長いことベトナム株について書いていなかったので久しぶりに書きます。
先ず僕はベトナムという国は大好きです。フレンドリーなホーチミン・シティも悪くないですがスタイル・コンシャスなハノイが自分としては好みです。
さて、大好きなベトナムなのですが、こと株に関しては余り良いことが書けませんでした。いや、正確には世界の新興国市場でも1、2を争う危険なマーケットだと常々考えてきました。(それは僕の勉強会を昔から聞いてくれている皆さんは飽きるほど聞かされていることだとおもいますが。)
しかしベトナム株はずいぶん下がりました。人気の離散とともにチャラチャラした投機的な資金も随分逃げてゆきました。
あとひと息だと思います。
でも僕は未だ強気転換はしません。ベトナム株には最後の辛い局面が待っていると考えています。
その理由は上のグラフです。これは一部新興国の近年の信用成長を示したものです。カンタンな言い方をすれば経済の実態にかけ離れて、どれだけ乱脈な与信(=銀行の貸付)がなされたかを示しています。リストの上位に来るのは最近話題になることが多い中欧・東欧諸国なのですが、アジアからはベトナムだけが堂々第2位にランクインしているのがわかると思います。
ベトナム人の間では銀行にお金を貯金するという習慣が定着していません。これは貯蓄好きなアジアの国民の中では異例だと言えますが、ベトナム戦争などの影響があることは否めないと思います。
するとコア・デポジット(=小口の銀行預金)がぜんぜん貧弱なままにベトナムの銀行はどんどんマンション建設などにローンを提供したわけです。ローン・ツー・デポジット比率は約100%です。これは中欧・東欧よりはマシですけど他の新興国との比較では危険な水準です。 そういう言い方でわからなければ「ベトナムの銀行はSFCGみたいになるリスクがある」ということです。
さらにリザーブ・カバレッジ・ギャップ(借り換え必要額と外貨準備を比べた数字)で見ると東南アジア諸国で唯一、大きなギャップがある国です。別の言い方をすればホットマネーの流入に対して外貨準備が足らないということです。
さて、中欧・東欧諸国の通貨危機がコンテージョンと言って他の新興国に「伝染」した場合、これらの理由からベトナムはアジア諸国の中で唯一、投機筋のターゲットにされる危険性が残っているマーケットです。
この「最後の揺さぶり」さえ受けてしまえば、投機熱はベトナムから一掃されてしまうでしょう。そこではじめてベトナムは下げ止まると考えています。 (買いのタイミングを待ち焦がれていた皆さんはもう少しの辛抱です。)
但し最後の「壊れ」が来た後、ベトナム株が出直るには相当日柄がかかる気がします。慌てず鷹揚に出動すればOK。
過去の関連記事:
ベトナムの歴史
ベトナムの社会と政治
ベトナムの経済(その1)
ベトナムの経済(その2)
ベトナムの経済(その3)
ベトナムの経済(その4)
ベトナムの課題
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