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2009年3月18日水曜日

米国の自動車メーカーを「過去の遺物」と片づけてしまうのは早い


アメリカには「この人の逆をやりたくないな」と思う老獪なビジネスマンが何人か居ます。
例えば高値でARM住宅ローンのゴールデン・ウエストをワコビア銀行に売り抜けたサンドラー夫妻や絶妙のタイミングで『Death Star』に帰還した法曹界のダース・ベイダーことハーベイ・ミラーなどがそんな人たちです。
で、日本のマスコミはもうGMが潰れてしまったかのような書き方をしていますけど、僕は「それって、、、ちょっと違うな」と感じるんですね。なぜならオバマ大統領はCar Czar(自動車業界の皇帝)にスティーブン・ラトナーを任命したからです。
(ちなみにウォール街を徹底的に排除すると決めているオバマ政権で、バリバリのウォール街の現役が起用されるのはスティーブン・ラトナーだけです。これだけでもオバマ大統領が彼に寄せる期待がわかろうというもの。)
スティーブン・ラトナーは元ラザード・フレールのインベストメント・バンカーでエンターテイメント業界などが専門分野でした。一時は「たぬき」な事で知られる「ラスト・エンペラー」ことマイケル・デビッド・ワイルの後を継いでラザード・フレールを切り盛りするか?とすら言われた男です。
スティーブンははじめから勝ち目の無い喧嘩は売りません。
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次にGMをはじめとする自動車メーカーを救済する総コストはどんなに多く見積もっても1000億ドルくらいあれば十分です。すでにその何倍もの金をAIGをはじめとする銀行セクターにつぎ込んでいる行きがかり上、「なぜ銀行は潰せなくて、GMならいいんだ?」という世論が出た場合、オバマ大統領には弁解の余地はありません。既に「ウォール街は悪者、デトロイトは巻き添えを食った哀れな犠牲者」という認識が国民に広がっている以上、プライオリティーはデトロイトに置くはずです。
さて、「GMを救う」というのは何を持って救うに該当するか?という定義上の問題がひとつあると思います。この場合、pre-packaged dealで再生資金の供与を最初から約束する「計画倒産」も立派な救済です。
つまりGMがクルマ作りを止めるシナリオはゼロだということです。
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「でもGMには魅力あるクルマが作れないじゃないか?」
そういう意見は日本人の間にも多いし、アメリカ人でもそう考える人は沢山居ます。
でも僕はそもそもGMを普通乗用車の会社だとは思っていないのです。
ハッキリ言えばGMはピックアップ・トラックの会社です。(それはGMのホームページで自社製品の紹介を全部眺めてみればたちどころに気付くはずです。)
ピックアップ・トラックは庭師さんや大工さんや農家など、あらゆるミドル・アメリカ(=庶民)にとって「働き馬」なのです。
これから「オバマ・ニューディール」をやるぞ!と意気込んでいるホワイトハウスが肝心要の「働き馬」を作る会社を見捨てるわけがありません。

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