資環境が激変し、シンクオアスイムのような会社が登場するのでしょうか。
14日の勉強会は出席できることになり、大変楽しみにしています。
日本は最近寒いです。お風邪をひかれませんように(・・)v