2009年11月30日月曜日
ブログ紹介 『daily082』
2009年11月29日日曜日
「ブラック・フライデー」の売り上げは落胆すべき数字
因みに去年は+3%、一昨年は+8.3%でした。
トロニー・ソーラー(TRO) 中国の薄膜ソーラー・システムのメーカー IPO
トロニー・ソーラーが近く上場されます:
幹事構成:JPモルガン、クレディスイス、CLSA、オプコ
今回発行株数:1950万株
初値設定:9から11ドル
ティッカー:TRO
売り手:JPM250万株、インテル200万株
同社は薄膜ソーラー・システムのリーダーです。コスト面で業界で最も競争力がある点、75のパテントを有するなど独自の技術を持っている点が特徴です。
現在の生産能力は115メガワッツで、年末までに145メガワッツまで増やす予定です。
平均製造コストは$1.09/ワットです。クリスタル・シリコンを作っている他社の平均コストは$1.44/ワットです。
同社のグロスマージンは40%、純利益マージンは29%で、これはクリスタル・シリコンのソーラー・パネル企業などと比べると遥かに高いです。
同社の薄膜技術はPECVDとPVDを利用しており、資本効率の高い経営をしています。
薄膜ソーラー・システムは主に所謂、オフグリッド、つまり電気の来ていない田舎などで街燈、温室、コンシュマー向けの用途に使われます。これはクリスタル・シリコンのソーラー・システムがオングリッド主体であることと大きく異なる点です。また同社のシステムはBIPVと呼ばれる、建物に一体化されたPVを壁面や屋根に据え付けるという商品もあります。
オフグリッドには20年の歴史があり、政府の補助金などを貰わなくてもビジネスとして成立しています。
トロニーの過去3年の売上高成長率は年率357%でした。純利益成長率は年率450%です。
クリスタル・シリコン市場の2008年の市場規模は5961MWで、これが2013年までに13040MWへ成長すると見られています。年率換算すると17%の成長率です。
これに対して薄膜市場の2008年の市場規模は893MWで、これが2013年までに4118MWへ成長すると見られています。年率換算すると36%の成長率です。
このように薄膜市場の方が成長率が高いです。また薄膜市場は政府の補助金などに頼っていない、自然に発生したマーケットです。
薄膜システムの特徴はコストが安いこと、製作過程が統合されていること、薄日や高温でハイパフォーマンスなので砂漠や日照の少ない地域でもシステム設置に適している事などです。
薄膜システムの原料となるアモーフォスをカドミウム(CdTe)と比べると、毒性がないため用途の制約が無いし、原材料がふんだんにあるという点でも有利です。
世界にはグリッドに連結されていない地域はいくらでもあります。ですから今後、世界の電気の消費に占めるオフグリッド比率は上昇すると予想されています。
同社のシステムはハイ・ボルテージ、ロー・カレントであるため製品寿命が長いです。また設置コストが殆どない、透明なのでビルに使える、形状やモジュール化などの面で自在に製品開発が出来るというメリットがあります。建設会社と協力して設計段階から建物への組み込みする事業を推進しています。
競合他社としてはファースト・ソーラー、ユナイテッド・ソーラー・オボニック、カネカなどが挙げられます。
ASPは安定的に推移しており、1.81ドル程度です。
クリスタル・シリコンの業者のように原料をストックする必要が無いので在庫は15日分しかありません。
売掛金は43日です。
リンケージ・テクノロジーズ(BOSS) 中国のITサービス企業 IPO
幹事構成:シティ、バークレイズ、パイパー、SIG、ウェドブッシュ
今回発行ADS:1020万株
初値設定:13から15ドル
ティッカー: BOSS(→4文字だけどNYSEです)
リンケージは97年に創業された会社で現在の従業員数は3500人です。主な業務は:
業務支援(CRM、請求書、カスタマー・サービス)1位
5.9億ドル市場 全体の44% CAGRは14.8%
オペレーションズ支援(ネットワーク管理)5位
3.15億ドル市場 全体の24% CAGRは11.5%
ITサービス(システム統合)
ビジネス・インテリジェンス(ディシジョン・アナリシス)2位
1.44億ドル市場 全体の11% CAGRは15%
VAS市場(参加せず)
2.2億ドル市場17%
中国移動、チャイナ・ユニコム、チャイナ・テレコムの3大通信会社全てとビジネスしています。
全ての顧客への売り上げ高は年々UPしています。
2006年から2008年の売上高成長率はCAGR37%、今年に入っての成長率は113%で競合他社より高いです。
営業マージン24.5%、純利益マージン19.4%で、これらはライバルより高いです。
CFOはシティグループのアジア・テクノロジー・リサーチ・チームのヘッドです。このチームはインスティチューショナル・インベスターズ誌、グリニッジ・サーベイなどでランキングNo.1でした。
懸念点としては売掛金回収日数が180日と長い事。但し、中国の電話会社は支払いが遅い事で有名であり、これは同社だけの問題ではありません。通常、通信会社は4Qに支払いするので売掛金は4Qには下がって来ると予想されます。
2009年11月28日土曜日
アフガニスタンへの増派
現地からの要請に応えて今3万人程度の増兵を行うのは、いずれこの戦術が不首尾に終わりアフガン撤退の決断を下す際に「われわれはやることはやった」と言えるようにするための方便にすぎない。
(レバ・バハーラ)
ブログ紹介 『positive gammaのブログ』
国賓晩餐会 招待客になりすました「太てえカップル」
「一体、セキュリティーは何をやっていたんだ!」
責任問題に発展する中、このカップルには刑事犯として捜査が開始されました。
それにしてもこんなに嬉しそうな顔してゲストになりすましホワイトハウスに到着すれば、(野暮な詮索をして粗相があったら大目玉を食らう。きっとなにかの手違いだわ)と受付嬢も気を利かすでしょうネ。
ここで大事なのはオバマ大統領は晩餐会をホワイトハウスの庭にテントを張って開催したという点です。これは国賓級ディナーでは異例中の異例。
オバマ大統領がそういう決断をした理由は共和党、民主党の両方の党派の要人を最大限招待しようという意図があり、ホワイトハウスの大広間では狭すぎたため。もちろん、在アメリカのインド実業界要人も沢山招待されました。普段のゲスト・リストより遥かに多い招待客で受付が忙しかったことは容易に想像できます。
或る意味、中国側からがんじがらめに管理された先の訪中旅程に対する、オバマ大統領のさりげないツラアテと取れなくもありません。
PS:歴史を振り返るとアメリカとインドの外交関係はむしろ冷え冷えとしたものでした。インデラ・ガンジー首相がニクソン大統領を訪ねたのが大失敗に終わって以来、アメリカが総力を傾けてインドのリーダーを歓待したのは今回が初めてです。 (アメリカは未だ現在の中国のリーダーに対してはState dinner=国賓晩餐会は実施していません。この外交上のprotocolにおける「距離感」は偶然でも過誤でもなく、綿密に練られた処遇です。)
ところで問題のカップルですが、テレビのリアリティー・ショー、「Real housewife(本物の主婦)」への出演権を獲得しようと必死になるあまり、この奇行を思いついた疑いがかけられています。実際、テレビ・クルーがホワイトハウスの玄関までこのカップルについて回ったのだそうです。このカップルがバイデン副大統領などと歓談している様子はフェイスブックに出回っており、アメリカのゴシップ誌にとっては大漁の日でした。
ブログ紹介 『Porco Rosso Financial Weblog』
Practitioner(実務家)として頂点を極めているとお見受けします。
現場での豊富な経験とガッチリした理論面での裏打ちを感じさせるエントリー。
いままでにない、全く新しいタイプの論客。
ベッカムやブラピが一夜にしてオケラになった訳じゃない
2009年11月27日金曜日
ドバイについてもう少し言葉を足すと
弾道学的(ballistic)な上げになってきたゴールド 一旦は売りでしょう
こういう場合、ド天井を言い当てるのは困難です。
でも僕は一旦、降りる事にします。
その理由は安全資産への避難という意味でドルが見直される可能性があるからです。
水曜日にドバイ・ワールドが債務のモラトリアムを発表しましたが、ドバイに貸し込んでいるのは主に欧州の金融機関です。すると新たな信用不安はアシンメトリック(非対照的)に欧州を襲うと思うのです。
これは欧州通貨売り、ドル買いの圧力になります。
ドルが買われるとゴールドは当然、売られると思うのです。
さらに中東は歴史的にゴールドの大きな買い手であり、ドバイの問題はゴールドのセンチメントにとってネガティブです。
加えてベトナムの利上げはインフレ懸念からゴールドに殺到していたベトナム国内の資金の流入を和らげる効果があります。
それから中国政府はいよいよ本格的に銀行融資の抑制に乗り出していますが、これも中国人のゴールド買いの勢いを削ぐ要因です。
2009年11月26日木曜日
2009年11月25日水曜日
リアルタイム・ウエブの活用例
この試みの良い点は誰かがネタを出したら、それがリアルタイムで反映される点です。つまり経済指標が発表される日にFXをトレードする際などにとても利用価値が高いと思います。
現在、日本ではツイッターをトレードに活用している人は少ないです。その意味では「2ちゃんねる」には或る程度、FXのコミュニティーみたいなものが出来あがっており、稲妻のようなスピードで最新ニュースが取得できます。
でもゆくゆくは誰かがTwitterによる投資コミュニティーをモノにするでしょうね。
これは英語にハンデのある日本人にとっては強烈に心強いツールになりうるのです。
なぜなら、帰宅後トレーダーの方がニュースを知りたければ:
「今日の新規失業申請件数、幾らだったの?」
とTweetするだけで良いからです。教えてくれる人は続々出て来るでしょう。
別の言い方をすればトレードする際のニュース取得のクラウド・ソーシングです。
個人投資家の世界ではこれが次のメガトレンドのような気がします。
通貨の健全性がクローズ・アップされている
通貨の健全性の議論がクローズ・アップされています。
『外国株ひろばVersion 2.0』は現在、オープンβで僕が「練習中」のサイトで、編集ツールに慣れるまでボチボチ練習しようと思って始めたサイトですけど、風雲急を告げているのでリンクを紹介しておきます。
ベトナムのデバリュエーションは大材料 警戒を解かない事!
今の時点では情報が極めて少ないので、憶測でこれを書きます。
先ず今回、ドン切り下げに踏み切った直接の理由はオバマ大統領の訪中が人民元切り上げにつながらなかったことによると思います。
人民元は米ドルにペッグされているのでどんどん人民元安になっています。これは中国の周辺国の競争力を著しく低下させています。そこでベトナムもcompetitive devaluation、つまり競争上、通貨の切り下げをしなくてはならなくなったわけ。
さて、この手の通貨の切り下げを断行すると慌てた投資家がベトナム株を売り、資金を引き揚げるというシナリオが考えられます。
その場合、ドン売り・外国通貨買いの換金要求に応えなければいけません。このプレッシャーの大きさによっては外国通貨の準備が払底する危険性もあります。そこでベトナム政府は輸出企業で外貨を持っているところへ「外貨を回してくれ」とリクエストしているそうです。
さらにベトナムは金利を大幅に引き上げます。
これは通貨を防衛しようとする国が行う常とう手段です。
ただベトナムの場合、金利引き上げはバブル抑制というもうひとつの目的も持っています。去年の金融危機以来、ベトナムはどんどん銀行融資を拡大し、不況対策としてきました。そのお金が不動産市場などに流れ込み、バブルを生んでいるのです。
ついでに言うとこの現象は中国で現在見られている現象とスケール的にも、症状的にも酷似しています。
ところで中国の5大銀行は昨日、銀行監督当局に対し増資計画案を提出しました。銀行監督当局は各行に対し長期資本計画の立案を指示しています。このやりとりには少し「解せない」ものを感じました。
その中で;
①過小資本の銀行については新規ビジネスの許可をしない
②海外進出を許さない
③新規支店出店の制限
④その他業務拡張を制限する
と発表されているのですが、監督当局の懸念が滲み出ているように感じるのです。ちなみに各行の自己資本比率(CAR)は:
工商銀行 12.6%
建設銀行 12.11%
中国銀行 11.63%
交通銀行 12.52%
であり、これだけを見るとOKのように見えます。しかしNPLの問題はどれだけ資産内容が劣化したとき、それを「不良債権である」と呼ぶか、その会計基準が違うし、だいいち援用にばらつきがあるので、本当のところ中国の銀行の資産内容がどのくらい朽ちているかは、わからないのです。
ですから今日のベトナムの展開いかんによっては中国市場にも不安が走るでしょう。
フェイスブックのIPOが近い?
フェイスブックがクラスAとクラスBの2種類の株式の構造を採用すると発表しました。
通常、或る未公開企業がこの手の発表をすると、IPOが近いと言えます。
(フェイスブックは未だ未公開会社ですが、実際には同社の株式はルール144A市場という機関投資家間の私募市場で既に取引されています。)
広告批評 こういう広告なら大歓迎
2009年11月24日火曜日
ハーヴェイ・ミラーのインタビュー
ハーヴェイ・ミラーは米国法曹界の重鎮であり、破産法の実務家としては頂点に立つ男です。
Resolution authorityの援用に関する彼の意見は傾聴に値します。
(FDICがバッサリ切り捨てられています。)
中国政府がIMFのゴールドを購入したというニュースが若し出たら、それが相場の分岐点
若しそのニュースが出たら、一瞬は噴くかも知れませんが、好材料出尽くしで潮目が変わると考えた方が良いと思います。
We've got the monster by the tail!
マーク・トウェイン曰く、「金鉱とは空っぽの穴の横にうそつきがひとり立っている場所だ」
上のテレビ番組は実際にカナダで起きた金鉱をめぐる詐欺事件です。
この詐欺の舞台となったブリエックス(Bre-X)という企業のピークの時価総額は5500億円くらいありました。つまり嘘のスケールとしてはとてつもなく大きいものだったのです。
このエピソードの発端はフィリピン人鉱山技師、マイケル・デグスマンがインドネシアのボルネオ島のジャングル奥深く、ブサンという土地で金鉱脈を発見したと宣言したことから始まります。
デグスマンは鉱山技師ジョン・フェルダホフと組み、この探索の資金繰りを付けてくれる会社を探します。
かれらが白羽の矢を立てたのはカナダの落ち目の実業家、デビッド・ウォルシュです。デビッドはこの金鉱脈の話がでっち上げだとは知らず、ブリエックスという会社を創業します。
デグスマンは「塩撒き(salting)」という手法でドリリング・サンプルにゴールドを混ぜ、それを検査所に送ります。検査の結果、「ブサンにゴールドがあるぞ!」とわかるとブリエックスの株価は暴騰します。
しかし巨大な富がボルネオ島に眠っていることを知ったインドネシア政府はその権益を横取りすべく採掘権をキャンセルし、半分を自分の息のかかったフリーポート・マクモラン(FCX)社に譲渡します。
フリーポートは同じインドネシアに現存する、世界最大級の金山、グラスバーグの所有者です。とろこがフリーポートの探索チームがブサンに乗りこんで、ブリエックスのボーリング場所とすぐ隣接する場所でドリリングした結果、ぜんぜんゴールドが無いことがわかります。
その時までにデグスマンとフェルダホフは自分の持ち株を一部処分し、大金持ちになります。しかしフリーポートはこの話が詐欺ではないかと疑い、デグスマンに説明を求めます。
デグスマンはボルネオ島のジャングル上空でヘリコプターから飛び降り(一説には突き落とされたという説もあります)自殺します。しかしこの自殺は巧妙に仕掛けられたトリックだという疑惑もあり、真相はわかっていません。
フェルダホフはカナダ司法の手のおよばないケイマン島に逃げ、騙されたウォルシュはバハマに移住した2年後に心臓発作で死にます。
2009年11月23日月曜日
「マッカーサーの屈辱」とは、余りに歴史を知らない日本人
中田宏という人は横浜市長を務めた人らしいけど、歴史を知らないにもほどがある。産経ニュースの記事では彼はこう書いています:
戦後の写真で、マッカーサー元帥が腰に手をあてた体勢で昭和天皇と並んで写っているものがあり、日本人は米国に対して単なる屈辱を超える思いがあった。オバマ大統領が、それをも打ち消すような深い礼節を持って陛下に接してくれたことに対して、日本人は評価すべきだと思う。
この「屈辱的」会見で、実はマッカーサー元帥は大の昭和天皇ファンになり、「天皇制なんか廃してしまえ!」というアメリカ国内の轟々の批判に立ち向かって、天皇制擁護を貫いたのです。
マッカーサーは、(いま日本人の最後の心のよりどころを取り払っては日本人は内面から崩れてしまう)ということを強く悟った、最初のアメリカ人です。
それからマッカーサーは玉音放送の数日後に厚木飛行場に降り立ったのですが、そのとき未だ日本軍は武装解除していませんでした。ほんの一握りの米兵を連れて、降参したとはいえ敵の真ん中に下りて行った様を見て、「最後のライオン」と称されたウインストン・チャーチルは、「あれほど勇気のある男は居ない」と絶賛しました。
マッカーサーは日本が降伏文書に調印するまで横浜のグランドホテルのスイート・ルームを執務室として使うのですが、最初の朝食で「目玉焼き2つ」と注文したら、午後になっても注文した料理が出てこなかったのです。それで頭にきたマッカーサーが、「なんで出てくるのが遅いのだ!」と怒ったら、コックが「鶏がたまごを生まなかったので横浜中たまごを探し回ったけど、見つけられなかった」と釈明します。
マッカーサーはそれで日本の食糧事情の危機的な状況をすぐ察し、「アメリカ軍の食糧をすぐ日本に持ってこい!、本国からもありったけの食糧を日本に送れ!」と指示します。これはアメリカ議会の猛反発を食らいます。マッカーサーは議会に対して「兎に角、食糧を送ってくれ、もしそれができないのなら、また戦争がおこるから弾薬をよこせ」と二者択一を迫ったのです。
マッカーサーはもちろん終戦までは敵でしたけど、戦後はこのように日本にとっては恩人。もうそんな事すら忘れてしまったのですかねぇ。
競争することをなにか卑しい事のように思う日本人
池田信夫のブログにはときどき「はっ」とさせられることがあるけど、「成長戦略とは競争戦略である」というこのタイトルにも鈍器で殴られたような気がしました。
「世界で最も手ごわいcompetitor」、「日本企業だけは敵に回してはいけない」と恐れられた時代のことが「ふう~っ」とフラッシュバックのように眼前にチラついて、思わずクラッときた。
今の日本人は残り物の分配をどうするか?という問題ばかりに腐心して、競争をすることを忘れてしまったのだろうか?
僕が欧米の投資銀行で叩き込まれたことは「アタッカーを果敢に支持しろ!」、「現状にしがみつこうとしている奴は棄てろ!」という事です。これは人生の価値観ではなく、あくまでも投資の話としてですけど。
ロスチャイルド帝国の近況
しかし投資銀行の世界に入って僕が気付いたことは、ロスチャイルドの事業規模、世界のビッグビジネスや政府に対する影響力がいかに小さいかということです。
「ロスチャイルドの陰謀」の類のタイトルを本につけると一定の読者層が居るため、日本では「ロスチャイルドもの」の本が沢山出ています。
しかしその大半は業界を知らない外部者が書いた駄本です。
そんなわけで日本ではロスチャイルドという名前がLarger than life、つまり「等身大以上」に誇大に理解されてしまっているのです。
でも僕はロスチャイルドのビジネス展開にはとても興味をそそられるし、最初に書いたように浪漫を感じます。いや、むしろ小さい事業規模のままで頑なに伝統を維持することの方がスケールを追及するより良いとすら感じます。
さて、今日のウォール・ストリート・ジャーナルにロスチャイルドの近況が報じられていました。個人的にとても興味深い記事だったので抄訳しておきます。
■ ■ ■
「ロスチャイルド会長は家族経営に専心する 金融危機を通してロスチャイルドのマーチャント・バンク的な特化戦略は競争優位をもたらした」 記者:パット・ウィートクロフト
ロスチャイルドは現在も生きながらえている銀行界の王朝である。
「我々はフランス政府による国有化も、世界大戦も、ナチスによる迫害も耐え、サバイバルしてきた」バロン・デビッド・ロスチャイルドはそう語った。
彼は現在彼が采配を振るっているNMロスチャイルド&サンズが今後もずっと存続するための方策を考えている。そして他の金融界の王朝がどんどんファミリー経営を止めるなかで、ずっとロスチャイルド家による経営を続けてゆきたいと考えている。
バロン・デビッドによると家族経営は他社との差別化を図る上で重要であり、ロスチャイルドという名前が欧州のみならず、グローバルにビジネス展開することを可能にしている。
バロン・デビッド自身は2003年からロスチャイルドの会長を務めている。この時、フランス・ロスチャイルドと英国ロスチャイルドが事業統合した。彼はロスチャイルドの名字をもって生まれてきたので、会長職を務めるのは当然かもしれないが、単にラッキーというのではなく、現場で下積みをしてきたという実績がリーダーとしての資格を付与している。
現在のロスチャイルドの帝国は19世紀初頭に確立された。ロンドンのネイサン、フランスのジェームズがその立役者である。しかしバロン・デビッドは即、経営陣に迎え入れられたのではなかった。
1982年にフランスの社会主義政府がロスチャイルド銀行を「国有化」した後、デビッドは僅か100万ドルの資本金と数名の社員をひきつれて独立した。
「そのため私は艦橋に上って采配を振るう前に長い事ボイラー室でがんばらないといけない羽目に陥った。」
でもこのビジネスの現場で、一握りの社員たちと頑張った経験が部下たちからすれば「彼がリーダーで当然だ」とうクレディビリティーをもたらしているし、自分と一緒に働くチームメンバーをバロン・デビッドが選別するとき、じっくり時間をかけ人柄を観察することの出発点となったのだ。
「同僚を信頼できない職場では安心して仕事できないからね」
「自分より優秀な奴で回りを固める、、、偏執狂的にそれにこだわらないとだめだ」
でもそれと同時にそれらの優秀なメンバーはロスチャイルドが家族経営であり、ファミリーでなければその経営権を握る事は出来ないという事実を受け入れられる人間でないといけない。
若しバロン・デビッドがこの手法で今後もやってゆくことができれば、ロスチャイルドの一族が経営権を握ることは続けられるだろう。
バロン・デビッドの息子は29歳で、社会人として良いスタートを切っているが、バロン・デビッド本人は67歳であり、仮に彼の計画通り74歳まで会長を務めたとしても未だ采配を譲るには若すぎる。
そこでバロン・デビッドはいとこのベンジャミンに中継ぎをさせることを検討している。
ベンジャミンは現在、或る程度の規模の運用会社を切り盛りしている。
「彼の運用会社は我々の資産運用部より大きいからね」
NMロスチャイルド社のM&A部門はここ数年、好調だったが、運用部門は小さいままだ。
「うちの運用部門はブランド・ネームも良いし、人材も良いのだけど、、、なぜか成長できなかった」
そこでベンジャミンのやっているLCFロスチャイルドとNMロスチャイルドを合併させ、ベンジャミンに会長職を譲るとう案が浮上しているわけだ。
NMロスチャイルドはモダンな投資銀行というよりは昔風のマーチャント・バンクだ。即ち、特定の顧客と長期的な付き合いをすることを主眼としている。そしてたまたまその長い付き合いをしている顧客がM&Aなどのアドバイスを必要としたとき、NMロスチャイルドがフィーを貰うという方法だ。
そもそもNMロスチャイルドにはアメリカの巨大投資銀行のような大きなバランスシート力は無い。しかし金融危機のときは逆にバランスシートは足枷になったので、NMロスチャイルドは有利に立ちまわることができた。
3月に発表された08年決算では他の銀行が軒並み巨大な損金を計上する中でロスチャイルドは約3割の増益を記録した。
「あとで振り返ってみると、あのときはこういう風にすべきではなかったと思う事はしばしばある。金融システム全体の崩壊は避けられたけど、向こう10年も15年にも渡って整理しないといけない債務を抱え込んだ金融機関もあるからね。」
(中略)
「ウチはバランスシートは大きくないけど、ちゃんとグローバル展開は出来ている。」
実際、NMロスチャイルドはブラジルでは昔から橋頭保を築いているし、ムンバイや中国でも事業展開している。
(中略)
バロン・デビッドはいとこのイヴリン(デビッドの前任者)と仲良しだが、上司としてのスタイルはずっと社員に親しみやすいタイプだ。「私は社員のかんしゃくを沈めることに結構時間をつかっている」
「チャーミング」という言葉は現代のインベストメント・バンカーを形容する際にもう余り使われない言葉になっているが、バロン・デビッドのエレガントな銀髪の紳士ぶりに誰もがこの言葉を使う。
「イヴリンはいつも正しい戦略を選ぶ力を持っていた。あとファミリーをひとつにまとめる力もね。そして英国の部門にフランス人の会長を据えることを奨励したのも彼だ」
「私は部下の仕事ぶりを細かく詮索したりしない。自分がどう彼らに役立つかを考えているだけだ。自分の判断力は、平均点のチョッと上程度かな。それは人物を評価したり、部下と協力して仕事をするという点でね。」
NMロスチャイルドはM&Aアドバイス、資産運用に加えて新しく3番目のビジネスをはじめた。それは他の家族経営の会社の少数株式を取得し、それらの家族経営企業にアドバイスを提供するという仕事だ。
大きい事はいいことだ 「Rs5 Perk」でインドのチョコ大型化戦争の火ぶたは切って落とされた
英国のチョコレート会社、キャドベリー(CBY)はアメリカのクラフト(KFT)から買収提案を受け、テイクオーバー・バトルの渦中にあります。先日はハーシー(HSY)もこの買収合戦に名乗りを上げ、いよいよこの戦いの先行きは混沌としてきました。
キャドベリーのクラウン・ジュエルはインド市場です。同社は「パーク(Perk)」という大ヒット・ブランドを展開しています。キャドベリーは「Rs2」という、従来の「パーク」の半分の大きさのパッケージ(上のスライドに出ている写真の細い方)を新発売し、好評を博したのですが、「時代はいまや、大きい事はいいことだという世相になっている」というキャドベリー・インディアのマーケティング・スタッフの判断により「Rs5」という、デカいサイズの「Perk」が今度デビューするのだそうです。
そういうば日本にもそういう時代がありました。
国民の勢いを買う、、、これが新興国投資の基本ではないでしょうか?
Tweetするべきか、しないべきか、それが問題だ
ニューヨークのロングアイランドのショッピングモールでジャスティン・ビーバーというティーン・アイドルがファン・イベントに参加する予定だったのですが、Twitterで集まってきたファンの余りの多さに危険を感じ、イベントをキャンセルしました。
警察は「群衆に家に帰るようにTweetしてくれ!」と主催者に懇願しましたが、主催者側がTweetしなかったのでティーンエージャー達が暴徒化し、この主催者は警察に協力しなかったという罪で豚箱へ。
ウォール・ストリート・ジャーナルは「Tweetしなかったというかどで拘束された最初の例だ」と報じています。
2009年11月22日日曜日
三菱UFJの増資は政府黙認のインサイダー取引だ
今回の三菱UFJの1兆円の公募増資は、正式に発行条件が決まる前から、「たぶん来るぞ」ということがメディアなどで大々的に報道されていました。
これはいやしくも引き受けにたずさわる者として、(こいつら、ずるいな)という怒りを禁じえないし、(なんだ、おめえら、クリーンにはめ込みする自信無いの?だらしない連中だな)という軽蔑の念も覚えます。
つまり、こういう事なんです。
普通であれば公募増資というのはイシュアー(=発行体→三菱UFJ)と既存株主(=みなさんのこと)の利害のバランスを取ることが必要になります。それは場でついている値段をなるべく壊さないようにデリケートに扱う、さらに株価へのダメージを最小限に喰いとどめるためにサッサと値決めする、ということを意味し、これは引受の基本中の基本です。だから事前のリークというのはゼッタイあってはならないのです。
ところが、、、
今回のディールは「そろそろ来るぞ」ということが正式発表前に世界の津々浦々まで知れ渡っていて、おそらくこのディールを知らなかったのはエスキモーくらいでしょう。
なぜ公然とリークが行われているのか?
それはショート筋にせっせと三菱UFJをショートさせる時間的余裕を与えるために他なりません。彼らはこの日本政府黙認のインサイダー取引をやる機会を与えられて、どんどん三菱UFJの株を空売りします。そして公募でケツ入れ(買い戻しのこと)をかけてやればノー・リスクで儲かるわけです。
幹事証券が営業努力で大量の株式を売り切る自信が無いときは、この手のリークでヘッジファンドなどのハイエナ軍団をわざと呼び込み、ディールを売り易くするのです。
また株価自体が下がると普通にロング取引でも割安感が出てきます。だから株価の「ぶち壊し合戦」がはじまるわけです。
いつも言う事ですが、公募増資とは既存株主から公募の応募者への利益の転移に他なりません。既存株主をファ○クすることで、その「負のモメンタム」を利用して値決めに持ち込むのです。
アメリカの金融機関、たとえばゴールドマンやバンカメが公募増資する際には、24時間以内に値決めするのが当たり前です。それを「ヘビの生殺し」みたいにのたうちまわり、醜態を晒している現状に日本の個人投資家はもっと怒って良いと思うのですが、、、
日本株は国債の「ひとばしら」だ
新興国経済は規模が小さいところが多いので(もっとも最近のBRICsなどは下手すりゃ先進国より大きくなりつつありますが、、、)ちょうど箱庭を上から俯瞰するように経済のアチコチで起こっている事がお互いに影響しあうさまを観察できます。
その経験で言うと或る国は危機に瀕するとその国にとって一番大切なアセットカテゴリーを守ろうと必死になるのです。
それでは「その国にとって一番大切なアセット・カテゴリーとは何か?」が問題になります。これは百論噴出する場面ですのでなかなか「これだ!」と特定しにくいです。でも金額的に一番残高が多いアセットは普通、重要な地位を占めます。日本の場合、やはり国債の発行市場、流通市場を守るということが一番大事な課題でしょうね。
その際、国債の発行市場を守るとは具体的にどういうことでしょうか?
それは他の投資対象が国債よりもアトラクティブ(魅力があること)であってはならないということなのです。
日本株を上げようとすれば、話はカンタンです。勝間和代の言うように思いっきり円安に持っていけば良いのです。(たとえば1ドル=120円とかね。)
これをやれば日本株は暴騰するだろうし、ガイジンは日本に殺到します。僕も中国株などを投げ捨てて、日本株を鷲掴みにします!
その理由はどうしてか?
これに関する解説は長くなるので別のところに書いたものを読んでください。
でも残念ながらそういうバラ色シナリオは起こりそうにはありません。なぜなら日本の政治家や金融機関は国債がかわいくてかわいくてしょうがないからです。
ちょうど日本のファンドマネージャーがリスクを冒してパフォーマンスを上げるより、無難にベンチマークに合わせた「隠れインデックス・ファンド」にした方がサラリーマンとして正解であり、優秀である(!?)と評価されるのと同じで、日本全体、或いは歴史観から見て「王道を行く」、ないしは「正論を貫く」ということと、エリートの方々の個々人の矮小的な利害とは一致しないのです。
その結果、日本株は「ひとばしら」に沈められているというわけ。
一体、日本の個人投資家はどうすれば良いかって?
それはカンタン。円貨建て資産(日本株、国債、預金など)だけでなく、世界に分散投資すれば良いのです。そして円貨建て資産に関してゼネストを決行すれば良いのです。
「もう買わないぞ!利回り的に魅力の無い国債は!」
そうやって国民ひとりひとりが反旗をひるがえせば既得権益にあぐらをかいている金融機関はずっこけるし、政治家だって幕末の頃活躍したような、志の高い、視野の広い若者にとって代わられるでしょう。
「ブラック・フライデー」に向けてのカウントダウン
ブログ紹介 『梶ピエールの備忘録』
でも中国経済に関し、極めてユニークな視点から鋭い洞察がなされています。
中国株投資に関する日本語情報は溢れていますが、その大半は軽薄な「中国ヨイショ」派か、あるいは「中国脅威論」的な感情的ネガティブ派のいずれかに分類できます。
その点、このブログは超然とした立場にあります。
チョッと投資する手を休めて、じっくり中国経済のことについて考えさせるエントリーが多いです。
珠玉のブログ。
2009年11月21日土曜日
2009年11月20日金曜日
イランのアハマディネジャド大統領のブラジル訪問に憤慨する米国
これに関して米国では「世界が一致してイランの核保有をボイコットしようとしているのに、ブラジルはけしからん」という声が議会などを中心に上がっています。
ただ「抜け駆け」しているのはブラジルだけではありません。中国もイランとは商売していますし、オバマ大統領が訪中した際もイラン問題には「知らんぷり」でした。
■ ■ ■
なぜブラジルはイランと外交関係を維持するのでしょうか?
これには大きく言って2つの理由があると僕は考えます。
まずイランはブラジルのチキンをはじめとする食品や穀物の買い手だからです。
次にイランはペルシャ湾に大きな海底天然ガス田を持っており、この開発をやりたがっています。
ブラジルは海底油田の開発ノウハウでは世界最先端です。
既にペルシャ湾の一部の鉱区をブラジルは持っているのですが、「こんなジョボい鉱区は駄目だ。もっといい場所をよこせ」とハード・バーゲニングしています。
本来であればペルシャ湾のサウスパース天然ガス田はエクソンやロイヤルダッチが手がけたい案件だと思うのですが、政治的な理由から欧米勢はオフリミットになっています。そこへ中国勢やブラジル勢が間隙を突いて割り込もうとしているのです。
国際政治の舞台におけるBRICsの相対的な重要性の増加を感じさせるエピソードではあります。
ファイブリア(ティッカー:FBR)の取引が始まっています
ファイブリアはヴォトランチン(旧ティッカー:VCP)とアラクルーズ(旧ティッカー:ARA)が合併して出来た新しい会社です。
同社は130万ヘクタールの土地を所有しており、その約6割がプランテーションとして既に使用されています。植えられているのはユーカリの木です。ユーカリの木はパルプの生産に極めて適しています。また生育の速度が非常に速く、他の木の半分以下の時間で伐採できるほど大きく生育します。またユーカリの木はコストが安いため、船運賃を加えても中国のパルプの半分程度のコストにしかなりません。従って極めて競争力が強いです。
同社の生産するパルプの半分はティッシュペーパーの原料に使われます。あとは特殊紙とか印刷用紙などです。
ファイブリアは1万5千人を雇用しており7つの最新鋭のパルプ工場を持っています。年産600万トン近いパルプを生産しています。これはライバル企業の2倍以上の規模です。
ヴォトランチンは創業以来91年の歴史を持っており、一方のアラクルーズは43年の歴史を持っています。アラクルーズの方は1992年に最初のブラジル企業としてNYSEにADRをIPOしました。
ファイブリアの株主構成は34.9%がBNDES(ブラジル開発銀行)、29.3%がヴォトランチン・グループに所有されています。残りの35.8%が株式市場に出回っている浮動玉です。
2009年11月19日木曜日
ブラジルがADRにも1.5%の取引税を課す!
これについては市場参加者の間でチョッと混乱が生じています。
「あれ、2%じゃないの?」
という声が先ず聞かれました。(10月の発表ではブラジル本国では2%の取引税となっています)
それと今回の措置が:
現地(ブラジル)での2% + ADRにはさらに1.5%上乗せ(!)
ではないか?という解釈もあります。
しかしADRに1.5%の課税をするというのはアメリカへの「内政干渉」であり、「そんなこと、出来んの?」とアメリカの投資家はきつねにつままれたような顔をしています。
マンテガ財務相が既に発表されている2%の現地取引税を3.5%程度に引き上げるのではないか?ということはある程度予期されていたので、サプライズではありません。
でも「ADRもやるぞ!」というのは想定外でした。
もちろん、これが本当に実施可能、いや、合法なのかは未だ判然としていません。
続報が入り次第、追加のコメントをします。
PS:新しい情報が無い中での僕の憶測ですが、たぶん今回のコメントは「ブラフ」、つまり口先の脅しに過ぎない気がします。ADRの実務としてブラジル当局が出来ることは普通株をADRへコンヴァージョンするリクエストがスポンサーである信託銀行に出された際に、ブラジルにおいてそれにしっかりと課税することくらいです。
でも投資家や証券会社は「それならコンヴァージョン請求を出さなければ良い」と判断し、ADRがプレミアムになってもアービトラージをやらなければ、それで事は済んでしまうわけ。
その場合、出来高はどんどんBM&FボべスパからNYSEへ引っ越ししてしまい、サンパウロは閑散になるでしょう。
つまり今回の発言は自分でその限界を知りながら苦し紛れに見え透いたウソをついた、、、まあ、そんな感じだと思います。
相場的には明日、たしかに荒れるかも知れないけど、、、僕のドタ感ではひどいことにはならない気がします。逆に悪材料出尽くし、ないしはブラジル中銀&MOFの「無力」が証明され、強気筋が増長するリスクもゼロとは言えません。
いずれにせよ先入観を持たず、どちらへでも動けるよう、臨戦態勢で待つ以外無いですね。
2009年11月18日水曜日
テクニカル分析 ポタッシ(POT) モンサント(MON)
アメリカの徴税も「不公平」
連載 ノマド型投資でフロンティア・マーケットに挑戦 ②
【ノマド型投資の欠点】
ノマド型投資で最も難しいことを最初に断ってきます。それは撤退のタイミングです。
どの投資先が一番有望かを見極めるのは、実はそれほど難しいことではありません。
いち早くそういう有望なマーケットを特定し、その市場に関する勉強をし、ある程度成功を収めた後で、投資家は大きな危険に晒されるのです。その危険とは、自分が長い時間をかけて勉強したがゆえに未練が残ることです。
大きく儲けて味をしめたことで虜になる、最初は理詰めで投資先を選定していたのに、いつの間にか盲信的な「信者」になってしまう。
折角築いた大きな富を全部吐き出してしまうのはそういう時なのです。
自分が一生懸命勉強し、慣れ親しんだ投資対象国、たとえば中国でも日本でも良いわけですが、まずそれを捨てる勇気が無ければ、そもそもノマド型投資はできません。
これは簡単に実践できることのように思えるのですが、実際にやるとなると強固な意志が必要です。殆どの投資家はこの最後の「仕上げ」の部分で失敗してしまうのです。
【センチメンタリズムを排するノマドの哲学】
研究者によれば農耕社会では血縁よりも地縁が重要であり、その社会は階級的、保守的であるとされています。個人の自由より社会の安定が上位に置かれ、指導者はごく一握りの人間で、しばしば世襲制です。
羊やヤギを飼いならすという習慣は砂漠のオアシスでもともと農耕を営んでいた人々が覚えたことです。
しかしオアシスでは水が無限に出るのではなく、限られた資源を人々や家畜が分かち合わないといけません。つまりパイはきまっているのです。
より沢山の羊やヤギを飼い、より豊かになろうと思ったオアシスの民は限定されたオアシスの耕地の負担を増やさないために羊やヤギを放牧することを覚えました。良い牧草地を求めて夏には高い山へ、冬には渓谷や低い土地の草地へと移動を繰り返したのです。遊牧民はこうして生まれたのです。
遊牧にはさまざまなリスクが伴うので、家族の中で強い者だけが遊牧者として志願しました。遊牧民は強靭な身体と精神力をもっています。辛いライフスタイルである代わりに常に誰からも指図されない自由があります。
遊牧民は固い団結力と強いリーダーシップをもっています。遊牧の一群の最大規模はだいたい羊で言えば3000頭です。それ以上になると収量逓減の法則が働いてしまい、生産性は低くなります。すると沢山の比較的小さな規模の遊牧のグループができ、そのそれぞれにリーダーシップが出来あがるのです。
遊牧民には「自分はどこの国の国民だ」という意識は希薄です。それよりクラン(部族)への帰属意識の方が高いです。
テクニカル分析 ゴール(GOL)
ゼネラル・モータースを馬鹿にしない方が良い
「キャッシュ・フォー・クランカース・プログラムと中国での販売好調に助けられただけだ。」
もちろんキャッシュ・フォー・クランカースは一時しのぎであり、今後もそれに依存することはできません。
でもGMの中国での自動車販売好調は甘く見ない方が良いです。
なぜならGMの、とりわけビュイックは中国では究極のステータス・シンボルであり、フォルクスワーゲンその他の欧州ブランドはビュイックのプレステージに遠く及ばないからです。
もちろんビュイックはアメリカでも「鈍臭い」ブランドです。だからアメリカ人が「中国でビュイックが売れている」ということを紹介する際にも中国人のtaste(趣味)を半ば見下げたような言い方をします。
なぜビュイックが中国で究極のラグジャリー・ブランドかというと、それは歴史的な要因によります。ひとつには孫文の愛車だったということ。もうひとつは最後の皇帝、溥儀の乗っていたのもビュイックであり、禁紫城に乗りいれられた最初のクルマだからです。
ビュイックは品質は兎も角、重厚なイメージを維持するという意味においてはブランド・イメージを大事に守っています。
中国は間違いなく世界最大の自動車市場になるわけですから、現地の人たちが特定のブランドになぜ強烈な憧憬を抱くのかもっと研究すべきです。
2009年11月17日火曜日
連載 ノマド型投資でフロンティア・マーケットに挑戦 ①
今日から数回に渡ってグローバル投資に関する新しい考え方を連載という形をとって提案します。
これは僕が個人的に実践している手法であって、どこかの誰か有名な方が確立したメソッドではありません。
だからこのやり方をすれば成功するという類のものではぜんぜんありません。
ひとつだけ言えることは僕が20年かかって到達した境地であり、欧米の投資家との切磋琢磨の中から編み出された現場のノウハウなので、見る人が見れば(ははあん、こいつはアレがやりたいんだな)とピンとくる、、、そういう類のものです。
■ ■ ■
ノマドとは遊牧民のことを指します。
遊牧民はひとつのところに定住せず、季節や自然のサイクルに合わせて移動します。
ノマド型投資とは、遊牧民のようにその時々の市場環境に適った、最も合理的かつ有利な投資先を選んで投資してゆこうという世界観ないしは価値観です。
通常、そのような有利な投資先は少なくとも3年から5年くらいは続く場合が多いです。
遊牧民は長年培った経験や知恵を生かして移動先を決めます。この遊牧民の自然に逆らわない行動様式には学ぶべきものが多いです。
次にフロンティア・マーケットを定義します。
僕にとってフロンティア・マーケットとは「未だ一般の機関投資家によく知られていない投資機会」全般を指します。例えばロシアやブラジルなどの新興国もフロンティア・マーケットの例ですし、インターネットが最初登場したときはそれが大多数のプロにとって未知のものであったという意味ではこれもフロンティアです。
要するに「あたらしい発見がある場所」あるいは「埋めてゆかなければいけない知識ギャップが存在するところ」が即ちフロンティア・マーケットです。
相場の格言に「相場は知ったら、しまい」というのがあります。つまり或る投資機会が市場参加者に理解され尽くしてしまえば、その市場は効率的になるでしょうし、効率的な場所で他人を出し抜いて大きく儲けることはとても難しいのです。
新しい有望な投資機会が出現すると皆、競って勉強をはじめます。例えば最近、オリンピック開催が決まったブラジルなどはその好例ですね。後から後からその投資機会をモノにしようと飛び込んでくる参加者が居る限り、その投資対象に先回りしてポジションをこしらえた先行者は有利に勝負を展開できるのです。
でもいずれどんな新しいアイデアも使い古され、くたびれるときが来ます。それは換言すれば「フロンティアの喪失」です。相場的にはこの瞬間が最も危ないです。
なぜノマドの如く頃合いを見計らって投資を引き払う必要があるのか?と言えば、それはこの危機を回避することが目的なのです。
つまりウハウハで儲かる市場を探し求めるという行為と、放浪し続けるということは切っても切り離せないのです。
なぜ今回は人民元が切り上げられなかったのか?
もちろん、これを書いている間にも何かが発表される可能性は無くはないですが。(笑)
なぜ発表が無かったのかの後付け講釈を書きます。
先ず中国政府は市場が(くるぞ、くるぞ)と思っているときに、その予想通りの動きをすることを特に嫌います。
二番目の理由として中国は人民元安の状態をできるだけ延ばしたいと常に考えています。これを甘く見てはいけません。
三番目にオバマ大統領が個人的にプッシュしたかったアジェンダは人権問題や言論の自由の問題であり、それに関して耳にタコが出来るくらい中国に注文を付けた行きがかり上、人民元問題をゴリゴリ押すと(やりすぎ)になってしまう、、、そこでテキトーにお茶を濁したという事です。
四番目に中国側はオバマ大統領のスタイル(カリスマ性とか庶民に「つながる」能力など)を恐れていて、今回の訪中ではオバマ大統領がそれらを発揮しないよう、厳重に日程が管理され、がんじがらめになったという点です。それでオバマも盛り下がったという面があったと思います。
五番目に(これが最も大事なポイントですが)オバマは人民元問題や財務省証券を引き続き購入して貰う云々の問題よりもっと緊急に中国の同意を得たい事項が存在したということです。それはイランに対する経済制裁です。中国がイランの石油を買っているうちは各国が協調して行う経済制裁の効果はありません。ロシアは今回のシンガポールのサミットで制裁反対派から賛成派に大きく転換したと言われています。残るは中国だけ。
この点に関して、成果があったのか、無かったのかはいずれおのずと明らかになると思います。
若し各国協調しての経済制裁が成立すれば、その最大の「功績者」であるロシアには大きな見返りがあるはず。ロシア株が俄然、動意付くと思います。
アイヴァンホー・マインズ(IVN)決算アップデート
10月6日にアイヴァンホー・マインズ(IVN)とリオチント(RTP)はオユ・トルゴイの銅・金山開発に関して投資契約(IA)をモンゴル政府と正式に調印した。
本投資契約はオユ・トルゴイ開発のために必要な法律面、予算面、環境保護面で安定した基礎を確立するものである。
10月27日にアイヴァンホー・マインズ(IVN)はリオチント(RTP)より3.88億ドルの資本出資を受け入れた。これでリオチントの所有するアイヴァンホー株式はアイヴァンホーの発行済み株式数の19.7%になった。この追加資本はオユ・トルゴイ・プロジェクトのうち露天掘りのピットへの鍬入れ、ならびに地下坑の掘削のために費消される。現在のアイヴァンホーとリオチントの契約では、最終的にリオチントがアイヴァンホーの持ち株を43.1%にまで引き上げる可能性がある。
モンゴル政府は今回の投資契約によりオユ・トルゴイ鉱山の34%の権益を取得した。アイヴァンホーの権益は66%である。モンゴル議会は7月16日にこの投資契約を承認した。またこの投資契約の内容が現在のモンゴルの憲法に照らして合法であることを確認した。この投資契約のドラフトはモンゴルの内閣および国家安全保障理事会にて承認された。
この投資契約締結に際してモンゴルの4つの鉱山関連法が改正され、とりわけ8月25日にモンゴル議会は2011年1月1日から効力を発する銅と金の生産に対する68%の超過利益税をキャンセルするためのサンセット条項を盛り込んだ。
今回の投資契約で向こう30年に渡りこの税制、ならびに規制の枠組みが維持されることが確認された。さらにこの契約は20年延長するオプションを付与されている。
今回確認された税体系の中では法人税、輸出の際の関税、付加価値税、消費税、ロイヤリティー、採掘ならびに生産ライセンス、固定資産税などが規定されている。
オユ・トルゴイにおける採掘は引き続き継続されている。この採掘では独自の「ゼウス」インデュースト・ポーラライゼーション技術が使われている。鉱床の所在を示唆するIPアノマリーは幅広い箇所で検出されており現在のオユ・トルゴイのリソース(推定埋蔵量)を拡大する可能性もある。アイヴァンホーは近日中に「ゼウス」調査の結果を発表する。
10月26日にアイヴァンホーが79%を所有する子会社、サウス・ゴビ・エナジー・リソーシズ(トロント市場:SGQ)は中国のSWFであるCIC社から5億ドルの出資を受けた。出資形態は担保付転換社債である。この資金はモンゴルにおける石炭採掘プロジェクトの業容拡大のために費消される。サウス・ゴビは第3四半期の生産高として45.7万トンの石炭をオブート・トルゴイ炭田から生産した。
現在のオユ・トルゴイのプロジェクト進捗状況は1385メートルのシャフトが完成した。水平掘り部分の延長は1430メートルに上る。工事の進捗は計画を上回っている。
2009年11月16日月曜日
フォーティネット(ティッカー:FTNT) ネットワーク/セキュリティー IPO
今回発行株数:1200万株
プライマリー:48%
セカンダリー:52%
初値設定:9から11ドル
幹事:MS、JPM、DB、ベアード、RBC、シンクエクイティー、JMP、シグナルヒル
フォーティネットの創業者はジュニパー・ネットワークスに買収されたネットスクリーンを創業したケン・シェーです。またCFOのケン・ゴールドマンはシーベルのCFOを務めるなどシリコンバレーで最も経験豊かな財務部長のひとりであると言えます。
ネットワーク・セキュリティーの市場は、市場のパイそのものが大きいし、その中でこまごました単品のソリューションではなく、総合的なソリューションが求められており、それをワン・ストップ・ショッピングで一括提供できるのがフォーティネットなのです。
もともとネットワーク・セキュリティー市場ではソフトウエアによる保護が主流でした。シスコやチェックポイントがその主役です。しかしソフトウエアではスピードが遅すぎるという理由からASIC(=半導体チップ)を使った製品が出てきました。その代表企業はソニックウォールやネットスクリーンです。
しかし彼らはファイアウォールやVPNは提供しているものの、それ以外のネットワーク・セキュリティーに関しては提供していませんでした。そこでいろいろなポイント・ソリューション(単品での解決法)を提供する企業が出てきました。
こうした単品による解決法をどんどん追加していったためにネットワークの保全作業は複雑で高価なものになりました。
フォーティネットはそのような状況に鑑み、あらゆるネットワーク・セキュリティーの機能をハードワイヤーに焼きこんだASICを開発し、UTM(統合されたネットワークへの脅威の監視プラットフォーム)というコンセプトを提案したのです。具体的には:
アンチ・スパイウエア
アンチ・スパム
ウエブ・フィルター
アンチ・ヴァイルス
IPS
VPN
ファイアウォール
キー
などの機能がフォーティネットのASICに盛り込まれています。加えてフォーティOSと呼ばれるソフトウエアで新しく変幻するネットワークへの脅威にリアルタイムで対応してゆく体制にしてあります。
UTM市場は2007年から2012年の間に年率+22%成長するとみられています(IDC)。
この一方で従来のファイアウォール市場は▼4%になると予想されています。
同社はディストリビューター/リセラーを通じた販売と直販部隊の両方のチャンネルを利用します。
売上の60%がディファード・レヴェニューでビジビリティーは高いです。またディファード・レヴェニューも年率32%成長しています。さらに製品売上高の他にサービス売上高があり、比率で言うと当期売上高ではサービスの方が大きいです。
シルクロード現象
それは自然発生的で、ひとつの国の独力でシルクロードにおける活動の全部がコントロールされたのではなく、多くの国の複雑な利害や人々の営みが絡み合った結果として出来上がったパイプでした。
その最盛期にはかなりしっかりとした交易の手順(プロトコル)が順守され、専門化した役務提供者が良く組織されたサービスを提供したと言われます。
しかしシルクロードのツキはエジプトにクレオパトラが登場した頃から落ちはじめます。ローマ帝国は肥沃なナイル川流域を後背地に持つアレキサンドリアを交易の重要パートナーとし、シルクロードへのゲートウェイであったティルスの地位は低下しました。
さらに陸路で紅海に出て、そこからアジアを目指す航海ルートが発達し、ローマ人がモンスーンの季節風を巧みに航海に利用する術を体得してからは海路による貿易のアドバンテージがシルクロードの陸路より遥かに勝ることがわかったのです。
言いかえれば、よりコストの安い、より速い、より安全な、よりスケールの大きいルートが登場することでシルクロードは廃れたのです。
シルクロードによって生計を立てる人々からすれば、自分とは全然関係ない、遠いところで起きた変化(航海技術の発展、消費国の交易パートナーの変更など)が没落の直接の原因となりました。
ローマ帝国は言わば現在のアメリカのような一大消費国で、貿易収支は慢性的に赤字でした。また自分のところでは何も作らず、常にモノを外部からの供給に頼りました。主要交易パートナー都市をアレキサンドリアに移したのも、アレキサンドリアが穀物その他、あらゆる基礎的な財の供給能力に長けていたからです。この点で今の中国はアレキサンドリアに似ています。
一方、シルクロードでは商売が繁盛している間はその交易ルートにかかわる様々な国の人々に対する尊重や保護がありましたが、ビジネスが廃れるとともに自由、寛容の精神は失われました。すると交易は別の、より心地よい場所を求めて去って行ったのです。さらにシルクロードの低迷はその交易ルートの担い手たちのソーシャル・モビリティ(能力主義)も奪うことになりました。
以上のようなシルクロードの没落は歴史の一例に過ぎず、このような繁栄と没落のドラマは世界中で繰り返されてきました。つまりこの世の中で唯一不変のものは「世の中は変わり続ける」ということだけなのです。
投資家が本当に欲しい商品が簡単に買える時代が来た
アフガニスタン政策が焦点
しかしアメリカ国民の関心は中国でも韓国でもありません。
アフガニスタンに米軍を追加派遣するかどうか?
その決定を今か今かと待っているのです。
アフガニスタンへの増派は折角、イラクからの速やかな撤退で浮いた軍事費をアフガニスタンで「浪費」することになるため米国内では極めて不人気な決断となります。
しかしアフガニスタンのタリバン勢力の掃討をしっかりやっておかなければ再び9・11のようなテロにアメリカや英国が晒されるという懸念があります。
この点、実際に無差別テロの標的になったアメリカや英国は他の多国籍軍派遣国より危機意識は高いです。
現在いちばん手を焼いているのはアフガニスタン南部のヘルマンド地方でのタリバン掃討です。ヘルマンド地方は1960年頃にアメリカの肝いりで大規模な治水事業が試みられた場所であり、「リトル・アメリカ」と呼ばれた時代もあります。水に乏しいこの地方で折角完成されたダムや灌漑施設は、しかし現地の人々の定住や農業振興には役立ちませんでした。
その後、ソ連がアフガニスタンに侵攻し、戦火のアフガニスタンでの農業振興は失敗します。でもこの試みの失敗を全てソ連のせいにすることは出来ないと思います。なぜならヘルマンド地方は昔から遊牧民の伝統があり、「定住は弱い人間のやることだ」という農耕を蔑む気風が現地に根強く存在したからです。このプロジェクトはその気風をはじめから無視していたのです。
いまではヘルマンド地方はケシの花の一大産地となっており、世界のアヘンの4割を供給しています。これがテロリストの活動資金になっていることは言うまでもありません。
ヘルマンド地方のタリバン掃討作戦は英国軍とアメリカ軍が中心となって交代で任務に当たっていますが、現在、メインになっている英国軍も手を焼いています。
さて、シンガポールでのサミットを前にロシアは経済振興のため、外資の導入を歓迎すると発表しました。注目されるのは今までロシアがイランに提供してきたガソリン(イランは産油国ですが製油所が不足しているのでガソリンは輸入に頼るといういびつな経済構造になっているのです)の供給をイランの核施設建設に対する制裁の一環として断つかどうかです。
ロシアも昔、アフガニスタンに手を焼いた歴史があり、「同病相哀れむ」という珍妙な連帯感が生まれていると言われています。
若しロシアがこの面でアメリカや英国に協力するというのであればロシアでの経済開発のディールは加速することが考えられます。
2009年11月15日日曜日
ゴールドのアップデート
きみ、それは「終わりの始まり」だっ!
2009年11月14日土曜日
ブログ紹介 『おかねのこねた』
人民元は切り上げられるのか?
中国には人民元高に持ってゆくインセンティブは皆無だったし、また人民元高にする余裕など全く無かったのです。
しかしここへきて初めて様子が変わりつつあります。
その最大の理由は雇用です。
上のグラフはウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されたものですが、低迷を続けた中国の雇用がようやく大幅なアップティックを見せました。現在の求人率は100人の求職者に対して94の雇用機会という比率であり、これは去年のボトムの85より改善しています。因みに金融危機以前の平均値は97だったそうです。
雇用市場が息を吹き返したので、はじめて人民元について考える余裕が出たというわけ。
セブンデイズ・グループ(SVN) IPO
今回発行株数: 1010万株
普通株対ADR比率: 1:3
初値設定: 9~11ドル
シンボル: SVN
ロックアップ: 180日
値決め: 11月19日前後
幹事: JPモルガン、シティ
同社は現在、中国第3位ですが来年には第2位を狙っています。今回発行される株式は全部新株で、既存株主は持ち株を売りません。
セブンデイズは成長率では中国のホテル中ナンバーワンです。それと同時に安定したオペレーティング・パフォーマンスを記録しています。
セブンデイズのベンチャー・インベスターは米国のウォーバーグ・ピンカスでこれまでの全てのラウンドに参加しています。
この「マネージド・ホテル」のビジネス・モデルではホーム・インズ&ホテルズが先行していますが、セブンデイズもしっかりとしたブランドならびに標準化された経営手法が確立しているため、今後、急速にキャッチアップできると思われます。現在の各社のマーケット・シェアは:
HMIN12%
ジンジャン6%
セブンデイズ6%
ブログ紹介 『金融そして時々山』
「ムムッ、おぬし、、、、できるな」
というセリフが出ますよね?
あれと同じで金融の世界に携わった人間が他の人の書いたものとか読むとすぐその人がどのくらいソフィスティケートされた金融人であるかわかってしまうのです。(おそろしや!)
で、今日紹介する『金融そして時々山』を書いておられる沢利之さんは経歴に元信託銀行役員とあるけれど、実際、とてもモノの見方が洗練されています。
でも不思議なことに彼のブログには気負ったところがぜんぜん無いのです。
自然体。
その余裕が素晴らしいし、うらやましい。
とりわけ彼が元棲んでいたギョーカイのことを書かせたらサラッと流している文章の中にカミソリの刃のような鋭い洞察があります。
それと視野の広さ、意見の偏向のなさにも驚かされます。
「Me Me Me!」と自己主張の塊のようなブログが多い中で(『外国株ひろば』も勿論、同類ですが)、もうワンランク上の境地に達している味わい深いブログ。