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2009年7月5日日曜日

新興国におけるミドルクラスの出現








一番上のスライドは僕が2006年に或る講演会で喋った時に使ったものです。
ヤフーの創業者、ジェリー・ヤングと『フラット化する世界』の著者、トム・フリードマンの言葉を引用しました。
現在の世界経済の置かれている状況は一言で括れば凹凸状態の過渡期であるということです。
凹の方は負債を背負い込み過ぎたアメリカの消費者が凹んでいるさまを表しています。これは世界中の投資家の心配事No.1と言っても過言ではないでしょう。
これに対して中国の政府はどんどん景気刺激のための財政出動をして、なんとか急場を乗り越えようとしています。ただ、3年くらいの期間で考えた場合、中国の大型景気刺激策は「幕間つなぎ」に過ぎません。なぜなら現在の支出レベルはサステイナブル(=長期維持可能)ではないし、ファンディングの財源には脆弱性があるからです。
それよりももっと重要なことは4兆人民元の景気刺激策は中国経済の構造改革には殆ど寄与せず、むしろいびつになっている産業構造に「ステロイド注射」して、アンバランスを一層助長するような内容になっているという点です。
「幕間つなぎ」の後に何が来ないといけないか?
それは凸の部分を伸ばすということです。
具体的にはアメリカの消費者が駄目になった分、新興国の消費者が成長する必要があるということです。これは一朝一夕には実現できません。
なお、僕の考えでは新興国の消費者が成長するということは単に彼らが財布のひもを緩めるということを意味しません。たとえば中国の貯蓄率は既に高いし、家計の蓄積はどんどん進んでいます。でもミドルクラス(中流)を支援するいろいろな要件が揃わないと消費者は安心して消費しないと思うのです。
その諸々の要件とは端的に言えばSocial capital(社会基盤)ということです。これには教育とか医療とか衛生とか老後の保障とか安全で住みやすい社会など、もうあらゆることが整備される必要があります。
新興国の消費者というテーマは、従ってデカいテーマであるとともに長い時間をかけて熟成するストーリーなのです。その意味では流れ星のように一瞬キラッと輝いたかと思えばすぐに消えてゆく、目先の流行ではないですから、テーマ型投信の題材としては適している気がします。
たまたまネットを見ていて野村が新興国消費関連投信を設定しようとしているのに気がつきました。上のグラフの2枚目から4枚目はその資料から拝借したものです。新興国のミドルクラスがどういう風に伸びてゆくのか?という説明の仕方は僕のそれとは違うし、数字的にもかなり開きがあるけど、興味深いデータ・ポイントがいつくも示されているので掲載しておきました。
蛇足ながら野村の新興国消費関連株投信のサブアドバイザーであるウエルズ・キャピタル・マネージメントは昔で言うモンゴメリー・アセットのチームです。モンゴメリーは新興国投信の世界ではとても定評のある運用会社でした。(今はウエルズ・ファーゴに吸収され名称変更されています。)



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