AIGに対する「魔女狩り」が最高潮に達しています。
しかしこのゲームはだんだんAIGに対する糾弾というよりは議員さん達の保身のためのblame game(罪のなすりつけあい)の様相を呈してきています。
例えばコネチカット州選出民主党上院議員のクリス・ドッドが「AIGから10万ドルの政治献金を貰っていた」ということが問題になったり、「ティム・ガイトナー財務長官は一体、何をやっていたんだっ!」という声も大きいです。
クリス・ドッド議員は慌てて「AIGから受けた政治献金は全部突き返した」と発表しました。
ところでAIGから献金を受けている議員の名簿を見ると:
バラク・オバマ(当時イリノイ州選出民主党上院議員)10万ドル
ジョー・バイデン(当時デラウエア州選出民主党上院議員)2万ドル
ヒラリー・クリントン(当時ニューヨーク州選出民主党上院議員)3.6万ドル
など、きまりのわるい名前もちゃんと載っているのです。
ガイトナー財務長官は「責任は自分にある」というコメントをしているのでもしかすると辞めるかもしれません。
またバーニー・フランク下院金融サービス委員会委員長(マサチューセッツ州選出民主党下院議員)やナンシー・ペロシ下院議長はバーナンキ議長を責めはじめています。
上のビデオではバーニー・フランク委員長が次のようなことを言っています:
①去年FRBがAIGを救済するために融資したときはFRBが1932年に定められた緊急の救済条項に基づいて勝手な判断で単独でやったことであり、議会は事後報告を受けただけだ
②その緊急融資の条件にはAIGの社員のボーナスに関する規定は無い
③だけど我々はAIGの80%の株式を所有する実質的オーナーであり、大株主としての権利を行使できる
④AIGのCEOは「問題を解決するためには事情の一番よくわかっている社員をキープする必要がある」と言っているが、それは間違っている。問題解決のためには関係者を一掃して、われわれが実権をにぎらないといけない
議員さん達が責任のなすりつけ合いを始めた理由は米国民の轟々たる非難を見て「だれか人柱を立てないと、自分の身があぶないぞ」と考え始めたからに他なりません。
まあ、ガイトナー財務長官が「飛ぶ」のは仕方ないとして、若し危害がバーナンキ議長にも及ぶ雲行きになればマーケットは荒れるでしょうね。
4 件のコメント:
ガックシきてしまうお話ですね。米国の現状を教えていただいて有り難うございます。
ガイトナーさんには議員の皆さんに何を優先順位にするのかという対話をがんばってほしいなあ。
踏み上げさん、ガイトナーさんってどういう印象をもっていらっしゃいますか?
それと、ジムクレーマーさんがコメディーショウに出てボロボロになったそうですが、なんでボロクソに言われたのかしら?
エマニュエルトッドに興味があります。人口という切り口に興味があります。
マスオカさん
コメントありがとうございます。
「大衆の狂気」みたいなものを感じます。
これはほとぼりがさめるまでは誰が何を言ってもダメでしょうね。
実は僕もこの「大衆の狂気」ということに関しては矢面に立つ側の立場をちょっぴり経験しました。
ドットコム・ブームが崩壊した後、僕の勤めていた会社は「ブームを演出した元凶だ」ということでものすごく糾弾されたのです。
僕の勤めていた部署は全部閉鎖されました。
レイオフされた後、何日間かはフランス革命の後でダントン、ロベスピエールなどの革命の志士たちが次々ギロチン台の露と消えたテロルの時代に関する本を読み耽りました。
思うに大衆が「血祭りに挙げようぜ!」と高潮しているときは、理屈や正義はどうでもいいのではないでしょうか?
だから対話をしてもなかなか通じないと思います。
ジム・クレイマーのコメディー・セントラルでの吊るし上げは見ていて本当に怖かったです。お笑い番組なのにジョークはゼロで、最初から最後まで(広い意味での)ウォール街関係者を八つ裂きにすることに皆、熱中していました。
昨日のジェイ・レノのトークショーでのオバマ大統領の登場は、その点、効果的でした。
ショーの全部は見ませんでしたが、オバマ大統領は基本的に次のようなことを言っていました:
「みんなの怒りはよくわかるよ。でも僕らはアメリカ人なんだ。自分たちの最低限の品性とか、価値観とか、そういうことを忘れないで欲しい。みんな、冷静になろう」
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