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2009年3月10日火曜日

米国株式市場とドルとの密接な関係


ドルに関して僕は専門家ではありません。

あくまでも株の人間だからです。

でもアメリカに20年以上住んでいるという関係で、日本の為替ウォッチャーには見えないことが僕には見える場合もたまにはあります。

たとえば最近のドル高です。

「アメリカの景気はこんなに悪いのに、何でドルは強いの?」
これはFXをやる人にとっては極めて素朴な感想ですよね?

でもこれは典型的な「日本から見た発想」です。
物事をアメリカから見たら、どうでしょう?

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アメリカ人は今、委縮しています。
不安で不安でしょうがない、、、そういう状態です。
アメリカの機関投資家も全くリスクが取れない状態です。

すると株式市場がずるずる下がるとアメリカ人は世界市場から退却しないといけないのです。日本のキャリー・トレードは有名ですけど、別にキャリー・トレードは日本人の専売特許ではありません。アメリカにだってキャリー・トレードは存在します。マーケットがギクシャクするとアメリカでもキャリーの巻き戻しがおこるのです。

だから今のドル高のある程度の部分は「海外の株などの資産を売却して、お金をアメリカに戻す」という流れが影響していると思うのです。

このため、ドルとダウ工業株価平均指数は逆相関の関係になっています。(上の2つのグラフ参照)

別の言い方をすればアメリカの投資家のリスク回避姿勢が強まると、ドルは高くなりやすいということ。(この視点が日本の為替ウォッチャーに最も欠落している部分です。)
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さて、最近のドル高ですが、ハッキリ言ってアメリカ人は困っています。既にマクドナルド(MCD)などの海外売上比率の高い企業はドル高に対して警鐘を鳴らしています。(このあたりSONYやトヨタが円高で苦しむのと「鏡写し(mirror image)」のようですね。)
でも一番困っているのはベン・バーナンキ議長だと思います。なぜならドル高は不況回避のレシピーから言えば全く逆効果だからです。(大恐慌から抜け出すにあたって最も手際が良かったとしばしば称賛されるのは高橋是清の「コレキヨ・レシピー」であることは以前書きました。)
このブログでは何度も書いていることですが(=なぜならとても重要なテーマだからです!)、1930年代の大恐慌の局面ではいち早く金本位制度を離脱した国(=それは財政拡大ならびに競争的な通貨の切り下げを意味します)ほど立ち直りが早かったです。
このあたりの研究の最高権威はバリー・アイケングリーンとベン・バーナンキです。
ベン・バーナンキはその著書「Essays on the Great Depression」の中で金本位制離脱と工業生産の回復の関係について次のように述べています:
「金本位制をいち早く離脱した国々は、そうしなかった国より年間7%も工業生産伸び率が高かった。これは統計的に重要な数字だと思う。」
その後バーナンキは2002年の有名なスピーチで大恐慌時代にルーズベルト政権がドルをゴールドに対して40%もデバリュエーションしたことを例に挙げて不況の処方を論じています。(=これがのちに「ヘリコプター・ベン」のあだ名をつけられるもとになっています)
下のYouTubeのビデオは最近、バナンキ議長が上院で公聴会に臨んだ際、シェロッド・ブラウン上院議員(民主党、オハイオ州)が:
「ルーズベルト大統領のニューディールというのは、一体、何が成功の原因だったのですか?我々はそのときの教訓から何を学ぶべきなのですか?いま、我々がやらないといけないことは何ですか?」という質問を浴びせる場面です。
バーナンキ議長はそれに対して:
「ルーズベルトは大統領就任直後に2つのことをやりました。ひとつは銀行休業宣言で、預金保証による銀行システムの安定化です。もうひとつは金本位制度からの離脱です。」
と述べています。


2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

>「アメリカの景気はこんなに悪いのに、何でドルは強いの?」


日本の景気が悪いのに円高が進む様を嫌という程見せられて来た日本の投資家には、リスクテイク能力の減少から来る自国通貨高、というアイディアは、感覚的に理解し易いと思いますよ。少なくとも僕は意外感はないです。

あと別件ですが、紹介されている映像で、民主党の上院議員は、バーナンキに、フィスカルポリシーが有効だ、という答えを言わせたくて質問したんですかね(笑)?

広瀬隆雄 さんのコメント...

WBJさん

コメントありがとうございます。